先号   次号

PMBOK®ガイドの読み方(第8回)
― 目的・立場による読み方 ―

研修事業第2部会 宮村 孝行:6月号

★はじめに
  PMBOK®ガイドの読み方も、8回目を迎えた。先月号までに研修事業第2部会の面々が、PMP®を取得してからもPMBOK®ガイドを読むべきである。実務に活かすためにも読んでほしい。プロジェクトを成功させるためにも読むべきである。とPMBOK®の有効性を訴えている。筆者は、1996年版で2001年にPMP®を取得したが、PMAJの研修事業第2部会に参加することによって、2000年版、第3版PMBOK®ガイドを読み込んでいる。なぜなら、明確な目的を持っているからである。
 5月号にPMP®取得者の年度別推移が紹介されたが、その内何人が昨年改定された第3版を読んでいるのであろうか? 既にPMP®取得済みの1.3万人の方、また全国には数10万人以上いるといわれるプロジェクト・マネジャーの方には是非とも、PMBOK®ガイド第3版を読み込んで欲しいと思う。明確な目的をもって・・・・。
 今回は、PMBOK®ガイドの読み方を「目的・立場による読み方」の視点で、筆者が常日頃思っていることを紹介したい。

★PMBOK®との出会い
  筆者がPMBOK®に出会ったのは、1999年である。また、本格的にプロジェクトらしき仕事に従事したのは今から約25年前、情報機器の据付および設備工事からである。この時は、品質確保(Q)・コスト縮減(C)・納期厳守(D)と安全第一(SF)を主眼にPMらしきことを約10年、その後は、VE(Value Engineering)推進部署にて社内の業務改革を約15年担当した。特に業務改革プロジェクトを進める上で、そのマネジメント手法に苦慮していた1999年にPMBOK®と出会った。各プロセスのアウトプットと、それを生成するためのインプットおよびツールと技法が実に明確且つ体系的に纏められており、「目から鱗」の感激と「自分が探し求めていたものはこれだ!」と思った。

★PMBOK®の読み方
目的展開図例 図-1を見ていただきたい。これは、G・ナドラーが提唱する「目的の上位展開」例である。
 今回のテーマは、レベルBの「PMBOK®を読む」であるが、その目的は? と問うてみるとよい。PMBOK®を読む目的は? と問えば、B‘の「PMP®資格を取る」と答える人もいるであろうが、本来の目的は「業務に活かし、プロジェクトを成功に導きたい」と、多くの人は考えていると思う。
 B‘の「PMP®資格を取る」ことは、目的ではなく「お客様に信頼・安心を与える」一つの手段でもあり、客観的評価に繋がると考えるべきであろう。目的と手段をはき違えて仕事をしている会社・人が多いと感じるのは筆者だけであろうか? 何事にも目的・目標を明確にして行動を起こすことが重要である。
 例えば、 「PMBOK®を業務に活かし、プロジェクトを成功に導く」レベルの目的を設定するならば、
   BPMBOK®を読む    ・・・その目的は?
        ↓
★  CPMBOK®理解する ・・・それは何のために?
        ↓
    DPMBOK®納得する  ・・・その目的は?
        ↓
    EPMBOK®活用する  ・・・その目的は? 
 と目的の上位展開を行う。 自分の経験をもとに、PMBOK®に書かれた内容を理解・納得しなければ本当に業務に活かすことは出来ないであろう。筆者は、1996年版の内容を納得するには多少抵抗があった。しかし2000年版、第3版へと改変されるごとに納得する部分は多くなってきている。また、「PMP®資格を取る」にも内容を理解し、納得しないで丸暗記では合格も無理と筆者は考えるが如何だろうか?

★PMBOK®の読み方:立場(場)によってPMBOK®を読み分ける
 今、このジャーナルを読んでいる方は、より経営に近い方、実務でプロジェクトをマネジメントしている方、メンバーとしてプロジェクトに参画している方、品質保証、コスト管理、調達などの担当の方、コンサルタントなど多種・多様の方が居られることと思う。PMBOK®を読む時、業種・業態、自分の立場(ポジション)や、目的によって読み方が変わってくるのは当然であろう。

(1)より経営に近いトップ・マネジャーの読み方
 より経営に近い方で、経営戦略や事業戦略からそのプロジェクトの必要性を評価(費用対効果)し、意思決定する立場であれば、「プロジェクトの立ち上げ」が非常に重要な意味を持つ。PPM(プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント)やフィジビリティが最も関心ごととなる読み方となるが、単独プロジェクトを中心としたPMBOK®では物足らない部分があると思うであろう。その時には「P2M標準ガイドブック」を読まれたい。(筆者はそのためPMSやITCにチャレンジした)

(2)プロジェクト・マネジャーの読み方
 特に、スコープ・マネジメント、コミュニケーション・マネジメント、リスク・マネジメントやPMBOK®用語は何回も読み返し、理解・納得するまで読み込んでおく必要があるだろう。スコープには「成果物スコープ」と「プロジェクト・スコープ」の二種類ありその違いと、PMBOK®の全知識エリアを理解・納得(納得できないところは自分の経験で判断)するまで読み込む。

(3)チーム・メンバーの読み方
 PMBOK®用語の理解と、タイム・マネジメント、コスト・マネジメント、品質マネジメント、コミュニケーション・マネジメント、リスク・マネジメントなどは体で覚え、納得するまで読み込みことが重要ではないだろうか? 自分に負かされたプロセスの中で常にコスト・品質・スケジュールを意識し、そのツールと技法の使い方を含め、プロジェクト・マネジャーとのコミュニケーションを図ること(プロジェクト・マネジャーと共通言語で会話)に主眼を置きPMBOK®を読むと良い。

(4)PMP®資格取得を目標とする読み方(筆者が取得を目指した読み方)
 筆者がPMP®資格取得を目標に決めたのは、2001年の春のことであった。2001年夏にJPMFのPMP®試験対応講座を受講すると共に、自分一人だけの「PMPR資格取得プロジェクト」を立ち上げて、PMBOK®5つのプロセスと9つの知識エリアを適用した。これを元に各知識エリアの「インプット」「ツール&技法」「アウトプット」と、用語の意味、PMI®の考え方などを納得するまで読み、ノートに書き出しては読み返した。ただ、一心にPMBOK®を読み、理解・納得することに集中(英語力不足で問題集には一切目もくれず)した。即ち、縦(知識エリア)・横(プロセス)・斜め読みにより、点から線へ、線から面にする読み方である。

★PMBOK®の読み方:最後に
 筆者は一昨年第一線をリタイヤし、現在は研修事業第2部会に所属しつつITCとして、中小企業への経営支援など微力ながらお手伝いをしている。また、地域コミュニティにも参加しているが、その内容や目的に応じてPMBOK®を何度となく読み返している。 噛めば噛むほどに味のでる「PMBOK®」は、生涯現役として読み続けるであろう。
次回担当者に続く