PMプロの知恵コーナー
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「夢工学(46)」

川勝 良昭 [プロフィール] :8月号

     

悪夢工学

9 B1は何故優れた能力を持つのか
1) なぜB1は優れた能力を持つのか

 B1は、ほぼ例外なく前号で書いた様な極めて優れた能力を持っている。何故だろうか。その秘密は、自分への超肯定と他者への超否定というB1の性格にある。

 B1は、超否定している他者によって自分が否定される様な精神的、物理的な認識や行動を絶対に許さない。平たく言えば、絶対に他者に負けないことを強く願っている。

 またB1は、他者をして自分を超肯定させるために自分が極めて優れた能力を持っていることを証明する必要性を強く自覚している。その結果、B1は、若い頃から人の何十倍、何百倍の努力、時間、資本などを投入してきた。そして自分を超肯定できるステータス、また他者からも超肯定されるステータスを確立してきた。その結果、B1は、ほぼ例外なく優秀な能力を持つに至るのである。

   B1は、自分肯定のステータスが確かなものになればなるほど、他者否定の姿勢や考えが益々激しさを増す。そして遂にB1の自分超肯定が確立された時点で他者超否定も確立されるとい相乗同時効果が生まれる。

2) B1の優れた能力を世のために活用可能か
 我々は、仕事の面や生活の面で経験する「既成概念」や「先入観」を変えることは極めて難しい。その様な簡単な事例から類推してもB1の性格パターンを変えることは、如何に困難かを容易に推測されるだろう。

  しかしB1の優れた能力を人のために活用する様に変身教育が出来ないか検討した。残念ながら現時点では「夢工学の教育論」によってB1を改心させ、人格パターンを変え、Aタイプの人物に変身させることは出来ないと結論つけている。
 人々の深層心理には幼少から大人への成長過程で成功や失敗の実体験を通じて極めて強固に形成された性格パターンが組み込まれている。従って簡単には変えられない。所謂「三つ子の魂は100歳まで」存在する。

3) B1を変身させることは可能性か
 B1を変身させるのは極めて困難である。しかし待ったく不可能なのであろうか。

(1)B1による自発的性格変身?
 B1が神の啓示を受けたり、奇跡を体験したりするなどのB1の生命観や人生観を根本から変える様な大事件が起こった場合、B1が自発的に「宗教教育」「思想教育」「精神療法」などを受け、Aタイプヘの性格変身を遂げる努力をすればその可能性はあるだろう。しかし現時点での筆者のプロジェクト成否研究や個人的体験から、その様な場合でもその可能性は低いと判断している。

(2)B1への献身による性格変身?
 B1が九死一生の危機を他者に救って貰ったり、B1への献身的看護で一命を取りとめるなどB1のために他者が支援した場合、B1は従来持っていた生命観や人生観を根本から変えるか可能性があるだろうか。そしてB1が他者への肯定的評価が芽生えさせ、尊敬、愛情、協力姿勢などを醸成させるだろうか。

  筆者の答えは、正直言って分からない。B1が他者の献身を素直に受け止めるか、計算付くの献身と受け止めるかによってB1の変身の可能性が変わるだろう。前者の場合は恐らく変身の可能性があるだろう。しかし後者の場合は、可能性は全くないだろう。

(3)B1への地獄の特訓で性格変身?
 筆者は、ひところ日本で流行った「十三日間・地獄の特訓」という教育研修を受けたことがある。その激しい研修で自殺者が出たことで有名である。筆者はこの激しい研修体験でB1の変身教育は可能であろうか。

   「十三日間・地獄の特訓」、「米国海兵隊の特別訓練、グリーン・ベレーの特別訓練などのは、厳しい地獄の様な訓練状況下での危機対応訓練である。B1はその訓練を受けることを拒否出来ない場合は、その訓練を見事に優秀な成績でクリアーするだろう。しかもクリアーしてもこの種の訓練でB1の人格変身は難しいだろう。

 何故なら地獄の訓練は、訓練を受けるB1に対する否定的行動であり、否定的評価を意味する。B1は、その訓練指導者の否定的行動と評価を絶対に容認できない性格を持つ。従ってB1は、訓練指導者から肯定的評価を受けるまでまさに命懸けの努力をする。他の被訓練者は訓練という認識があるが、B1にとっては訓練ではない。自己を否定されていることを撤回させるための実戦そのものである。従って見事に優秀な成績で訓練を終われば、B1は益々他者への否定的評価を強化することになる。
つづく