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プロジェクト・コミュニケーション・文化(第12回)
「国際化は、グローバル企業の妨げか?」

板倉 稔:3月号

  この話をすすめるために、まず、インターナショナル(International)とグローバル(Global)の違いを調べてみよう。
 インターナショナル(International)は、国際と訳されているとおり、インター(間)とナショナル(国)から成り立っている。インターを際(きわ、さい)と訳すと文字通り国際になる。英語でも、日本語でも、国と国の「きわ」が国際である。おそらく、日本語の方は、明治の頃に福沢諭吉か誰かが発明した言葉と思われるので、原語を調査したほうがよさそうで
ある。
 そこで、Oxford Advanced learner's Dictionaryを引くと、「international」を「Carried on by or existing between two or more nations」と説明し、例として、「International law」をあげている。つまり、「2つ以上の国の間に存在するもの、かもしだされたもの」が国際である。
 もし、地球上に存在する国が、アメリカだけになってしまうと、国際は無くなってしまう。第一回に述べた様に「国際」が存在するためには、地球上に複数の国が存在することが必要なのである。
 International lawは、国と国の際にある法律であって、国と国をまたがってカバーしているのではなさそうだ。「国と国をまたがってカバーしている」イメージは、国際法が各国の法の上にかぶさっているイメージである。「国と国の際にある法律」と言うのは、各々の国が自国の法律を持っており、その国と国の間にゴムホースみたいにつなぐ法律があるイメージである。どうも日本人は海外に弱いので、カバーしているイメージを抱くが、多分、原語の意味は、インターフェースに存在するゴムホースのイメージであろう。
 同じ辞書で、「Global」は、「Covering or affecting the whole world」と説明されていて、例として、「global tour」があげられている。「全世界に影響するか、全世界を網羅すること」である。日本語でも、「海外旅行に行く」と言うが、「国際旅行に行く」とは言わない。分かった様な分からない様な感が残るが、Internationalは、複数の国の際にあるものであり、Globalは複数の国に同じものを通すことではなかろうかと推測している。
 例えば、トヨタはグローバル企業であるが、国際企業ではない。トヨタは、小冊子「TOYOTA Way」を作り、全世界の従業員に配っている。その中で、「改善」や「現地・現物」を解説し、世界が日本のトヨタ式を理解できる様にすることをめざしている様だ。つまり、日本式のやり方を世界に教え、日本式作業・運営・管理をするのが、グローバル企業である。
 この伝で行くと、日本のコンピュータ企業にグローバル企業はないのではなかろうか。国際標準を導入すると、グローバル企業になれると考えている企業や上層部が多いのではなかろうか。ISOを導入すれば、あるいは、CMM/CMMiを導入すれば、グローバル企業になれると言うのは、全く逆で、自分のやり方を押しつけるのがグローバル企業である。
 
板倉稔
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