懸賞つきPMクイズ
先号   次号

懸賞つきPMクイズ(2)の回答

芝 安曇:8月号

クイズ 「KKD(経験・勘・度胸)のPM」
 6月号PMAJ関西酒井さんからのメッセージは「KKDのPM」である。このKKDは人によって評価が逆転する。サイエンスを強調するPMBOKの講習会に行くと「KKD」は駄目人間の典型といわれる。一方現場感覚の人はこの「KKD」を尊重する。
 同じ事柄を正反対に捉えるのは、問題を定義しないで感覚で捉えて発言しているからである。この点サイエンスを自称するPMBOK派も実は科学的にものごとをとられているといえない。単にマニュアルに書いてあるから発言しているのだろう。

 筆者の定義では『「KKD」はPMにとって必要条件であるが、十分条件とならない』となる。このためには経験・勘・度胸とは何か定義しなければならない。

PMにおける:サイエンスとアート
 上図はPMにおけるサイエンスとアートの役割を示したものである。PMにおける構想と計画は最も重要な部分である。サイエンスは先人の経験の集積し、論理的に整理したもので構想、計画には欠かすことができない。その意味で個人単位のアート(KKD)だけでは十分条件とはいえない。しかしプロジェクトが進行するにつれて、常に問題が発生する。この突然起こる問題の解決にはPMBOKそのものには何も書いていない。個人が自分の力量の中で考え、相談し、解決案を提案し、最後に決断し、実行しなければならない。ここで活躍するのがKKDである。だがKKDに問題がないわけではない。経験10年という経験者すべてが実力者とはいえない。経験や勘を働かせ、決断するには、経験をアートにまで高めなければならない。

問題:アートにまで高められた経験・勘・度胸とはどのようなものか定義せよ。
図を描いて説明できれば最高。





回答:
「経験」とは見たり、聞いたり、試したりすることによって実際に身についた知識、技能といえる。
ここで経験がアート(PMの実践において役に立つまでに煮詰まったもの)になるためには、企画・計画・実行・調整・成果(あるいは計画・実行・検証・是正措置)というマネジメントサイクルを通して得られた生々しい体験が必要である。
経験の体験化手法

回答:
「勘」とは辞書によれば:直感的にさとる、心の働きとある。
勘がPMで役に立つためには、アート化された経験が集積されて、物事を大局的に捉えることができるようになったとき、その勘はアートと呼ぶことができる。
経験をつんだプロマネは問題に直面したとき、瞬時にこれは「経験のサブシステム1」で片付く、「サブシステム2」で片付くことに気がつく。単独のサブシステムで片付かないときは、図に示すごとく経験のサブシステムの脳内(右脳)ネットワークにより、解を発見することが多い(これは訓練のたまものといえる)。この後はその勘を検証することで確信を持って結論を出す。自分の勘を持たないプロマネは役に立たない。ただ、勘に頼りすぎることの怖さも理解していなければならない。
勘の育成

回答:
「度胸」とはリスクマネジメントである。プロマネは自分の責任ですべての問題を解決している。これは「度胸」のいる仕事である。PMにおける「問題の解決」は 正解が存在するとは限らない。結果が勝負である。「問題解決」に正解がないとすれば、上司、部下交えたコンセンサスつくりが大切な仕事になる。周囲を巻き込み、答えに対し意識的に同罪となる人々を増やし、エビデンスをつくって業務を進めるという細心さも必要である。プロマネは解決すべき問題と内部の敵に囲まれている。脇が甘いと立場が悪くなったとき、後ろから矢を射られるから、常に準備は必要である。プロマネは周囲を巻き込み、座る場所を明確に確保したとき、「度胸」ある決定が行える。
プロジェクト・マネジャーの度胸はどこから生まれる