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「エンタテイメント論」(220)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :9月号

エンタテイメント論


第 3 部 エンタテイメント論の応用

1 序
●「本物の夢」を持った社長が「本物の社長」であれば「更に幸運中の幸運」
 前号で記した。「本物の夢」を持った人物が百貨店の社長であれば「幸運中の幸運」である。しかし社長一人で「百貨店再生の夢」を叶える事は難しい。社長を支え、会社を発展させる「本物の夢」を持った取締役や社員の存在は必要不可欠である。更に夢工学が説く「成功根源3要因」の1つである「本物の夢」の他に「優れた発想(アイデア)」と「優れた発汗(行動)」の2つも必要不可欠である。この2つを本号で解説すると約束した。

 さて約束した2つの解説をする前に「或る事」を是非述べたい。其れは「本物の夢」を持った社長がもし「本物の社長」であれば「更に幸運中の幸運」であると云う事である。

 筆者は「幸運中の幸運」と「更なる幸運の幸運」と云う表現をした。この表現の真意は、「本物の夢」を持った社長が「本物の社長」であるケースは、世の中で極めて少ないと云う事である。

●本物の社長とは?
  オーストリア・ウィーン生まれのユダヤ系オーストリア人で経営学者である「ピーター・ファーディナンド・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker,1909~2005年)」は、多くの人が知っている人物である。彼は現代の経営(management)」の基本概念(コンセプト)とその体系化を確立させた。そして世界のビジネス界に計り知れない影響を与えた。

出典;ドラッカー博士①
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出典:ドラッカー博士
出典;ドラッカー博士②
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 彼は主張した。経営とは、3つの事を実現させ、成功させる事を云う。またそうする事が経営者に課せられた責務でもある。この3つとは、①今日の事業の業績を上げる事、②事業の潜在的な機会を発見し、それを実現する事、③明日のために新しい事業を開拓する事である。言い換えれば、経営とは、「既存事業」を成功させ、同時に「新規事業」も成功させる事を云う。そして社長は、両事業を成功させる責務を全うした時、「本物の経営者」になると云う事である。

出典:新日鐵、日本製鐵等のロゴ、USスチール ロゴ

 日本製鐵は、製鐵関連エンジニアリング事業、製鐵関連商社事業、製鐵関連システム事業などの多くの関連事業を成功させている。しかし製鐵事業以外の異分野で大規模な「新規事業」を成功させた事は、過去にも、現在もない。

 新日鐡の歴代の社長は、製鐵事業と云う「既存事業」の改革、拡大、発展を実現させ、成功させてきた。しかし「既存の製鐵事業」に匹敵する規模の「新規事業」は誰も成功させていない。従ってドラッカーが主張する「本物の社長」は今も出現していない。しかし同社は実力と実績のある会社である。もし「本物の夢」を持って挑戦しておれば「新規事業」を十分成功させる事が出来たと考える。極めて残念無念である(後述)。

 さて「トヨタ自動車」は、誰もが知る日本一&世界一の自動車会社である。日本の事業~産業~経済を牽引する同社は、以前、「新規事業」として住宅建設&販売事業などを手掛けていた。しかしその後、其れ等を事実上手放し、自動車事業一途の道を歩んでいる。因みに電気自動車やハイブリッド自動車の生産・販売は、「新規事業」ではない。新製品製造・販売事業である。

 トヨタ自動車の創始者である「豊田佐吉」と創業者である佐吉の長男「豊田喜一郎」は、「本物の社長」である。何故なら創始者であり、創業者であるからだ。その後、豊田家の後継者達や非豊田家の後継者達は、トヨタ自動車の事業を引き継ぎ、更なる発展を成し遂げ、世界一の自動車会社に成長させた。

出典:トヨタ自動車 ロゴ
出典:トヨタ自動車 ロゴ
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 しかし同社では豊田家の後継者達や非豊田家の後継者達の誰も既存の自動車事業に匹敵する規模の「新規事業」を成功させていない。ドラッカーが主張する「本物の社長」は誕生しなかった。それにしても同社は何故、「本気、本心、本音」で新規事業に挑戦しなかったのか? 不思議である。幾らでもビッグ・チャンスは存在したはずである。今からでも遅くない。同社自身の為にも、日本の為にも「本物の社長」が出現して欲しい。

●米国に数多く実在する「本物の社長」
 最近の二ュース(出所:Quickファクトセット・金融除く)に依ると、米国巨大テック4社(アマゾン、アルファベット、マイクロソフト、メタ)は、彼等が保有する有形固定資産の合計を1兆4600億ドル(230兆円)にした。その結果、サウジアラムコ、エクソンモービル、ペトロチャナ、ヘブロンの石油メジャー4社の同資産の合計を超えた。テック4社の恐るべき発展振りである。

