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「マンション建替プロジエクト奮闘記(その1)」

PMAJ関西支部 岡本政義:5月号

1. はじめに
 本年初め、現在賃貸しているマンシヨンの管理組合から、再発足の建替準備委員会に参加の要請があり、私は棟外区分所有者のため、委員長は留任願うこととし副委員長として参加要請を引き受けました。これが建替プロジエクト参加の始まりです。

 私は、1970年大阪千里万博の年、千里ニユータウンの新築分譲マンションを購入しました。10年後、所有権移転に伴い自治会から管理組合になり、年の功で初代委員長に就任し、規約作成など手がけたものでした。現在、当マンションは賃貸していますが早いもので築後36年経過しています。その間、阪神大震災を経験し、3年前、建替準備委員会が発足、修繕か建替えかのアンケート調査を実施、その後コンサルタントを選定し、修繕/建替の両案を起案、昨年3月その説明会が開催されました。

 その際、棟外区分所有者として参加した私は両案に対し、さんざんクレームをつけたものでした。その案は、アンケート結果からみても100%の合意形成には程遠いものと考えたからでした。再発足の委員会に参加要請があったのはそのせいもあり、私もクレームをつけた手前、引き受けざるを得ない状況に立ち至ったわけであります。
 「現居住者100%の合意形成!!」この標語のもと、抜差しならぬ立場に身をおくことになりました。自分の財産でもあり、それを守ることは必要でありますが、ミスリードしては、自分にとどまらず、居住者に迷惑をかけることになります。

 2月の準備委員会の席上、私は基本構想を提案しました。8名の委員中6名が留任の方なので、私の基本構想に賛成して頂いた同じ棟外区分所有者のY氏に協力を依頼し新任委員二人で、この構想をまず検証することにし、次回の会合にその結果を報告することになりました。
 準備委員会への結果報告、管理組合定期集会での中間報告、建替えに関する臨時総会開催、管理組合/準備委員会連名でのデベロッパー選考、現居住者の100%合意形成など、建替え決議までにも多くの問題が山積しています。
 しかし、私は久しぶりに、これに取り組むことに快感をおぼえています。現役時代での見積/調達業務経験をもとにしたプロジエクトコストマネジメントの実践、それが現居住者の快適な居住空間の入手と、私にとっては財産保全を図る一石二鳥のプロジエクトであります。夢を正夢にすべくスタートした次第です。

2. 基本構想(夢)
 3年前の建替えに関するアンケート調査は、居住者全戸の回答を得ました。建替えに対する居住者の高い関心がうかがえるものでありました。
 アンケートの建替えの条件として、当時の準備委員会は、「還元面積(無償専有面積)は63u(現在の専有面積87.2uの約72%)、建設期間中の仮住まい費用は個人負担」としました。これはゼネコンの協力による試算とのことです。
 これに対するアンケートでの居住者反応は、追加費用が発生するなら反対とする方々がほとんどでありました。
 その後のコンサルタントの検討も同様な結果でした。100%の建替え合意形成を図るには、ほど遠いものでありました。 
 再発足の委員会に参加し、私は基本構想として、「還元面積(無償専有面積)80u、建設期間中の仮住まい費用も無償」を提案しました。還元面積80uは、非常に重要な設定ですが、現居住者の合意形成ギリギリの線であるとみました。Y氏の協力のもと、この裏付け検証を行うことにした次第です。
 次回は、その夢を正夢にする検証結果について述べる予定ですが、その前に、等価交換によるマンション建替えについて簡単な解説をおこなっておきます。
 マンションの等価交換は、建替えのための自己資金の負担無く、現在のマンションを撤去して、同程度の新しい居住空間が入手できる、夢のような方式であります。千里ニユータウン内の建替え成功物件は、ほとんど本方式によっています。
 しかし本方式は、そのマンションが付加価値を生む状態でないと成立しません。具体的には、我々のマンションの様に容積率100%強で建設され、その区域が、容積率200%の規制である第1種中高層住宅専用地域のため、現在の全居住者専有面積の倍の専有面積まで建設できることになります。
 我々のマンションが、その恵まれた条件をもっていたのは幸運としかいえません。逆にいえば、すでに200%の容積率で建設されていれば、建替えの場合すべて自己負担になり居住者の合意をうることは不可能になります。一般的にマンション購入時、将来の建替えを含めた考慮も必要であります。
 等価交換の建替え事業の特徴は、余剰容積率により増床した戸数の住居を売却することにより、区分所有者の自己負担を必要としないか、あるいは負担軽減が図れる点にあります。即ち、増床戸数の販売による収入で、デベロッパーの経費、仮住まい費用などをふくめた総建設コストが捻出できれば、自己負担を必要としないことになります。

 我々のゼネコン並びにコンサルタントの試算も同方式によっていますが、おざなりの検討は、折角の夢の計画に、ブレーキをかけることになります。これは、DTC(Design To Cost,マーケットにあうコスト創り)の実践であり、熱意をもって100%の合意形成にむけ顧客のため、その実現に努力するデベロッパーを見つける以外方法はありません。
 次回を期待してください。