今月のひとこと
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「ボランティアは進歩し、組織人は退歩する」

オンライン編集長 渡辺 貢成:9月号

 最近アルビン・トフラー著「富の未来」を読みました。トフラーは著名な未来学者です。10年に1冊の本を出版しています。10年立って、発想を変えない人は世渡りできないよと言っている人です。「第三の波」を書いて情報化時代の出現を予言しました。「パワーシフト」を書いて知価時代の到来を予言しました。今度は「富の未来」です。どの本も常識を破る観察と発想によって私たちを魅了します。魅力を感じるのは他の高名な評論家指摘しないが、私たちがすでにその芽に気がついている問題を明確に説明しているからです。

 この本の主張の第一は社会の変化と組織の同時性です。社会(市場)の変化に合わせて組織が同じスピードで変化することを同時性といいます。言葉をかえると、市場の変化に追従できない組織は没落するよといっています。
 企業は100Km/hで走っている。社会団体は90Km/h、家族は60Km/h、労働組合は30Km/h、官僚機構は25Km/h、教育制度は10Km/hだとしています。ここで面白い現象が現れます。官僚組織が低速車で走ると、高速車の企業や中速車の家族はいろいろな不便を感じます。この不便を解消する存在としてボランティア活動が発生するようです。低速で走っている組織は社会の不便を解消できませんから、この組織の人間は次第に社会から取り残されていきます。官僚機構はつぶれないからと年配の人は考えていますが、若手はこの現状に我慢できなくなり、次第に内部崩壊に向かっていきます。

 もう一つ面白い話は今、世界の年間総生産額ほぼ50兆ドルだそうです。しかし、隠れた経済規模が約50兆ドルあるそうです。それは生産消費者の生産額だそうです。農家は生産して消費しています。これは統計に載りません。家庭の主婦は掃除、洗濯、食事、育児、教育を担当しています。これも統計に載りません。しかし、外食すると統計に載ります。この点を良く考えてください。主婦が働きに出ます。育児の世話は保育園の保母さん行います。主婦の生産が統計になり、保母や、外食の費用が統計に載ります。主婦が働くと主婦の働きと、主婦の代行業が統計に載ります。仕事が倍になることです。主婦が介護をしている場合、働きに出ると、介護をする業務が増えます。間に合わないときはボランティアが援助してくれます。

   ここでは2つの問題があることを理解してください。少子化で主婦の代行サービスがビジネスになります。ボランティア活動が起こり、社会がボランティア活動の意義を認識したとき、人々は金を払ってでもそのサービスを受ける人が増えるということです。2つの事柄から考えられることは、日本の将来は製造業以外でも新しいビジネスがどんどん発生しつつあることです。

   また逆にIT化でどのような問題が発生しているか考えて見ましょう。銀行の窓口業務が縮小し、預金者が窓口の代行をしています。小売やレストランはコストダウンを図るためセルフサービスが増えます。すると、経済統計からサービスの量が減って、生産消費者の統計に載らない裏の金額が増えることになります。一口で言うと個人の代行をするサービスが益々増えて行きますが、逆にデジタル化で個人がコンピュータを使うという自分のための無償のサービスという生産消費の仕事が増えていくと言うことになります。

   P2Mが価値の創出を唱えているのは、これから将来にわたって新しい価値が発生していることを理解して欲しいからです。時代の変化とは新しい代行サービスが増えるということです。そしてボランティア活動は新しい、ビジネスチャンスの芽であることを理解しましょうというのが今月の一言です。