PMプロの知恵コーナー
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ダブリンの風(44) 「人のタイプ」

高根 宏士:11月号

 前回「コミュニケーションの壁」について述べた。この壁は受信者の壁である。今回は受信者に壁を作りやすくする発信者のタイプを考えてみたい。特にマネジャーやリーダーに見られるあまり好ましくないタイプである。このような人達は、自分では多分理想的に近いと思っているか、そのような人間になりたいと日々自分を鍛えているかもしれない。しかし他から見るとそれとは程遠く、これから述べるタイプの人がかなりいる。 その意味で我々は好ましくないタイプを見たら、その人を哂ったり、怒ったりする前に、自分がそのタイプでないかどうかを吟味する癖を作ることが肝要であろう。

「呑んでかかる人」
 相手を小さな物、小者と考え、相手をするまでもないと無視してしまう、というよりも相手が見えない。自分の大きさに酔いしれている人であろう。本当の意味で世の中の怖さを知らない人である。「謙虚」と言う言葉も知らない。いわゆる大物と言われる人にこのようなタイプのものを多く見かける。相手が本当に小者の場合は飲まれてしまい、そうでない場合は「一寸の虫にも五分の魂」から手ひどいしっぺ返しを受けてしまう。スポーツの世界で思ってもいない番狂わせはこのような場合に起こる。

 「卑屈な人」
 自分をいやしめて、相手に迎合しようとするタイプである。例えばメンバーの誰かに、彼(彼女)が持ってもいないような長所を持ち上げて褒めるとか、極端に謙って応対するとかである。当然そのバックには周りから良く見られたいとか、自己保身が見え見えである。本人はコミュニケーションを良くするためにやっていると錯覚している。

 「ひがむ人」
 何事も悪いほうに解釈するタイプである。特に自分に対する相手の態度を悪い方へ、悪い方へと解釈してしまう。表現に常に毒が含まれる。「卑屈な人」と表現は違うが、根っこは同じである。

 「冷たい人」
 相手に関心がない、自分の世界だけに閉じこもっているタイプである。最近はこのタイプが増えている。簡単に生活できるようになったために、面倒なことには関わりたくないという想いである。人との交流や折衝は自分の殻だけで通そうとする人間にとっては非常に面倒な世界だからである。

 「上下をいつも意識する人」
 地位の上下に敏感と言うよりも、それだけが関心の対象になっている人である。上司に対しては常に控えめで、言っている事を一生懸命理解しようとし、もし理解できなければ自分が悪い、上司の言うことは神の声と言う考えの持ち主である。部下に対してはその反対で、部下はどんな場合でも上司の言うことを聴くべきだと考えている。本人はそれが普通だと確信している。

 「人によって態度が極端に変わる人」
 自分が好きであるとか、重要と思っている人には丁重に応対するが、そうでもない人には意を用いない。例えばAと話をしていても、より重要なBが見ええるとAのことは忘れ(無視し)、Bばかりを相手にするようなタイプである。このような人はAからみると信用のできない人である。

 「必要以上に知識をひけらかす人」
 ちょっとしたことでも自分は知っていると言うことを示すために、知っていることはなんにでも口を出し、他人が話している中の小さなことの誤りを滔滔と弁じる。たまたま自分の誤りを指摘されると、その弁解にまた浅い知識をひけらかす。本人は回りの人間よりも良く知っていることを感じ、気分良くなっているが、他人からは「つまらん知識をひけらかす暇があるなら仕事をやってみろ」と言うことになる。

 「どうでもよいことに自分の主張を貫く人」
 Aを選んでも、Bを選んでもどちらでもよいときに、例えばAに固執する人である。このようなときにはどちらでも結果はほとんど変わらないのだから、それに最も関係している人に任せればよいのに任せず介入する面倒な人である。Aに固執して何のメリットがあるのか。リーダーとしての器量の狭さと全体を見通す見識の高さがないことを示しているだけなのに、本人はそれを自覚しない。

 「自分は常に人のためを考えていると思っている人」
 このような人は旧来の道徳的には素晴らしい人のように見える。しかし本当に他人のためになっているかどうかを吟味しないで、自分の考え、好みのみから他人に干渉していることがよくある。このタイプの人の欠点は、自分はよいことをしていると言う独善である。最近はこのような人が増えている。このような団体も多くできている。

 以上受信者の「心の窓」閉じさせてしまういくつかのタイプを挙げた。他にもいろいろなタイプがあると思う。それらのタイプを批判していると我々自身がその中のどれかのタイプに陥ってしまう危険性がある。したがって我々はこのようなタイプを自己反省のためのチェックリストとして活用することが肝心であろう。また他の人に自分を評価して、アドバイスをしてもらうために使うのもよいであろう。

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