P2M研究会7月活動報告
山崎 司:8月号
1. 東京P2M研究会活動状況
■ 2006/6/30(火)P2M研究部会 第1回OWモデル分科会(参加者7名)18:30〜20:00
場所:ENAA 6階 6E会議室
I.分科会開催の経緯
東京P2M研究会第3回でOWモデルの詳細説明を行い、分科会を開くことを決定した。
II.OWモデル分科会第1回の内容
OWモデルの8つの軸に該当する事例を集めた。この例として事例研究は同じ形式のテンプレートを作成し、どの企業事例も同一スタイルでまとめる。
(1) 企業理念、ビジョン、戦略、特徴(どの軸で特徴があるか)
- @ 小林製薬:(業務プロセス活性化力;意思決定のプロセス化事例)
アイデア提案から仮採用会議、仮採用、検討評価会議、経験者・学識者による評価、最終決定までのプロセスが確立されており、アイデア提案から製品化までの期間が6ヶ月というスピードである。年間生産25%は新製品、利益率がある水準まで低下すると販売を停止するため、会社全体としての利益率は高い。
- A NECフィールディング:(サービス提供力事例)
顧客の価値観がわが社の価値観を理念に顧客満足度向上を達成し、3年で売り上げ2倍とする。社長のユニークな発想で顧客の信頼が抜群の会社を築き上げた。
- B セコム:(基盤資源を活用した事例)
日本の電話専用回線の60%を取得し、セキュリティ分野での地位を確立。専用回線を活かした、健康管理システム、介護システムと新規分野に幅を広げ、将来性のある企業に成長した。
- C IBM:(開発プロジェクト“Innovative Products Development”の意思決定システム合理化事例)
組織的合理性、開発プロセス、評価基準、評価システムが示され、ライフサイクルの各段階でチェックが入るシステムが確立されている。
(2) 事例を集める目的
- 現在これらの事例は公に出版された資料を整理し、パワーポイントに落とし込む作業をしている。
一つの事例をPP化するのに早くて3日〜1週間以上を費やしている。これら事例が各軸やその軸に属する要素としての事例が収集されると、これらはベストプラクティスとして各軸上にプロットできると各軸上でランキングができる。各軸にライク付けができると、わが社の企業競争力はどの軸にあり、レベルはランク3だということができる。多くの方が参画していただけると、この作業は早く終了できるため。
(3) 8つの軸の補強
- 8つの軸はレベル化された要素によって構成される。新しい構成要素についての提案を受け付け洗練化を進める。
(4) 当日の成果と次回開催予定
- OWモデル研究推進者の講義を進めたが出席者はまだ全体の内容把握に充分な時間がとれず、次回まで研究テーマを持ち越すことになった。
次回開催は7月末を予定するが、主席者と相談し、開催日を決め広報する。
■7月11日(火)東京P2M研究会第4回(参加者22名)18:30〜20:45
場所:ENAA 6階 6C会議室
I.「P2MのJICA事業への適用に向けて」のプレゼンテーション
講師:中村明氏
(1) プレゼンテーション概要
- @ JICAの援助案件について、従来のハードを中心としたプロジェクト・アプローチでは限界があることが明らかになり、ソフト及びサービスを包含するプログラム・アプローチの導入に向けP2Mを研究してきた。
これは、単なる複数のプロジェクトの寄せ集めに過ぎないマルチプロジェクト管理から脱して、統合概念を持つプログラムに移行することを主眼としている。又、援助案件と言う特性上ライフサイクル・マネジメントという概念が非常に重要になっている。更にステークホルダーが多岐に亘るので関係性マネジメントの概念も重要である。
- <具体例>
灌漑施設+水管理システム+組織作り+品種の改良+・・・=農業生産性向上(ゴール)という案件に対して、従来は灌漑施設の建設という単体プロジェクトでのアプローチで援助を行ってきた。しかし、全体像がないままに個別問題の解決を図っても、全体使命の解決にはつながらない。又、多様な地域住民のニーズを寄せ集めてもマルチプロジェクトになるだけであった。全体像を作るためのプログラムをきちっとデザインしていなかったとの反省から、問題解決だけでなく「あるべき姿」からのアプローチを図ってゆきたいと考えている。
- A プログラムのデザインにおいては2系統のマネジメント・プロセスが形成される。
一つはビジョン/ミッションを描き、プロジェクトの取捨選択を行うプログラム・マネジメントのプロセス、もう一つはそこから導かれたミッションを実行していくプロジェクト・マネジメントのプロセスだ。
- B プログラムの概念は必要不可欠だが、そのデザインにおいては担当者の力量に左右される部分が大きい。Step1〜Step5は今までは存在しなかったプロセスである。又、マネジメントとリンクしないと実践に移せない。今、その為の人材育成を行っている。今後2〜3年計画で、JICAモデルとして実現していきたい。プログラム単位で仮説の検証と選択ができるようにプログラムをデザインして欲しいと考えている。
(2) 質疑応答、意見交換
- @ Step7の中間までがスキームモデル(構想計画)という認識か。JICAモデルにはOWモデルが使えるのではないか。
- A プログラムの実施とは、プロジェクトを取捨選択し、優先度を付けて、行き先を見極めることであり、価値目標の評価を行うことによって、価値を最大にすることだ。(PMBOKとの違い)
- B 従来からある開発計画(開発戦略)があってその中にプロジェクトが位置づけられるのとP2Mアプローチとの違いは何か。プロジェクトがあってスコープを決めるのか、スコープが先にあるのか。
