P2M研究会8月活動報告
山崎 司:9月号
1. 東京P2M研究会活動状況
■ 2006/8/9(水)P2M研究会 第5回(参加者15名)18:30〜20:45
場所:ENAA 6階 6C会議室
I.「マルチプロジェクトマネジメントの運営」プレゼンテーション (副題:プロジェクト事業部PM価値の拡大化に向けて)
講師:田中理事長殿
(1) 本プレゼンテーション実施の経緯
- 第4回定例会でプログラムマネジメントとマルチプロジェクトマネジメントの相違点に関する議論があり、研究会メンバーの正しい理解と認識を深めるため、今回、田中理事長に両者の相違と利点についてご講義戴くことになった。
(2) プレゼンテーション要旨
- ・ 専業エンジニアリング会社におけるMPMをモデルとし、平成16年度に研究会を発足し、その際に取り纏めた成果物が本日の講義の素材となっている。
- ・ MPMの定義:「複数プロジェクトの統括管理・事業部横断的プロジェクトマネジメントをMPMと称する。」
- ・ MPMを実施する主体:「社内でプロジェクト事業を所掌する最上位組織」であり、企業によって様々な呼称がある。(エンジニアリング事業部、プロジェクト事業本部など)
- ・ MPMについてはこれまで十分な研究が行われてこなかった。(目下、PMの国際大会ではPMO組織に関する研究・発表が太宗を占めているが。)
- ・ MPMの要諦は、MPMを実施する組織体制が明確になっており、単なる個別プロジェクトの積み上げではなく、MPMとして有機的に複数プロジェクトを運営する手法が識別され、実施されていることである。
- ・ 世界中のPM人口は1,700万人〜2,000万人と言われ、そのうちの85%がIT関係者である。
- ・ エンジニアリング事業vs ITサービス事業に関するPM比較を行うと、プロジェクト定義(要件定義)のエリアにおいて両者の相違が顕著に認められる。すなわち、エンジニアリング事業では手法がほぼ確立しているが、ITサービスの世界においては、当該業務プロセスの遂行自体に困難性が高く、方法論そのものがまだ固まっていない状態にある。
- ・ エンジニアリング会社においてP2Mの認識はそれほど高くはないが、実際行っている業務はP2Mの世界に似通っている。とりわけ意識はしていないものの、業務範囲にスキームモデル、システムモデル、サービスモデルがすべて含まれる。
- ・ また、エンジニアリング会社でのプログラムマネジメントの適用は、トップマネジメント層による経営戦略の策定(とくに成長・競争力戦略における事業ドメインの設定)、および事業部レベルにおける仕組み案件の構築(構想・FS・建設・運営・スクラップまでのプロジェクト・ライフ・サイクル全般にわたるプロジェクト提案)という二つの異なった局面で実施されている。
- ・ MPMをサポートするスタッフ組織としてPMOが存在する。全社共通PM手法の開発・維持や普及、PM技術面でのラインPM組織の支援などを機能とする。
- ・ MPMの発信経緯と今後の取り組みについては、国内外での成果発表とIT業界向けのバージョン作成、英語のガイド作成がある。
II.フリーディスカッション
- 政府間援助についてのコンサルティング役務として、「発展途上国における貧困問題の対応」などテーマとしてはシンプルであるように見えるが命題としてはファジーなものがある。解決策の探索については、複雑系な問題解決となろう。このような事案は、MPMとしてではなく、プログラムマネジメントとしてP2Mの切り口でとらえるべきであろう。
- MPMの起点は、事業部による受注案件選択の合理性の向上にあるとの説明があったが、案件選択の判断はどのレベルが行うのか。
→ 案件選択の評価モデルおよび案件ポートフォリオは事業部門長とそのスタッフによって取りまとめられ、具体的な案件選択の判断は経営の舵取り機構である経営戦略会議の場で行われる。説明したとおり、受注産業においては、受注案件のポートフォリオ形成において主体性が発揮しにくい状況にあるのが一般的である。
- IT業界のシステムベンダーに属しているが、事業運営の取り組みをMPM方式(PMBOK準拠)で行うべきか、プログラムマネジメント方式(P2M準拠)で行えばよいのかアドバイスを戴きたい。
→ ビジネスの世界において、単独の方法で最適解を求めることは無理があると言わざるを得ない。あまたの方向からアプローチ・検討することによってブレークスルーが見出されてくるし、精度も上がってくる。両方について習得されることをお勧めしたい。
- エンジ専業各社は、90年代末から今世紀初頭にかけてリストラクチャリングを行い、少ない従業員数で、(場合によっては従来の半分の人数で)いままで以上の売上高の仕事をこなしている。この状況に至るまでに、事業運営において何かイノベーショナルな仕組みへの切り替え・手法の導入が行われたのか。
