図書紹介
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「ツレがうつになりまして」
(細川貂々著、幻冬舎発行、2006年08月25日、9版、127ページ、1,100円+税)

デニマルさん:11月号

この本は、題名の通り「うつ病」の看病記録と闘病記を併せたものである。著者が漫画家なので、それを漫画にした。ツレ(著者のご主人)も当時を思い出してその時々の心境を書いた夫婦合作である。現代は、学校でのイジメ、受験戦争、競争社会、リストラ、老後の不安等々挙げたらきりがないストレスの時代である。これらの問題は、特定の人にだけ起きるのではなく誰でも同じ状況にある。ストレスがあるから病気になる訳でもない。多くの人は何らかの方法でストレスを解消して、健康に暮らしている。だがストレスからうつ病になったり、他の病気になることもある。この本は、「うつ病」についての体験を書いている。漫画とエッセーなので手軽に読めて、その対処策、予防策等にも役立つ本である。

ツレはスーパーサラリーマンだった   ―― うつ病は誰でもなる可能性がある ――
著者のツレは、コンピュータメーカーのサポートエンジニアーのスペシャリストとして活躍していた。仕事が出来て精神的にタフなスーパーサラリーマンだった。しかしリストラで、人が減り仕事が激増。その結果、疲れ過ぎて眠れなくなり、全てがイヤになり「死にたい」心境に激変した。病院での診断結果は「うつ病」であった。しだいに引き篭り状態になるツレを見て、会社勤めより健康回復を優先した。ストレス、過労、睡眠不足、食欲不振、意欲減退と精神が肉体を蝕み、タフなツレが外出できない状態(病気)となった。

ツレは怠け病、申し訳ない病、自殺念虜  ―― うつ病の症状はみんな似ている ――
会社を辞めても病状は回復しなかった。家でゴロゴロしているのは怠け病。家庭に迷惑を掛けて申し訳ない。全てに対して申し訳ないと感じシクシクと泣き出す。精神的不安、自信喪失等の情緒不安定から、人前で涙を流すことが多い。そして突然死にたいと言い出した。これは自殺念虜といい、自殺することだけしか考えられない状態である。この症状は、多くのうつ病患者に共通したもので、この本のツレも全く同じ症状で著者を悩ませた。

ツレはありのままを受け入れた  ―― うつ病は時間を掛けて徐々に治す ――
うつ病は必ず治る。しかし治るには時間が掛かる。病院では、投薬で一時的な解決を図るが、薬の効力が落ちると元に戻る。だから自分自身で自分を治さなければ回復しない。その方法として、散歩で気分転換を図る。新しいことにチャレンジする前向きな気持ちを持つことが必要である。一番大事なポイントは、「ありのままの自分を受け入れる」ことである。全ては現状を受け入れられない自分に悩み、ストレスとなって病になる。だから今、自分が出来ることから、少しずつ行動することで「うつ病」は治せると経験を書いている。

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