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「マンション建替プロジエクト奮闘記(その2)」

PMAJ関西支部 岡本 政義:6月号

3. 基本構想の検証(正夢)
 “絵に描いた餅”という表現があります。如何に基本構想が立派でも、実現の可能性が無いのに、さも実現可能のように振舞うことを指します。
  
 これの解決には、この基本構想の実現に熱意をもって取り組んでくれる、デベロッパーを見つける以外方法がありません。いままで建替えの議論が進まなかったのは居住者の意向を反映していない構想と、これに取り組む具体的な熱意あるデベロッパーの不在が原因でありました。

 居住者の建替え合意形成がなされていない計画段階で、この基本構想にチャレンジし、見積費用をかけて、この要求の成否を検討してくれるデベロッパーがいるかどうか、いざ具体的にその検証を開始するにあたって一抹の不安は、そのことにありました。しかし準備委員会として居住者の方々に提案するには、この検証は避けて通れない関門であります。早急にデベロッパーにコンタクトし、この合意形成のための裏付けを取ることに重点をおきました。

 再度基本構想について解説します。マンシヨン建替えにおいては、居住者の意向は、きわめて明確であり、合意をとるためには「還元面積は現在の専用面積程度、建設期間中の仮住まい費用補助」が絶対条件であります。アンケートの内容を分析してみて、余分な出費が反対理由の大半であります。逆にこの条件が満足される範囲に落ち着けば、反対する理由が無くなり建替え合意形成の糸口が開かれることは確実であります。
 いままでの経過からみて、この基本構想を「夢」と見る委員の方もおられました。いままで建替え推進に苦労されてきた委員の方でさえ夢と思われることが正夢になれば、建替え合意が加速されると実感しました。

 基本構想としての、居住者意向を前提に、マンシヨンの等価交換事業を考えた場合、これを依頼されたデベロッパーは、まだ、海のものか山のものか判らない物件を合意形成のない段階で、顧客からイエスかノーかの回答を求められていることになります。単純明快に勝手なことを要求している基本構想に対し、見積費用をかけて、その実現に熱意をもって取り組むかどうかであります。余剰容積率による増床戸数の販売収入予測と、この販売収入予測に対し、建替えにともなう総支出をまかなうコスト創りの検討なしに回答は不可能であります。

 これはデベロッパーの取り組み方針にかかっています。我々のマンシヨンを立地条件からみて、建替え事業者が、従来から注目している優良案件であれば、スムーズにゆくものです。

 その面から見た場合、我々のマンシヨンの周辺は、マンション建替えが進行中であります。マンシヨン北側25m道路に面しては、来年入居予定の分譲マンシヨンが建設中であります。そのためデベロッパーにとって販売予定価格の設定がやりやすいかもしれません。また南側12m道路を介し、大規模な賃貸マンションが建設中であります。周辺環境は、駅直結高架橋利用徒歩2分、北側は、商業地域で生活インフラ完備、そして第1種中高層住宅専用地域、第2種高度地区、建蔽率60%、容積率200%であります。余剰容積があるこの土地が残っていることに、デベロッパーが注目しないわけがありません。我田引水でありますが、構想実現に最適な環境にあると思っています。

 さて本題にもどります。ポイントは、建替えに熱意を持ちその実現に努力してくれる、信頼してまかせられるデベロッパー発掘であります。クチコミも重要な手段ですが、まず、圧倒的な情報入手可能なグーグルを活用しました。

 等価交換による建替え検索で注目したのはT社でした。等価交換の解説から始まり、その事例を発表していました。早速東京本社に電話をし、私の構想(夢)を語りました。これがT社とのなれそめであります。
 本社からの指示により関西支社から協力依頼の電話がしばらくしてありました。その後、敷地面積の登記簿謄本および地籍測量図のチエック、隣接地使用は計画外としてはどうかなど、我々の構想実現に対するアイデアも提供してくれました。

 約1ケ月後の3月末、「検討の結果、基本構想は達成可能」との連絡を、まず電話で頂いた時の感動は、現役引退後の久しぶりの経験でした。
 関西支社での具体的な計画案の受領、Eメールを主体とした種々の質問・要望に対し、十分納得のゆく回答を、すばやい返信で答えてくれました。T社のお陰で、夢が正夢になる自信と、このプロジエクト成功の感触を沸々と感じたわけであります。
 他の数社にも、書面による同様な依頼を各社訪問し検討依頼を行いました。これは、我々マンションの周辺の関連から周辺事情に詳しいデベロッパーを、とりあげました。北側の分譲マンシヨン販売中のデベロッパーにも話をもちこみました。この数社には、我々が前回検討依頼を行ったコンサルタントに仲介を願い照会いたしました。 
 しかし、基本構想に対し満足できる回答には接しませんでした。このような回答は、基本構想にブレーキをかけ、構想を否定する以外なにものでもありません。建替え事業を扱うデベロッパーの、初期段階での顧客に対する対応に温度差を感じた次第です。

 いまとなって考えてみれば、T社へのコンタクトがなければ、この基本構想による居住者の合意形成の提案は実を結ばなかったかもしれません。幸運としか言えないことでありました。デベロッパー発掘は、運も味方せねば困難かもしれません。

 今後は、まず準備委員会がT社内容を納得し「なぜ建替え計画が現実のものになったか」を居住者への充分な説明につとめ、早急に合意形成の輪を広げることが先決であります。
 準備委員会委員の方々への結果報告、管理組合定期集会での中間報告、臨時総会に向けての対応などは、次回とさせて頂きます。

以上