図書紹介
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「こどもにつたえる日本国憲法」
(文:井上ひさし、絵:いわさきちひろ、講談社発行、2006年09月01日、3版、71ページ、925円+税)

デニマルさん:12月号

この本は、子供向けに書かれた絵本+お話の「日本国憲法」を纏めたものである。最近、憲法改正に関する論議がある。その是非論は兎も角、憲法の改正ともなれば、国会での賛成(衆議院・参議院の三分の二以上)と、国民投票で過半数の賛成を得ないと改正出来ないと憲法第96条(改正の手続)に書かれてある。最終的には、国民の投票で決められる。現在「憲法九条を世界遺産に」(太田光、中沢新一著、集英社)といった本もあるが、この機会に自分のためにも、次世代の人に憲法を伝える意味でも勉強するには格好の本である。

憲法って何ですか?   ―― 今まで殆んど、考えたこともない ――
憲法とはと聞かれれば、国の基本的な「きまりごとが書かれたもの」と答える程度は誰でも出来る。しかし、なぜ「国のきまりごと」が必要なのかは、常識的なので考えずに過ごしている。実はこの常識が人によって違うことがポイントである。個人個人顔が違うように考え方も異なる。そこで、この常識を誰もが同じように理解・行動出来るように文章化したものが憲法で、全ての決まり(法律)の中心的なものである。裁判で法律の解釈が違った場合、最終的な判断を憲法ではどう解釈するのか最終決定するのが最高裁判所である。

憲法を読んだことがありますか?  ―― 昔、学校で教わったことがある ――
憲法は、普段の生活で殆んど目にすることはない。昔、学校で勉強した以外で、憲法を読む機会はなかった。しかし、「国のきまりごと」を大人の常識として「第九条が戦争の放棄」程度は理解している。この本では、憲法を分かりやすく「憲法は、国のかたち」を決めたものと説明している。具体的には、「国民主権」(国のあり方を決める権利は国民にある)、「基本的人権の尊重」(人が生まれながらに持っている権利を大事にする)、「平和主義」(戦争をしない、争いは武器でなく話し合いで解決する)この三つが大きな柱となっている。

憲法に心があるのを知っていますか?  ―― 身近に感じていないので知りません ――
憲法の心は前文にあると著者は書いている。昔、文科省が子供たちに「あたらしい憲法のはなし」の冊子で『今度こそ二度と戦争をしないように武器や軍隊をもたない。よその国と争いごとが起こっても話し合いで解決しようと決めたんです。武力を捨ててしまうことは勇気がいることです。でもけっして心細く思うことはありません。日本は正しいことを、他の国より先に行ったのです。世に中に正しいこと位強いものはありません』と書いている。この本の随所に「いわさきちひろ」のこどもと花などの絵があり、心和む本でもある。

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