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PMRコーナー
P2Mの魅力、今後に期待すること

青木 邦章:5月号

◆ P2Mとの出会い
・「青木さんのやっていることはP2Mそのものですね!」

 私がP2Mと出会ったのは、3年前、当社に取材に来たある編集者のそんなひとことがきっかけでした。
当社は1987年創業のものづくり系ベンチャー企業で、主に自動車産業の開発・生産支援目的のさまざまな計測機器・試験機器を受託設計製作しております。そのほとんどは毎回異なる目的・異なる仕様の装置でありまさにプロジェクト業務の連続です。そのような業務を少ない人数でどう回しているか、当社の業務管理システムを取材に来た編集者が私の説明に対して発した言葉が、P2Mの存在を教えてくれました。
 プロジェクトリーダー・プロジェクトマネジメントなどという用語は、大企業在籍時代から当たり前のように使っていたものの、果たしてその実態はというと非常に心許ないばかり。ましてやP2Mという言葉が何を意味するのか、まったくわからない状態です。さっそくインターネットで検索し、入門書をとりよせ、そして名古屋で開催されるというモニター講座にもぐりこみました。
・眼からウロコ
 「プロジェクトの定義・P2Mとは?」から始まる講義は私にとっては非常に新鮮で、知的好奇心を十分に満足させるものでした。個別マネジメントフレームについては、既に何らかの形で学習したものも多く、新しい発見は少ないものの、体系的にまとめられたガイドブックは理解しやすく、今後の活用を考えると心強い味方を手に入れたと感謝しています。また、講座の講師陣は経歴多彩で魅力的な方が多く、P2M普及に対する強い思い入れを感じ、仕事に対する取組み姿勢においても、大いに触発されるものがありました。

◆ P2Mの魅力
・プロジェクトマネジメントの整理

 P2Mに接する方々は、プロマネ1年生というよりもそれなりに実務経験を積まれたプロフェッショナルが多いと考えますが、そのような方でも(そのような方だから)「猟師、森を見ず」、とかく部分最適の罠につかまり全体像を把握しにくくなることがあると思います。
 そのような時にあえて一呼吸おき、おちついてプロジェクトの全体像をつかまえ、「ありのままの姿」と「あるべき姿」から自分の進むべき道を考えるのに、このP2Mは最高のツールとなってくれるものと思います。プロフェッショナルとしての自分の行動指針をもう一度整理するのにうってつけの道具立てです。
・禁断の領域;プログラムマネジメントへの踏み込み
 P2Mの最大の魅力はプログラムマネジメントについてきっちりと定義して、それに真正面から取り組んでいることです。プログラムマネジメントの重要性はあるレベル以上のプロマネ経験者であれば誰でも認識しており、その効率的な実践こそが企業や組織に最高のベネフィットを提供することは論を待たないことです。 
 しかし、反面、具体的な理論や解決策の提示となると非常に難しく、誰もが避けてきた道、まさに禁断の領域です。P2Mにおいてもその部分が十分に解決できているとは考えていませんが、あえて火中の栗を拾いに行った先輩諸氏の志と姿勢には、ただただ敬服するのみです。

◆ 今後に期待すること
・PMのレベルアップと地位向上
 何かひとつの専門を深く追求する研究技術者に比べ、プロジェクト全体を統括するゼネラリスト、すなわちプロマネはともすると社会的に低く見られることもあります。また常に現場と密着しており、雑用も含めていろいろなことをてきぱきと処理しなければならないプロジェクトマネジメントは、デスクワークでありながらも3K職場的な過酷さを包含しています。
 そういったある意味、地味で苦労が多いプロマネをきちんと評価して、社会に認知される形にすること。
これもプロマネの資質・能力向上とともに、P2Mにかかわる方々が常に意識しなければいけない重要な課題であると私は思います。
・日本のお家芸「摺り合せ技術」
 日本の今日の成長は、明治維新以降現代に至るまで利害や現象が複雑に絡み合う数多くのプロジェクト業務に対し、逃げ腰にならず真っ向から取り組んできた先輩方のご苦労の賜物であると思います。当初はきちんとした理論もなく、試行錯誤でステークホルダーが一丸となり、文字通り摺り合せを幾層にも重ねながら解決していったものと想像されます。
 しかし、ここ数年、それら蓄積された数多くの暗黙知が世代の交代と共に忘れ去られようとしています。
P2Mの、特にプログラムマネジメントにおいては、それらの知恵や技術をいかにして形式知として体系化・保存し、次世代へつなげるかが課題であると認識しています。
 それは口で言うほど、簡単なことではないかもしれません。しかし、今ならまだ多くの当事者・経験者が存在しているので、形式知化が間に合うことであると考えます。私も微力ながらその一端を担うお手伝いができれば、P2M信奉者として、またPMR一期生として、これ以上にうれしいことはありません。

青木邦章
【経歴】 青木邦章氏
1956年 東京都八王子市生まれ
1977年 東京工業高等専門学校 機械工学科 卒業
同年 ヤマハ発動機(株) 入社 (マリンエンジン開発に従事)
1987年 (株)スペースクリエイション設立 代表取締役就任
【公職】
静岡大学 非常勤講師(ビジネス講座・MOT講座)・知的財産マネージャー(ベンチャー育成)
浜松市 総合計画策定委員(産業経済分野) ・ 浜松市 創業都市構想策定委員
三遠南信バイタライゼーション浜松支部 浜松光技術活用研究会 代表幹事
浜松商工会議所 青年部 顧問(元会長)