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生協の白石さん
(白石昌則、東京農工大学の学生の皆さん著、講談社発行、
2005年12月20日、10刷、149ページ、952円+税)

デニマルさん:3月号

 この本は、発売以来yahooブックランキングに登場している。この本には、話題になる要素がたくさんある。題名の、「生協の白石さん」は、あの生活協同組合の生協かな。「白石さんって誰?」とチョット気になるネーミングである。次に著者名だが、大学の皆さんと言うのも妙である。更に、東京農工大学は何処の大学かなとまたまた気になる。東京農工大学は立派な国立大学(明治中期に設立され、東京帝国大学農学部実科等を経て今日に至る)である。この本は、大学生協とそれを利用する学生さんとの「ひとことカード」を綴ったものである。しかし、その受け答えが実に軽妙で、当を得たものばかりである。そして、それを学生たちがインターネットで公開したので一躍有名になった。だから著者は質問を出した学生さんである。何故こんなに人気があるのかは、読んで頂くと直ぐ分かる。

この本が何故売れているのか?(その1)  ―― 人付き合いの原点 ――
 何故かこの本には、108の意見・質問・疑問が選ばれ、それに生協職員の白石さんは、丁寧に答えている。それも誠心誠意答えている(決してノーと言わない努力がある)。例-1「もういやだ、死にたい」。答え「生協という字は、「生きる」「協力する」という字を使います。(中略)このように、人間は他人の生に関し、呆れる程、無力で無関心なものです。本人にとっては深刻な問題なのに、何だか悔しいじゃないですか。生き続けて見返しましよう!」

この本が何故売れているのか??(その2)   ―― ユーモアの原点 ――
 この本に掲載されている問い合わせは、種々雑多なものがあり真正面から答えにくいものもある。そうしたものには、軽妙なウイットとユーモアに富んだ答えを返している。多分、こうして答えを貰った学生は、流石と素直に拍手する場合と、今度こそギャフンと言わせてやろうと構えているかもしれない。例-2「ロックの三大要素を教えて下さい。200字以内」(質問者:不明)。答え「焼酎、梅酒、ウイスキー。200字も使わず失礼しました」

この本が何故売れているのか???(その3)  ―― 顧客サービスの原点 ――
 この中で白石さんは、学生さん=顧客のスタンスを崩さずに答えている。顧客サービスの原点は、如何に可能な範囲で相手に答えるかである。例-3「あなたを下さい。白石さん」(質問者:ガリ)。答え「私の家族にこの話をしてみたのですが、まだ譲る事はできないとのことでした。言葉の端々に一抹の不安は感じさせるものの、まずは売られずにホット胸をなで下ろした次第です。という事で、諸事情ご理解の上、どうぞご容赦下さい」とある。