グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」第12回
世界PM界のご意見番Hugh Woodward氏を迎えて

GPMF会長  田中 弘:10月号

 去る8月31日・9月1日に、PMAJが1,400名の大参加者を得て開催したPMシンポジウム2006に、Hugh Woodward氏を特別ゲストとしてお迎えした。
 Woodward氏は米国ではなく、オーストラリアのタスマニア州の出身である。同国の大学でシビルエンジニアリングを専攻し数年オーストラリア国鉄に勤務をした後に米国に渡り、工学の名門Lehigh(リーハイ)大学の修士課程を修了し、1970年から30有余年P&G - Proctor & Gamble でプロジェクトマネジャーやプロジェクトマネジメントの推進責任者を務めた。またPMのプロフェッショナル活動にあっては、数多のPMI指導者を輩出しているPMI Ohio Chapterの会長を経て98年から4年半PMI理事として手腕を発揮した。特に2000年から2001年にはPMI史上唯一、2年連続PMI会長を務めたことが特筆される。P&Gをリタイアした後は、独立系で世界最大のアクセスを誇るPMのウェブサイトPMFORUM.orgを最近まで主宰する一方、公平で透明感のあるスピーカーとして世界のPM大会から引っ張りだこで、年間20数件の講演をこなしておられる。
 このようなWoodward氏にご来駕いただいて光栄であるが、同氏を招請した理由は次のようなことである。
  • グローバル企業のPM責任者とPMIという大所帯の頭領を両立させた器量は、筆者が世界で強く説く産業のPM力とPMプロフェッショナリズムのベストバランスというコンセプトを強くサポートしてくれる。
  • 元PMI会長であり、勿論いまでもPMIを愛しているが、氏のPM世界感は極めてバランスの取れたものであり、IPMA陣営や、反PMIのPMリーダーにも評価が高いので、そのPM世界観をPMAJ会員にも是非共有して欲しい。
  • 氏がPMI会長の時代に、筆者は、PMIの提携協会であるエンジニアリング振興協会の代表として、PMIとの間の協力協定の改訂を巡って、PMI幹部の一部が打ち出した強硬論をつぶすべく、同氏と折衝を行ったが、氏は冷静な判断を以って、筆者やIPMA現会長のAdesh Jain氏の具申を受け入れてくれた経緯があり、それ以来親交が続いている。最近では世界のPM大会で年に4−5回ご一緒するWoodward氏に是非日本のPMを現場で見てもらいたかった。
 筆者の願いは実現し、Woodward氏は大会VIPとして、招待講演者として、またPMAJの友人としてきわめて高い評判を関係者に残された。
 グローバルトラックでの同氏の講演 “The Evolution of Project Management - Are We Getting Better?”は会場満杯の参加者を集め、参加者すべてがが講演に満足したという極めて異例の評価を得た。講演内容がすばらしいだけではなく、思考が明快であるので、英語が分かり易いというコメントも多く、主催者にいちばん嬉しい講演者であった。
 講演の最後のパートは期せずして我がP2Mのフィロソフィーと合い通じるものがあり、参加のPMAJ会員が頷いていたのが印象的であった。
懇親会で筆者、宮崎海外広報担当と  ちなみに、氏が大きな懸念を含むプロジェクトとして挙げたサハリンII LNGプロジェクトは、今ロシア政府の強烈な横槍が入って大揺れであるのは報道のとおりだ。
 夕方の懇親会でも人気者で、多くの参会者と懇談ができたとして大変喜んでおられた。乾杯発声のスピーチでP2Mについて極めて好意的なコメントがあったが、これはお世辞ではなく、氏は今真剣にP2Mをスタディーする機会を求めている。
懇親会で筆者、宮崎海外広報担当と

 明けて9月1日、遠来の友人を11時間にわたって東京ツアーに案内した。これはシビルエンジニアでる氏の興味を考え、また、お互いにプロジェクト屋である我々ならではのツアーにしようという試みであった。読者の皆さんにも海外からの客人のもてなしに参考となると思うので紹介しておく。
●全日空ホテル(地下鉄)官庁街(徒歩)PMAJ(タクシー)銀座(タクシー)皇居前・二重橋(タクシー)新宿副都心・都庁(JR)上野駅(タクシー)浅草(水上バス:隅田川橋観察)竹芝桟橋(ゆりかもめ)新橋(JR)東京駅(新幹線)新横浜(新幹線)東京駅(タクシー)全日空ホテル●
この間食事はすべて和食、試した酒類は、ビール(2種類)、浅草神谷バーの電気ブラン、日本酒(2種類)、梅酒、焼酎(芋、むぎ)。

 さて、Woodward氏が残してくれたコメントである。
  • たった30分で1千名の大会参加者の登録をやってしまうのはまるで魔術である。
  • この大会の内容と会場の質にしてこの参加費は驚愕である。いくらボランティアがすべて采配している。とはいえ、すごいビジネスモデルを作ったものだ。
  • 大会運営が整然としているし、参加者に熱気が感じられる。
  • エクゼクティブが大会に参加するのはPMIの大会にはない。素晴らしい。
  • (日本の)ビジネス・エフィシエンシーと(東京の)交通インフラの質は聞きしに勝るものであった。
  • やはり、日本はプロジェクトマネジメントで底力を持っていると感じる。もっと深く日本のPMを研究したい。08年の国際大会には絶対に参加したい。
 Woodwardさん有難うございました。お疲れ様でした。
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