→ 従来はプロジェクト先行、ハード先行、日本人先行、プロジェクトのためのプロジェクトという位置付けであった。これをプログラム先行に逆転したい。価値を評価できるマネジメントを引き込みたい。従来はマネジメントの視点が欠落していた。
- C プログラムのスコープをどのレベルでくくるのかが難しいのではないか。全体使命のスコープを農業生産性向上か、農家の収入か、流通まで考えるのかという具合に多様に考えられる。
→ 確かに全体観は意志の問題だ。価値にはデシジョンが絡む。異なる価値同士がバッティングするという面がある。
- D ビジネスの世界における目標は、「出来ないことはやらない」という割り切りが少なからず存在する。開発援助の目標設定においてはそのようなことはないのか。限られた予算配分では1つか2つのプロジェクトしかやれないのに、全体観を議論する空しさはないのか。
→ プログラム・デザインは選択と集中のためのツールとして使う。その中から重点課題として絞り込まれたものをモジュラープロジェクトとして取り組み、他のパートナーとの援助協力等を行いながら全体の価値創造につながる開発の呼び水になるように工夫したい。又、価値目標として全体性があれば、プログラムの規模は小さくても良い。自律的発展に向かわせるトリガーになればよいと考える。
→ プログラム・デザインにおいては、JICA側の視点とユーザー側の視点で、プログラムの定義にバラツキが出る。また、国の枠を超えてデザインするということも困難である。戦略(スーパーゴール)に基づく「あるべき姿」を描きプロジェクト選択をしたいが、予算枠の制約もあって困難性がある。
→ 日本的マネジメント風土に馴染みやすいからか、プログラムの概念まで発展させずに、マルチプロジェクトというプロジェクトの集合体でよしとする傾向がある。
- E PCM(Project Cycle Management)には手法の受講終了資格制度がある。一方、P2Mにはマネジメント資格体系としてPMC/PMS/PMR/PMAがある。普及させるためには必要と考えている。
- F プロジェクトにしろ、プログラムにしろ、マネジメントするのはJICA職員しかいない。しかしそのマネジメント・スキルが伴っていないために、現在は充分機能していない。特に、プログラム・マネジメントのハードルは高い。どのように育成していくのか模索中である。新生JICAに期待している。何れにしてもJICA職員はプログラム・マネジメント・スキルを持って現場主義で実践していく必要があると考えている。
II.今後の進め方について
次回のテーマについて、
@ P2Mの実践事例
→ 実践事例で関心の高いもの
A P2Mとマルチプロジェクト(次回テーマ)
→ 田中理事長に講師を依頼する(渡辺殿)
B JICAモデルの更に詳細・具体的内容を知りたい(内田殿)
→ ICNetの岡本殿に相談する(中村殿)
2. 大阪P2M研究会活動状況
■ 2006/6/21 (水) 第2回P2M実践事例研究会 関西 (参加者18名)16:00〜18:00
場所:松下電器PSS社 新大阪和幸ビル 903会議室
I.研究会テーマとグループ編成
8つのテーマを6つに絞込み、テーマを決定:各テーマの概要説明
・各テーマの主査を中心に、メンバー決定(欠席の方含めて事務局まとめ)
今後はテーマ毎に研究会を推進(メールの公開と事務局への報告)
・事務局への報告;研究会案内と簡単な議事録(CC:にて小石原世話人へ)
* 複数テーマへの参加OKとする
・PMAJ関西オフイス会議室利用の件(新大阪から徒歩5分)
*主査の皆様へ 会議室ご利用ください(Max 8名)
6つのテーマ
- @ 緊急時や予期せぬ難問への対応について(小石原殿)
A プロジェクトXに学ぶ(海蔵殿)
B P2M企業競争力型アーキテクチャー事例研究(岩崎殿)
C 複数プロジェクト間の実行優先度の判断・権利の仕組みづくり(朝田殿)
D 異文化の言語・生活より観察したコミュニケーション上の差異と着眼点(五十嵐殿)
E EVMの実態調査と実務のポイント(安達殿)
II.今後のスケジュールについて
・8月度スケジュールは第4水曜日(8月23日):お盆休みを避ける
・10月度合宿について
10月21日(土) 13:00〜22:00
10月22日(日) 9:00〜12:00
場所: 大阪パナヒルズ:松下電器保養センター
大阪モノレール『宇野辺駅』徒歩5分 シャトルバス20分間隔
JR茨木駅 タクシー5分
会費: 5000円
*各グループ 10月度合宿目指して研究会の推進
・研究会開催日程、開始時間アンケート結果
現行維持とする(現行と18時〜20時が共に7票、同数にて分かれる)
(理由)
・全体会議は後、わずかであること
・終了後の懇親会も交流の場として大切な場であること
・テーマ毎の研究会は各主査のもと自由に時間設定が出来ること
III.『緊急時や予期せぬ難問への対応について』のプレゼンテーション
講師 小石原 健介殿
ドーバー海峡トンネルプロ、関西国際空港プロでの実践事例から学ぶ
@ ターンキー契約で受注した某社の直面する問題と対応策
・G氏の招聘と活躍
A 建設工事遂行の過程における緊急事態とその対応
・即断即決、現場リーダーの危機管理の大切さ
<危機管理対応のポイント>
・初動作の大切さ
・プロジェクト成功への道筋が顕在化
・決断へのタイミングと即断即決
・リーダーとしての強い自己確信と自己責任
・ステークホルダー間の強い信頼関係
・既存の枠組みや原則論にとらわれない発想と全体最適化の視点
<筆者雑感>
夏の風物詩である花火大会が各地で開かれています。夜空に広がる大輪は芸術品と言っても過言ではありません。「大勢の人が楽しみ、夢と感動を共有する」というミッションを持ったイベントを今年も堪能しようと思います。
以上
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