出典:アマゾン アルファベット マイクロソフト
出典:アマゾン bing.com/
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出典:アルファベット
ja.wikipedia.org/wiki/Alphabet
出典:マイクロソフト
ja.wikipedia.org/Microsoft
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出典:メタ・プラットフォームズ
出典:メタ・プラットフォームズ
ja.wikipedia.org/wiki/Meta
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 テック4社の筆頭であるアマゾン社は、1994年、「ジェフ・ベゾス」が設立させた。当初は書籍のオンライン販売会社だった。しかしその後、彼は物理的な小売事業を脱し、「新規事業」としてクラウドコンピューティング、デジタルストリーミング、自動運転車など多岐に亘る事業を次々と成功させた。同社は、1997年に米国ナスダックに上場。またインド、シンガポール、トルコ、イタリア、オランダ、スペイン、メキシコ、オーストラリア、ブラジルなどローカライズした世界の各サイトへの事業も拡大させた。

 筆者が言いたい事は、米国では「本物の社長」が溢れている。珍しくもないと云う事だ。日本経済は過去30年間、停滞した。この復活には一人でも多くの「本物の社長」が出現する事である。

●新日鐡に於ける「本物の社長」の出現?
 筆者はトヨタ自動車に関しては「門外漢」だが、新日鐡の事に関しては「門内漢?」である。新日鐡に於いて過去に「本物の社長」が出現するチャンスが幾つもあった。そのチャンスの一つに筆者と筆者の部下達は関わっていた。

 筆者は「或る日」、「或る事業プロジェクト(PJT)」の総括開発責任者を命じられた。当該PJTの実現と成功を目指し、多くの部下達と挑戦を開始した。「或るPJT」とは、「新日鐡MCAユニバーサル・スタジオ・ツアーPJT」であった。今では誰もが知るハリーポッターで有名な「大阪UFJ」そのものであった。この挑戦は「大阪USJ」の開園の約10年前の出来事であった。

 筆者は「新規事業」として「USJテーマパーク事業」を開発するだけでなく、これを「起爆剤」として「新都市開発事業」も「新規事業」として実現させ、成功させる「極秘計画」を密に検討した。その計画全貌を拒絶される事を覚悟して、思い切って社長に提案した。意外にも社長から賛同を得た。しかし「USJテーマパーク事業」が日の目を見るまで「極秘」とする様、命じられた。

 しかしその後、同PJTは「諸般の事情(内容開示は現在も不可)」で「中止決定」された。筆者と部下達は「残念、無念、憤り」で眠れぬ「悪夢」の夜を何日も、何日も過ごした。

 もし新日鐡が同PJTを中止せず、検討を続けておれば、同テーマパークを成功させただけでなく、同パークをトリガー(引き金)として大規模な「新都市開発事業」を、大阪市を含む関西地域で数十兆円~数百兆円の規模で実現する事が出来た。しかし新日鐡は同パークを中止した為、本命である大規模な「新都市開発事業」を生み出す千歳一隅のチャンスを逃し、当該社長も「本物の社長」になるチャンスを失ってしまったのである。

●日本経済の過去30年間の低迷とその根本原因
 さて日本経済は、過去30年間低迷した。下図の「各国公的資本形成(公共投資)」の推移を見て欲しい。日本だけが先進国中で最低水準で現在に至っている。この事が低迷の根本原因である(高橋洋一説)。

出典:各国公的資本形成の推移

 筆者はそれ以外にも原因があると主張したい。それは日本企業の多くの社長、特に大会社の社長は、その気になれば、国の公的資本形成の低水準に拘わらず、自社の事業の発展の為に積極的な経営戦略の推進、戦略具現化の為の設備投資は幾らでも実行できたはず。もしそうしておれば、民間企業の設備投資も増え、国の公共投資も誘発されて増えたであろう。

 しかし何故そうならなかったのか? その原因は①日本の大企業や中堅企業の社長に「安心、安全、安定」の「既存事業」を最優先する人物が多かった為だ。②「コアーコンピータンス戦略論」を根拠に「現状維持の経営」に主張する社長が多かった為だ。③「新しい新規事業」を提案をした場合、その実現性と成功性の「立証責任」は提案者が負い、提案者自身も自分が負う事を不思議と思わず、当然と思っている為だ。その結果、部下の提案に社長が「不安、不安全、不安定」の「疑問」を提示した瞬間、社長が「NOの意思決定」を敢えてせずともNOと云う事になる。そして検討を続けても結局消滅し、闇に葬られる為だ。筆者は社長自身も提案者と共に実現性と成功性の「立証責任を連帯して負うべきである」と考える。しかし此の様な事を主張する経営学者は筆者の知る限り存在しない。④「本物の夢」を持った社長で「本物の社長」が極めて少なかった為だ。

 本号で解説すると約束した事を果たさず、本号を終わる。読者諸氏に誠に申し訳ない事をした。許して欲しい。次号で必ず解説する。


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