悪夢工学
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「夢工学(44)」

川勝 良昭 [プロフィール] :6月号

     

5 性格の変容は可能か
1) 性格は生涯、変わるか、変わらないか

 大人への成長過程で獲得された表に見えない裏に隠された「本性」としての性格は、大人になった後、変わるか、変わらないかについていろいろな説がある。

 人格自然獲得説だと性格は生涯かわらないことになる。しかし人格後天取得説だと性格取得か、性格変容は、取得時期によって変わることになる。しかし筆者は、成功・失敗体験説であるのでいったん取得した性格は、表面的な性格変容は別として、本性としての性格は、原則として生涯変わらないと考えている。悪夢工学は、「三つ子の魂、百までも」の警えを正しいと見ている。

2) 性格を変えることができるか
 性格は、本当に生涯変わらないのだろうか。極めて興味あるテーマである。何故なら大学教育、社員教育、軍隊教育(日本では自衛隊教育)などの教育は、人間の意識改革や人物変身を目指しているからである。

 悪夢工学は、教育による意識改革や人物変身は、普通の方法では難しいと考えている。しかし教育とは、元々改革や変身を目指すが、一方でそれが可能な人物を探り出し、その人物に磨きかけるという人材発掘教育の面も持つ。

 悪夢工学は、意識改革とか、変身は、それが元々可能な性格の人は変わるが、そうでない性格の人が変わることはないと考えている。しかし物事は常に例外があると言われている。B1タイプの性格の人物がA1に変身する。そのためには180度の性格転換が必要になる。俗に言えばまさに黒を白にする様な話である。

 筆者は、例外として、その人物の性格形成の時期に受けた原因と同じ原因が発生したとか、天からの啓示を受けたとか、奇跡の体験をしたとか、九死一生の危機脱出を助けて貰ったなどの体験すると、幼少から成人に至る過程で取得した性格が変わる可能性がある。しかし極めて例外と考えられる。「本性」としての「性格」と日常の生活圏に於ける「性格」とは、本質的に別物とみる。

他者否定のBタイプが他者肯定のAタイプに変われるか

6 破壊工作は、何故起こるのか
1) 夢破壊者の利害得失

 破壊工作は、何故起こるのか。その答えの一つが自分の「利害得失」である。自分の立場、地位、身分などが危うくなること、自分の利益を失う可能性があること、求める欲求を満たされなくなる危険性があること、厳しい責任を取らされる可能性があること、自分の永年の夢実現が危機的状態になること等が動機となって、破壊工作が行われる。破壊工作は、裏切り、騙し、責任回避、責任転嫁などさまざまな方法で実行される。

2) 夢破壊者の原体験の影響
 夢破壊者の中に、厳しい失敗体験、私利私欲優先の家族環境、歪んだ幼児期教育、親の愛情を受けられなかった残酷な生活体験などの原体験を持っている人物が多い。その人物とはB1である。

 B1はそれらを隠す傾向がある。隠すだけではない。他者に影響力を持つパワーを行使できる地位に就いた時、過去の原体験を清算するかの様に自分の利害得失のために平然と平気で他者のプロジェクトなどに破壊工作を行う。

 B1は他者を蹴落として成功を遂げた体験を持っていたとしても、他者の協力を受けて自らの実力で勝ち取った真の成功体験(英雄体験)は持っていない。

3) 夢破壊者の非目的の動機とは
 夢破壊者の中に上記の様な動機を持たず「破壊」すること自体を動機とする所謂「非目的動機」の破壊者が存在する。この場合は、精神病、精神性疾患、躁警病などを患ったDタイプの人物に多い。他者を精神的に傷めつけたり、苛めたり、攻撃することに快楽を覚え、カタルシスを求めたりする。この非目的動機は意外に組織内で蔓延する場合がある。

 この「理由なき反抗」「動機なき破壊」は始末が悪い。最初は動機がなかなか見つけられないので夢破壊者の破壊工作を防ぐのが極めて困難になる。この問題は今のところ悪夢工学が対応し難い領域の課題である。

4) 夢破壊者の夢実現が動機あるか
 夢破壊者が「夢」を持っている場合といない場合とで破壊工作の動機と如何に関連するかどうかを考えてみたい。これは、以下のことを意味する。夢を持っているなら他者の夢の重要性は分かるはず。だから夢を持っている人物は夢破壊者にはならないという仮説が成り立つかどうかということである。一方夢を持っていない人物は夢破壊者になるかどうかということである。

 夢を持っている場合、その人物がB1であれば、自分の「夢」を大事にする。しかし他者と共に、会社と共に、国と共に夢を実現させる気など初めから持っていない。自分の夢さえ実現できれば、人はどうでもよい。従って夢の保有と破壊工作の有無は関係ない。
つづく