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「PMのリース業への挑戦(4)」

向後忠明:5月号

 今月号では新しい仕組み作りによる新ビジネスモデル創出を目的とした活動拠点つくりの話をします。すなわち、変革の旗揚げです。
 これまでも説明して来ましたように私の所属する会社に限らず金融会社は一般的に保守的な人が多いので、この様な前例にない活動に関する旗揚げにはかなりの障壁があることが予想されました。
 その上、プライドだけは高い人達なので、私のような新参者がこのようなことを考えることさえ、問題となるようなところです。
 しかし、私のプロジェクトマネジメントにおける信条は「挑戦無ければ、成長なし」です。
 今回のような企業変革活動もプロジェクトと思えば一般の開発型プロジェクトと比較しても手法は大きく変わることはないと考えています。
 この信条は前回のエッセー「昔取った杵塚」での報告「技術屋が外国での民営化事業で総務、法務、労務、人事の担当をやってきたことの話」で示す経験を踏まえてさらに強固なものとなりました。
 さて、一般のプロジェクトとの違いは何かを考えると、一般の開発型プロジェクトと比べてもそのマネジメント手法については目標や業務内容が明確でありなおかつよほどの代わったプロジェクトでない限り、企業側も担当責任組織に任せますし、人材も豊富にそろっています。
 しかし、今回は会社の既存事業モデルから外れた案件規模も大きい そしてコーポレート与信をベースとしないビジネスモデルを導入するプロジェクトでもあるのですので判断レベルが常に企業のトップにある案件ばかりで、かつこのような事業を担当できる人材も殆どいません。
 なぜなら、この種の活動は“企業の将来ビジネスをどのように持っていくのか?”等のビジネス戦略の一環となるものであり、その立上げの意味はかなり一般のプロジェクトとは異なることになります。
 このような環境の下で、前月号での「変革プロセスの12段階:<変革の始まり>にてプロデューサが登場して問題をクローズアップし・・・・。」にて示したそのクローズアップされた問題点を具体化するための旗揚げが必要となりました。

 この種の活動の旗揚げに際しては、企業としてもハイレベルの判断が必要となるので、トップ直結でかつ各部所の協力が得られるタスクフォース型のプロジェクトチーム作りが必要となります。
 しかし、この主の仕事は企業内組織の企画部や経営企画部といった部署が関与しなければならないはずです。しかし、残念ながらわが社のこれらの部署は全く機能しないことがわかりました。
 その上、新参者である私がこの保守的な会社に新たなビジネスモデルの仕組みつくりの考えを持ってくること自体が問題であり、多くの抵抗勢力が出てくることが容易に想像することができました。
 そこで考えたことは、これらの抵抗勢力には目立たない方法で物理的拠点としての居場所を定めることを画策しました。役員会議などの面倒な手続きも必要ないので社長の許可を得て総務部とともに会社の一角を取得しました。
 それは3人ぐらい執務ができそうであり、かつ会議テーブルも置けそうなこじんまりとした個室でした。

 一方では、社長より依頼のあったショービジネスについての活動も行い、この旗揚げと同時並行的に私と会社の担当役員と田中さんの3人で関係する事業主や資本家誘致のための各種活動を行っていました。
 このショービジネスの活動が副次的な効果を生むことになりました。
 すなわち、この3人はいつも一緒にこの執務室で仕事をしていたので、私の新ビジネスモデルについての考えを2人に詳しく話すことができました。その結果、彼らもこのショービジネス案件は新ビジネス路線の一翼を担うものとの認識を持ち始め、変革活動への旗揚げの同志になる約束をしてくれました。
 この時、思ったことはこちらが真摯な態度で話をすれば社員の人達も本音で話をしてくれ、彼らもリース業の将来について心配しているということもわかりました。また、ショービジネス具体化のための活動を通しても、いろいろな人との出会いがあり、そしていろいろな人からアイデアをもらい、私のミッションとなる活動の内容や具体的案件についてもわかってきました。

 このように旗揚げに必要な条件が整ってきたようなところで懸案であった新ビジネスモデルに関する企画書作りと人材の採用などの活動に本格的に取り組むことになりました。
 まずは企画書つくりであるが、私のこれまで持っていた考え方をショービジネスを一緒にやっている2人の意見を聞きながらまとめ、社長に直接提出し、コメントをもらい最終案としてまとめました。
 その後、企画部と文言の調整等を行い、経営会議にかけることになりました。結果は大きな変更もなく承認され、晴れて堂々と社内的にも活動できるようになりました。

 一方、チームに関わる人材についてもショービジネス案件で一緒に活動していた田中さんを彼の所属会社と交渉し、このプロジェクトチームに移籍することもできました。
 このように当初思っていたより、旗揚げに関する活動は大きな抵抗も無く順調に完了することができました。
 これで新ビジネス開発に関する旗揚げは晴れて認知され、本格的活動に入れることになります。
 なお、来月号からは旗揚げ後のチームの活動から得た情報ですが、いろいろ学ぶことが多いエピソードについて話をしていきたいと思います。