PMプロの知恵コーナー
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「マンション建替プロジエクト奮闘記(その6)」

PMAJ関西支部 岡本 政義:10月号

9;D社建替え提案の顛末と基本構想の追加
 7月16日(日)委員長宅での会合にD社は、建替え提案書を持参しました。私の予想通り、それは具体性を欠くものでした。基本計画が弱く、還元面積はT社と同じ80uとしても、建替え事業に取り組む具体的な内容でありませんでした。しかし、またもや7月21日(金)までに基本計画書を持参するとのD社担当の話を了承し、その結果を7月23日(日)夕刻委員会宅で検討する雲行きになりました。ここも忍の一字、私は否定しませんでした。

 私は、買取提案とはいえ、転出価格を具体的に提案してくれたD社に対しては我々の見過ごしてきた転出価格増額を指摘してくれた点、感謝せねばならぬと思っています。100%同意形成が必要なときに、転出者をなおざりにする計画は、一人でも転出計画を持つ人がおられた場合それが障害になるところでした。
 私は、不毛の議論に終始するD社対応はさておき、次回会合にはT社に増額を要請しその結果を報告する必要があると感じました。このままではプロジエクトが、空転する危険性を少々感じたのは事実でした。

 プロジエクトの成功は、基本構想の障害に対して、それをプラス思考により初心に立ち返えり打開策を求める発想が必要と思います。
 私は、この転出価格をめぐるD社問題も、プロジエクトの一つのターニングポイントとしてつぎのように考えてみました。
 @ 建替え検討スタート時のアンケート実施は、区分所有者の意向がつかむ上で有効であったこと Aコンサルタントへの検討依頼により修繕計画の問題点が浮き彫りになり建替え計画検討への方向付けが確定したこと B本年に入ってこれらの経緯をふまえた基本構想を策定し、その検証を行ったこと C基本構想実現のための4社検討依頼の結果、幸いT社が協力回答を申し出てくれ、その間「隣接土地計画外」など貴重な情報提供とともに、満足のいく基本計画を提案してくれたこと。DT社共同での建替え臨時説明会開催により、建替え具体化の機運が高まったこと。

今回のD社の一括土地買受提案は、いままで見過ごされてきた転出価格増額を検討する機運になり、この転出価格の増額の結果は、建替え事業において、「転出」により他の同等の新築マンションに住み替えができるという選択肢ができることになり、100%合意形成の弾みになることであります。
 7月18日(火)私は、下記を基本構想の追加要請として、E-MailでT社に送信し転出価格の増額を要請しました。
@ 我々理事会/準備委員会は、100%の合意形成をめざす基本構想を立案し、貴社の同意を得て、ようやく説明会も終了し次のステップにいる予定でした。
A しかし、貴社ご承知のように、説明会終了間近、転出を希望する区分所有者を代表して、G氏の転出価格についての発言がありました。
B基本構想は、100%合意をめざすものでなければ成功しません。等価交換による建替事業の基本構想には、転出を希望される方々に対しても同じ区分所有者として同等の恩恵を受けていただく必要があり、これでこそ100%の同意形成の基本と考えています。
C このような基本から、貴社にご検討願いたいことは、「還元面積(各戸80u)相当の居住空間を転出価格とする」ことであります。具体的には従前の転出価格2,957万円を4,600万円に変更することであります。
D当建替えプロジエクト成功にむけ、同時に今後の建替え事業のポイントの一つとして、「還元面積相当の居住空間を転出価格とする」ことを貴社がご同意されることを切に望むものであります。

 7月21日(金)T社より基本構想の追加に賛意をしめす下記入電がありました。
「いつもお世話になっております。また、建替え準備委員会の皆様には弊社の建替え計画に関する提案検討につきまして、並々ならぬご協力を賜り、誠に感謝いたしております。
 さて、貴委員会よりご提案頂ただきました建替えに関する基本構想の見直しにつきまして、弊社におきましても再度の検討を経て、全く同じ考え方を持っておりますのでまずはご報告申し上げます。  建替えにおきましては、貴マンションに再度居住される皆様も転出をされる方々も建替えによって同じ恩恵を受けることが大前提にあると考えております。
 貴委員会よりご提示をいただきました「還元面積相当の居住空間を転出価格とする」ことにて、弊社におきましても、支店内会議に上程し、弊社の支店長から了解を得ております。従いまして、お申し出いただきました内容に弊社は同意をいたしますので何卒よろしくお願い申し上げます。
 弊社では今後も貴マンションの建替え事業に誠心誠意努力し皆様の建替えが円滑に進みますよう協力いたしたく考えております。
 弊社の支店長・上長以下、私どもスタッフを含め、弊社を建替え事業のパートナーとして是非ご指名いただきます様念願いたしております。支店長以下、改めてご挨拶に参る機会を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。」

 7月23日(日)夕刻の第7回準備委員会で、委員長は21日夕刻入手したD社建替え提案書を披露しました。驚いたことに、当日説明を受けた理事長、委員長ともその内容に対し納得していないことでした。私は、D社との交渉にはノータッチの状態でしたが、これ以上の接触は中止したらどうかと思いました。

 タイミングを見計らって、私は、T社が転出価格の増額に同意した内容を、交信文とともに披露しました。本来なら委員会に図ってT社に申し入れる筋合いのものですが、そこは委員会のまとまりの良いところで、独断専行を咎める方もなく、逆に皆さんに感謝されました。
 ただ本当かとする向きもあり、明日委員長と、T社に出向くことになりました。そして今後の方針について、7月30日(日)T社を含め委員長宅で打ち合わせることを決めました。

 7月24日(月)T社にて転出価格についての確認をおこなったあと、私はY氏のお見舞いに駆けつけました。委員長は、午後通院とのことで別れましたが、委員会として、お見舞い持参することを依頼されました。Y氏は、見た目はすこぶる元気であり、退院間近かの様子でした。

 今回の報告は、転出価格をめぐり委員会の足並みのみだれを露呈した格好でした。今後、「雨降って地固まる」の喩えどうり進行するかは見当もつきませんが、或る程度委員会の結束は固まった気がしています。
 要は、基本構想実現に向かって71戸の100%建替え合意を得るまでは突進あるのみです。このためには、常にゴールに向かっての的確な方針立案と実行が重要と思います。

 次回は、「全区分所有者への先日の臨時説明会の議事録配布」の機会を利用して、説明会での懸案事項であった転出価格の結果報告、全面平面駐車場計画図の報告をおこない、T社をデベロッパーとしての了解をとるべくアンケート調査を行うことなどについて述べたいとおもいます。ご期待ください。
以上