→ アジアの通貨危機に端を発した世界的な案件の減少、韓国勢の追い上げによるコスト競争の激化等の影響により、90年代末以降、エンジ業界は受注環境が熾烈化し、これに対応し生き残りを図るために、業務遂行手法をドラスティックに変容させてきた。そのひとつとしてLCE(Low Cost Engineering Center)をアジア諸国に設立し、詳細設計業務を現地のマンパワーにシフトすることにより人件費のコストダウンを実現したことがある。さらに、CADをはじめとするEngineering ITの積極導入を図り、設計業務およびコミュニケーション管理業務を飛躍的に効率化させたこと等があげられる。
- P2Mは経営サイドの視点を多く含んでいるが、PMBOKはプロジェクト遂行のプロセス自体をフォーカスして取り扱っており、経営の側面における言及がほとんどなされていない。これはどのような背景によるものなのか。
→ 欧米(特に米国)においては、経営とオペレーショナルな業務遂行の主体は明確に区別されてきた。【たとえば、ジャック・ウエルチは「経営というものは有能なCEOがいれば、あとはスタッフが数人いれば十分だ」とも語っている。筆者加筆】また、学問の世界においても、経営学とプロジェクトマネジメントの関係は、相互の領域については明確に棲み分けがなされている。わが国においては、このような思想は根付いていないことがバックグラウンドとなっている。
III.今後の進め方について
次回研究会(第6回研究会)の開催は以下のとおりする。
・ 開催日時:2006年9月13日(水)
18:30〜20:30
・ 場所:ENAA 6C会議室
・ 講師:白井 久美子殿
日本ユニシス人材育成部長、日本ユニシス代表取締役社長
・ テーマ:P2M実践事例
-NET(ドットネット)事業立ち上げと企業改革-
P2Mを応用した始めての大きなプログラムを成功させた事例です。大変参考になると思われますので多くの方々の参加を希望します。
2.大阪P2M研究会活動状況
■ 2006/8/23 (水) 第3回P2M実践事例研究会 関西 (参加者14名)16:00〜18:00
場所:松下電器PSS社 新大阪和幸ビル 901会議室
I.分科会進捗状況報告と議論
テーマ1: 緊急時や予期せぬ難問への対応(主査 小石原殿)
- ・第1回分科会開催 メンバー5名
課題の共通認識と今後の進め方まとめ
課題プロジェクトの実態はなかなか表に出にくいが本音で議論
公表された事例論文を分析、議論
テーマ3: P2M企業競争型アアーキテクチャーの事例研究(主査 岩崎殿)メンバー4名
- ・第1回分科会開催 メンバー4名
小原論文(アーキテクチャー関連)と製薬業界での事例まとめをメンバーに配布中、合宿で議論そして他業界の事例まとめを目指す
テーマ4: 複数テーマ(プロジェクト)の実行優先度の判断・管理の仕組み(主査 朝田殿)
- ・第1回分科会開催 メンバー5名
課題の共通認識と今後の進め方
モデルケース設定、それに基づきアンケート形式による情報収集そして分析・まとめを行う
II.特別発表
@ 『プロジェクトXに学ぶ』 分科会テーマ2 (メンバー8名)
講師 海蔵殿、土肥殿
- ・ 分科会を4回開催
- ・ NHK人気番組『プロジェクトX』をP2M視点から分析、課題掘り下げ
- ・ 製造業に関するテーマに絞込む(VDT,著書入手)
- ・ 2人1組で4チーム編成
−分析のための共通のテンプレート作成、それに基づき整理
- ・ 整理検討中のテンプレートの説明
A 『EVM実践と課題』 分科会テーマ5 (メンバー5名)
講師 安達殿
- ・ 第1回分科会開催 課題認識と今後の進め方まとめ
−電設・建設業界、IT業界の実態調査まとめ
- ・ 今回は電設会社におけるEVM実践内容と課題発表
- ・ EVPM(PMI東京翻訳)と日本での実践事例としての比較まとめ
- ・ 実施の効果と課題まとめ
<効果>
トップから現場までの統一指標によるPJ管理可能
課題の早期発見と対応が可能となる
協力会社への過払い抑制
<課題>
EV測定方法、例外管理(アラーム管理の評価指標)、EACの対応
変更管理、データ精度の向上、財務会計との連動他
III.次回第4回研究会(合宿)について
10月21日(土) 13:00〜22:00
10月22日(日) 9:00〜12:00
場所: 大阪パナヒルズ:松下電器保養センター
・ 参加申し込み 23名 未返事メンバーへの確認(事務局)
・ 5つの分科会毎の研究会を中心に推進する
・ 特別講演(渡辺貢成殿)への参加お願い
テーマを含めて、小石原殿、松谷殿に一任
<筆者雑感>
今年の夏はスポーツに関する注目度が高かったように思います。ドイツW杯でのジダンの退場劇、WBAタイトルマッチの疑惑の判定、そして甲子園大会決勝での「延長再試合」など盛りだくさんの出来事がありました。久々に高校野球に熱中し、スポーツ本来の持つ爽快感を味わうことができました。また、「ひたむきさ」、「仲間への信頼」、「日々の努力」という我々が忘れかけていた大切なものを思い出させてくれました。
以上
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