PMプロの知恵コーナー
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「PMのリース業への挑戦(7)」
−企業再生ビジネス−

向後 忠明:8月号

 今月号は企業再生ビジネスの話をします。
 「え!!! 何故リース業が企業再生ビジネス?」と思う人も多くいることと思います。
 その通りです。
 私たちのPTは企業再生ビジネスそのものを手がけるのではなく、企業再生を行なっている企業からの要請に従い、資金をつけることが目的です。

  新規のプロジェクトではいつも実行することですが、まずは仕事全体の流れと構成要素がどのようなものかを理解することが必要です。
 再生事業ビジネスも新規プロジェクトとして考えれば同じことです。
 その理由はわれわれの与えられた仕事の範囲や役割と言うものがどこにあり、何をどこまでやればよいのかを知るためです。このことは、自分に与えられた仕事がプロジェクトの一部であっても、全体を理解して自分の計画を立てるという習慣は将来の大規模プロジェクトのマネジメントスキルを養う上で役に立ち、また、顧客や協働者の気がつかなかったところへのアドバイスもできるようになり、結果としてよい仕事ができるからです。

  さて、企業再生ビジネスの話に戻りすが、このビジネス全体概略プロセスフローは以下の通りです。
@ 企業側からの要請
A 企業調査(Due Diligence)
B 企業・財務分析
C 問題(リスク)分析
D 経営全般のリストラ勧告とその再生プロセス
 
E 再生プロセスに従った実行作業(銀行やリース会社との不良債権処理交渉、資本政策、資金調達そして経営支援)等のプロセスがある。
 そごう、大丸等の大企業の企業再生で取られた手順も似たりよったりと思いますが、一般的に@の企業側からの要請は原則その会社のトップからの要請であることが原則です。なぜなら、トップが自ら問題意識を持たないまま企業診断をしても意味の無いものになってしまうケースが殆どだからです。
 よってA企業調査もまずはトップからのヒアリングから始まります。そして順次B、CそしてDへのプロセスへと進めるようです。ここまではIT系プロジェクトの情報化企画や一般投資型のプロジェクトの企画でも概略同じプロセスです。
 しかし、企業再生会社の能力の真骨頂はEの不良債権の処理とその後の資金調達や経営管理にあるように感じました。

 このように見てくると、ここでもP2Mのプログラムマネジメントに関わる一連のプロセスが垣間見えてきます。企業再生ビジネスの中でプロジェクトマネジャのような役割、すなわちプロセス全般を金融面の各種処理も含めマネジメントする人です。
 その職種をターンアラウンドスペシャリスト(企業再生請負人)と言います。

  意外なところで、職種の名称は異なりますが、われわれのプロジェクト&プログラムマネジメントのプロセス“スキームモデル、システムプロジェクトモデルそしてサービスモデル”の全プロセスに関与するスペシャリストがいたことに驚きました。
 しかし、現在のところでは再生ビジネスにおける全てのプロセスをマネジメントできる人は殆どいないようです。なぜなら、このような呼称は最近に作られたものであり、まだまだ歴史も浅く人材も育っていません。

  よって、P2Mは企業再生の分野でも金融知識と会社経営知識の強化により、この分野でも応用可能でしょう。

 ここで質問ですが、「われわれリース業はどのような範囲に関与したか?」前記のプロセスの@〜Eのどれでしょうか?
 そうです、Eの再生プロセスに従った実行作業(銀行やリース会社との不良債権処理交渉、資本政策、資金調達そして経営支援)の部分です。特に資金調達の部分で協力をすることです。
 当初、企業再生会社からの要求内容は、@〜Dまでの作業を終えかつ銀行の不良債権も一部を除きリスケ(銀行の借金返済を延ばしたり遅らせたりすること)や借金の資本への入れ替え(DES:債権の株式化)を終えているものでした。また、債権放棄した銀行の債権についてのサーベイヤーへの売却交渉も進めている時でした。

 私たちPTは担当営業部と協力し、企業再生会社からの前頁に示す@〜D間でのプロセスで検証された内容を書類で確認する作業から始めました。そして、その作業と平行して企業再生会社及び対象の企業の社長及び副社長との打ち合わもしました。

 また、企業再生会社の検討資料をそのまま信用するわけではなく、彼らの資料の検証、特に工場新設を考えた将来の事業採算性や製品群と製品販売戦略や既存工場の現地調査など自分の目での確認も大事と思い、自分たちなりの検証も行ないました。

  その結果では、この会社はかなりの老舗の菓子製造販売会社であり、地域にも名が知れている企業で、周囲の評判もよく、決して企業再生の対象となるような会社ではありませんでした。
しかし、社長や副社長の話を聞くことや財務内容を見ていくうちに、「なるほど!」と思える事実が浮かんできました。

 ―To be Continued―