グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」第10回
PMブランド力について考える−その1

GPMF会長  田中 弘:8月号

  筆者は日本のPM総合力は世界有数の高いレベルにあると信じており、世界各地で講演のたびにこのことを力説している。日本のグローバルエンジニアリング企業が世界に誇るPM力、P2M、大手IT企業の力強いPMO展開など、素材には事欠かない。しかし、どうもPM日本のブランド価値は一向に上らない。悔しくてならないが、冷静に考えれば、やはり国としてまとまった努力が足りないということを痛感する。
 余談であるが、最近日本人として嬉しかったことは全日空(ANA)の国際的な評判が大変良くなったことである。かなりの頻度で海外に出る筆者はANAのマイレージ会員であるので本年もエコノミークラスで2往復、ビジネスクラスで1往復ANA便を利用したが、機内設備もサービスも格段に向上している。特に先週モントリオールのPMIリサーチ大会で招待講演を行うために出張した際に利用したワシントンDCへのフライトの新しいビジネスクラスのサービスは素晴らしいと思っていたら、同乗の米国人乗客達が、「友人に薦められてANAに乗ったがユナイテッドのファーストクラスより充実している、もうユナイテッドはやめた」という声が相次いだ。また、モントリオールで筆者の友人達にこの話をしたら彼らにもANAの名声はかなり浸透していた。
 ANAクオリティーは、同社の社員が一丸となってANAのブランド力を上げようと努力しており、一種のプロジェクト志向が、サクセス意識と意思疎通の良さを生んでいる賜物であるという印象を得た。それに引き換えかつてのフラッグキャリアは・・・。
 国としてPMブランド構築努力で抜きん出ているのは中国である。現在PMリーダー達に、明日のPMチャンピオンは誰か、と質問すれば、かなりの人は中国と答える。中国政府が2000年に導入した「国づくりを支えるPM」政策、政府外務部(省)の「PMP資格はMBAより上だ」という言明、国に後押しされて、2001年からたった5年で、IPMA資格保有者約8,000名、PMP保有者12,000名を達成し、あと5年内にこれを60万人規模にするという桁違いの実行力。これだけではない。中国文部科学部の肝入りで、2003年にスタートした大学院修士課程でのPMプログラム(専攻)はたった3年で中国ナンバーワンの清華大学を筆頭に96の大学で設置を見ており、もうじき毎年5,000名の卒業生が輩出される。このようにして凄烈な中国PMのブランドが形成されている。
 日本のPMも20年前には世界から大いに期待され、また恐れられていた。しかし、ブランド力の構築はどうも中途半端であった。この辺の反省とリカバリーについて次号で考えたい。
 先週のモントリオールに続いて今週はConstruction Industry Instituteの年次大会が開催されるので、カリフォルニアのサンディエゴに来てこの原稿を書いている。