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「PMのリース業への挑戦(5)」

向後 忠明:6月号

 今月号からは、満たされない思いを持つ社員が積極的に参加できるようなベース作りのための活動が開始されることになります。すなわち、“変革の始まり”です。

 この時点からの活動は理屈ではなく、実際に企画書に従った活動を行い。具体的成果を上げることが求められます。
 先月号までは“変革の旗揚げ”のための企画書作りとその体制作りで、“あるべき論”を述べてきました。この“あるべき論”には下記に示すような条件を会社から求められています。これらの条件の中で実際の活動を進めるとなると気の重いものになってきます。

 その条件とは下記に示すようなものでした。
  1. チームの活動期間は1年とし、その間に新ビジネス開発PT(PT:Project Team の略称)において開発されるビジネスモデルを全社に定着させること。
  2. 社長直結組織とし、社内の各部との協働で活動を行なう。すなわち、他の組織の協力を得られる前提で活動する。
  3. 人材は各部のリソースを最大限利用する前提なのでPTの人員は極力増やさない。
 “今さら何を言っている”ですが、社長直結で社内各部との協働と言われても、入社間もない人達の集まりで、かつ社内ネットワークも持っていません。その上、この種のビジネスをはじめるための技術的下地も無く、金融業会にも知己が無く、全くゼロの状態からの始まりでまるで“白紙”に字を書くようなものでした。

 これこそ、まさに挑戦です。 または無謀といってもいいでしょう。
 
 組織、体制等の旗揚げまでは何とかこなしてきましたが、この時になって実活動に必要な実践力の未熟さと“あるべき論(理論)”の違いに思い知らされました。
 P2Mのガイドブックに示される“仕組み作りの理論”は大変役に立ち、“あるべき論”の構築には大いに役に立ちましたが、やはり“理論”の域を脱することができないこともわかりました。
 
 このような状況の中でしたが、何はともあれ発射されたロケットはすぐにU-ターンはできません。何はともあれ、このチームは何をなすべきかその具体的ビジネスモデルや社内業務遂行手順作りの作業に入りました。
 もちろん、ビジネスモデルの案は経営会議審議会で既に議論されていたことですが、その詳細はまだ誰にも示していませんでした。
 そこでこれまで温めていた具体的私案を開発PT内に説明し、皆の了解をもらい下記のようなモデルから進めることにしました。
  1. ある特定の案件をSPC(特別目的会社)にて運営し、そこの投資及び融資した資金をその運営により返済及び配当をしていくモデル(例:ショービジネスのような事業の将来性を担保として資金調達をするモデル)
  2. 中小企業を対象とした再生ビジネスモデル(例:中小企業の債務をリスケや買取り、DES(債務の資本化)そしてリースバック等の金融技術を使い債務負担を軽くし、経営支援も行い企業再生するモデル)
  3. 異業種中小企業の技術のインテグレートによる、競争力強化及び新たな事業の創生(プロジェクトマネジメント技術による新グループの組成による中小企業の付加価値化モデル)
  当然のことながら、このモデルを実行することにより波及効果として融資の部分がリースに置き換える一石二鳥の効果も出てくるので、純粋なリース事業への貢献も期待できます。これらを総称して3月号でも称しましたが“プロジェクトリース”と新ビジネス開発PTでは呼ぶことにしました。

 しかし、“言うはや易し”であり、この時点でも、この種のプロジェクトを実行するのに必要なパートナーや対象顧客もいません。それ故、机上の空論といわれてもしょうがない状況でした。
 このような状況を救ってくれたのが、既にお話の手持ちの案件であったショービジネスでした。
 
 ここで前出の田中さんの人的情報ネットワークと彼独特の営業的アプローチが大いに役立ちました。その結果、PTの活動内容が外部に徐々に知れ渡り、“まさかあの堅い会社が、このような新ビジネスに手を出すとは!!”とか“もしかしたら”との思いから、案件を紹介してくれる人も出てきました。
 この案件紹介者の数も日が経つにつれ、徐々に増えてきて、それと同時に案件の数もどんどん増えてきました。
 一方、社長自信の人的ネットワークから人の紹介もされるようになり、その具体化のための活動も活発になり開発PTも忙しくなってきました。
 
 一方、社内においてもその頃になると、徐々に開発PTの活動が知られるようになり、興味を持って、接触してくる人達も現れてきました。
 このように、まだまだ十分ではありませんが、変革プロセスの6段階目の“変革への参加”
がこの時点から始まりました。 
 前にも述べたように、この段階からは理論や理屈ではなく実際の活動の結果が重要となります。すなわち、わずかなものでも具体的な実例が出て、そこに働く人達が真摯にまじめに対応していることにより、人は誰でも協力してくれます。
 ここが理論家や評論家と実務家の違いかもしれません。

 来月号からは、具体的な案件を例に挙げながら、それを具体化するためにどのようにして行ったか、代表的なプロジェクトを対象に話をしていきたいと思います。
以上