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PMBOK®ガイドの読み方(第7回)
―PMP®資格者になってから読む―

研修事業第2部会 小溝 利也:5月号

 私は、PMP®資格者になってから再度PMBOK®ガイドを読むべきであると考えています。なぜなら、PMP®資格者となったことによりプロジェクトマネジメントの知識ベースの基礎ができたと理解しているからです。

★PMBOK®との出会い
  まず、最初に私とPMBOK®との出会いから、お話させていただきます。私は社会人になってから早いもので約25年になります。私の会社はIT企業ですが、10年も経つと(会社によるが)会社からはある程度の規模のプロジェクトをまかされるようになってくるものです。私は、当初無我夢中でプロジェクトを成功させるため、悪戦苦闘していました。そうした中で私の経験は、先輩から「あ、うん」の呼吸によってKKD(経験、勘、度胸)が伝授され身についていったと考えます。皆さんも、このあたりのご経験はおありかと考えます。そしてさらに数年も経ると、曲がりなりにも自分なりのやり方が確立してくるわけです。そして、それはとりもなおさず後輩に「あ、うん」の呼吸と共にKKDが引き継がれていくのです。過去、自分で成功したプロジェクト、失敗したプロジェクトを経験してきました。どちらかというと失敗した方が多いでしょう。また、同じ様に先輩や後輩の成功や失敗も見てきました。なぜ、プロジェクトは失敗するのでしょう。私は、いろいろな場面で、いろいろな本を読んで、また機会があれば研修会等にも参加しプロジェクトの成功を求めていました。このジャーナルを読まれている方々の中にも、同じような思いでPMBOK®に出会った方も多いのではないでしょうか。

★PMP®資格者になって
 その後、皆さんと同じ様に苦労してやっとPMP®資格者となりました。何の試験に対しても合格した時の喜びは、嬉しいものです。2005年末のPMP®資格者は、世界で13万人、日本で1.3万人がいます。そうした中、憂慮することが起こっているのではと考えている次第です。それは、何人が現在もPMBOK®の知識を有し、現場に活用しているかと言うことです。私が諸先輩方をさしおいて、何を言っているのだ、失礼な奴だとお怒りの方がいるかも知れませんが以下に説明させていただきます。
 下記数字はPMP®資格者の増加を表しています。

日本のPMP®資格者推移 前年伸長
2005年 13000人 185.7%
2004年 7000人 170.7%
2003年 4100人 178.3%
2002年 2300人 135.3%
2001年 1700人 154.5%
2000年 1100人 -.-%

 2000年と2005年のPMP®資格者の増加率は、なんと1181.8%です。この5年間は、ものすごい勢いでPMP®資格者が増加しています。

★大学は出たけれど
 そこで、私が「ふっ」と感じたのは昭和5年当時に「大学は出たけれど」という小津安二郎監督の映画作品を思い出したのです。私は、別にこの作品を観たわけでは無いのですが、なにかタイトルに感じるところがあったのです。昭和5年といえば、当時の大学生は、本当のエリートと考えますが、現在その時代とは社会全体の背景が変化しているので現代には通じないものがあるかもしれません。ですが、前述の記載したように急激なPMP®資格者の増加に伴い、「資格は取ったけれど」、「資格は取ったらおしまい」と考える人がいると考えた次第です。確かに、PMP®資格者となる目標もあって良いわけです。資格者となって名刺にPMPのロゴマークを掲げて活躍されている方々も大勢いらっしゃる事も事実でしょう。受験理由の中には、会社から言われて仕方なく、試験制度が変わるから、資格取得ブーム等の理由があると考えます。それはそれで良いと思うのですが、やっと思いで合格したのですから、もう少し活用しませんか。

★使って何ぼ
 私は、この「PMBOK®ガイドの読み方」の原稿を依頼された時にサブタイトル(題目)を何にしようかと悩んでしまいました。そんな中、会社の同僚が、「資格って取ってしまうとすぐに忘れてしまうよね〜」の一言にハッとしたのです。そうです。資格は活かしてこその資格なのです。運転免許も、使って何ぼの世界とも言えます。いつも車に乗って運転していないと不安になるのと同じです。免許証はとったけど、そのままのペーパドライバでは本当の意味で活用している事にはなりません。いつも、車を運転していないと、高速道路も、複雑な路地裏も、近くのスーパーに買出しに行くのも、どこかぶつけやしないかと不安になります。半年ぶりとかで車に乗っても不安ですよね。それと同じと思うのです。そうです、私が言いたいのは、PMP®資格者にも同じことが言えると考えているのです。プロジェクトとは、独自性があって、期間が定められていて、段階的詳細化が必要なものです。身近にあるものです。なにも会社でのプロジェクトだけがプロジェクトでは無いのです。PMBOK®ガイドを思い出してみてください。私は、PMP®資格者になった後、半年、1年後に読み返して、見直して欲しいのです。そうすることで必ず新しい発見があると考えるのです。また、この原稿を読まれている方々の多くは、PMP®資格者でしょうし、2000年版で取得した方も多いと考えるので、3rd版については特に知識を得てほしいのです。車社会も、いつまでも同じルールでないのです。10年前、5年前に取得した当時と交通ルールは違っています。特に交通ルールで一番大きく変わったと感じているのは、交通違反に関する減点が年々厳しくなっています。そうとは知らずに前は何点であったから大丈夫とはならないし、何時までも過去の知識にたよってはいけないと考えるのです。社会環境に応じて、その時代、時代に応じた対応が必要なわけです。

★PMP®資格者になってからのPMBOK®ガイド
 ここまで、お読みになってご立腹された方もいるでしょう。しかし、せっかく苦労してPMP®資格者となり、その後はどうですか?利用していますか?PMBOK®ガイドを。PMBOK®ガイドは今、どこに置いていますか?手の届く範囲にありますか?あなたの傍においてあるPMBOK®ガイドは、最近いつ見ましたか?今はどこかにいってしまっていませんか?私は、今一度、PMBOK®ガイドを読み返すと、きっと新たな発見があると思うのです。あなたは、確実にPMP®資格を取得してから変わったはずですよ。いつまでも、KKDではやっていけませんよ。私の場合、身近な例えで言えば調達マネジメントの中の契約管理プロセスのツールと技法のひとつ「検査および監査」を用いた考えを実践しています。このプロセスは、簡単に言えば外注する際に受入れ基準を明確にすることで品質保証プロセスとも連動して後々にはトラブルが少なくなっていくと考えています。私は契約時において以前の納期重視型よりは、プログラムテストとバグ発生数を事前に報告させる等の検収基準をより明確にしていくようにしています。まさにこうようにする事によって、少しずつではありますが、検収時にプログラムバグが多いから受入れられないと言ったことでのトラブルは少なくなってきたと感じています。

 はてさて、あなたはここまで読んでどのように感じましたか?その答えは、、、、、。
 PMBOK®ガイドを再度読み返した後に感じるあなた自身が答えです。私は、あなたが、あなた自身によって得た答えは、すべて正解と考えるのです。それは、PMP®資格者になる前に得た知識、それに加えてPMP®資格者になった後に得た経験があるからです。どうぞ、皆さん今一度PMBOK®ガイドを読み返してください。
 きっと、明日、いや今役立つ何かが見つけられるはずですよ。
以上