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「エンタテイメント論」(219)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :8月号

エンタテイメント論


第 3 部 エンタテイメント論の応用

1 序
●謝罪と約束の履行
 前号の初めに百貨店事業再生の「在り方(基本的考え方)」と「やり方(具体的方法論)」を「夢工学」の観点から紹介すると記した。

 しかし「夢工学」を初めて耳にした読者の為に、夢工学は、どの様な工学なのか? どの様な特徴を持つのか? どの様に経営(業務)に役立つのか? などを解説した。其の結果、上記の紹介が出来ずに前号を終えた。この紹介を期待していた読者には大変申し訳ない事をした。謝罪する。ついては約束した事を本号で果たしたい。

●日本の百貨店の現状と近未来
 日本の百貨店事業には数多くの会社が関与し、極めて多くの人々が働いている。

 例えば、百貨店の社長、取締役、社員などの百貨店直接関係者、百貨店に商品やサービス等を提供する会社とその関係者、商品等を受配送する会社とその関係者、電気、水、電信、電話などを提供する会社とその関係者、百貨店事業をPRする会社とその関係者、百貨店事業をコンサルする会社とその関係者(コンサルタント)等が数多く存在する。更に百貨店事業を研究する学者や評論家まで存在する。

出典:百貨店業界
出典:百貨店業界
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 これ等の関係者の多くは、百貨店事業の現状を憂い、「“今のまま”では百貨店の未来はない」と予想している。彼等の現状認識や近未来予測の一端を以下に紹介する。

  1. ※ 日本の百貨店は、1999年をピークに311店舗存在した。売上額は約10兆円。しかし2026年の現在、172店舗とほぼ半減した(日本百貨店協会調査)。売上額は約5兆円強。その結果、全国で百貨店がゼロの県は4県、1店舗の県は15県になった。
  2. ※ 今後、経営破綻する百貨店が増え、100店舗に半減すると予想されている。また百貨店事業形態を変える百貨店が増加する一方、地方の百貨店は完全に消滅すると予想されている。
  3. ※ 百貨店の販売商品で最も顕著に低下したのは、衣料品である。現在はピーク時の半分以下に落ち込んだ。一方ラグジュアリー型(高級&高価品型)の販売は増えている。この販売方法で一時期、生き残れるだろう。しかし長くは続かないと言われている。
  4. ※ 現在、中心市街地の百貨店は「インバウンド外国人客」を重視し、販売のターゲット客にしている。しかし期待する効果は限定的であろうと言われている。
  5. ※ 百貨店事業は、「仕入れて売る」の事から「場」を貸す事(プラットフォーム事業化)に変化するだろう。そして現在の百貨店は近い将来、「都心型ショッピング・モール」に変わるだろう。
  6. ※ 百貨店事業は、都市の再開発と一体化され、百貨店単体としては消滅し、複合施設の一部に編入されるだろう。しかし屋号としての名前は残るだろう。

出典:経営破綻
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●海外の百貨店の現状と近未来
 以上で日本の百貨店の現状と近未来の解説を終え、海外の百貨店の現状と近未来はどうか?簡単に解説する。

 先ず米国では、百貨店事業の構造不況に加え、業界内の競争激化で、その淘汰が激しく進行している。その結果、モール型百貨店は大量に閉店。メイシーズの大規模の閉店は特に有名である。シアーズやJCペニーなども経営難に直面している。従って彼等も事業再生に必死に取り組んでいる。

 次に欧州では、英・デベナムズの経営破綻がその象徴である。中級品・中価格帯の店舗経営と高級品・高価格帯の店舗の二極化が進行中である。前者の経営は苦戦。後者の経営は善戦。しかし両者共、生き残れるか? 疑問視されている。なおハロッズやその他の老舗店は、「観光」を引き金に頑張っている。しかしやはり「将来は暗い」と予想されている。

●百貨店関係者や学者達の事業再生は「現状延命策」で「未来創造策」ではない。
 日本の百貨店関係者や学者達が描く「事業再生論」を本稿の217号で紹介した。読者にその内容を思い出し、理解を深めて貰うため、今回はその内容を少しアレンジして以下の通りに纏め直した。しかし今回は横道に逸れて「約束」した事を反故する様な事はしない。

 先ず非百貨店事業会社であるユニクロ(ファーストリテイリング)、ニトリなどは、自社で企画、製造、小売りするSPA (製造小売り=Speciality store retailer of Private label Apparel)を大成功させた。と同時に全国多店舗展開を実現し、規模の収益(売上+利益)を獲得。更に良品質・低価格商品の提供に依って益々多くの顧客を手中にしている。

 ユニクロは、2026年7月までの1年間で売上高を3.9兆円と上方修正。スエーデンのH&Mの売上高の3.7兆円を8%上回り、世界第2位に浮上した。世界第一位はスペインのZARA。その売上高は7.4兆円である(日本経済新聞 2026年7月10日朝刊)。

出典:SPA (製造小売り)
出典:SPA (製造小売り)
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 一方百貨店事業会社では、どの会社も下記の様な事業再生を描き、その一部を実践している。しかし期待通りの効果を余り生み出していない。「しっかりしろ!」と言いたい。

  1. ※ 富裕層向けラグジュアリー戦略⇒高級ブランド品・高額品・既存客への外商強化
  2. ※ デパ地下の強化⇒食品・日用品販売強化とレストラン強化⇒イートイン・レストラン街拡充
  3. ※ 地域密着型コミュニティ化⇒売り場縮小化、地元企業とのコラボ拡大
  4. ※ インバウンド依存戦略⇒免税売場拡大、アジア観光客向けの品揃え
  5. ※ 百貨店の建物や土地の賃貸化(売り場縮小化、不動産賃貸化、ショッピングモール化)
  6. ※ EC連携⇒オンライン販売強化、オムニチャネル化
  7. ※ DX活動⇒特に注目されるDXは大丸松坂屋のDX活動=外商顧客向けのデジタル接点となる「コネスリーニュ」とスマートフォン向けのデジタル接点となる「大丸アプリ」である。いずれも対面外商の関係性をオンラインに拡張した事。アプリ専用登録者の客単価は、非専用登録者の2.5倍に拡大。コロナ危機前の2019年の売上より現在は3割増。しかも外商顧客に若い人が増えてきた。

 しかし彼等の事業再生論のどれもこれも、一語で言えば「現状延命策」である。

 彼等はユニクロやニトリなどが挑戦し、成功させた「未来創造策」を生み出していない。上記の成功しているDX活動も、今となっては特段目新し活動ではなく、既に多くの企業が導入し、挑戦し、成功させている活動の一つに過ぎない。

 彼等に真に求められる事業再生論は、「未来創造策」の実現と成功である。それは全く新しい「在り方(基本的考え方)」を見付け出し、それに基に全く新しい「やり方(具体的方法論)」で、あたかも「新規事業」に挑戦する様に、事業再生を実現させ、成功させる事である。

 ついては「約束」した通り、「エンタテイメント論」を含めた「夢工学」の観点からの百貨店事業再生の為の「在り方」と「やり方」を解説する。

●夢工学式百貨店再生の「在り方(基本的考え方)」とは
 この「在り方」とは、夢工学が説く「夢」を実現させ、成功させる為の「成功方程式(★)」を百貨店事業再生のための「基本的考え方」に組み込む事を云う。

 ★成功方程式(成功根源3要因の実践)=本物の夢(夢達成への激情)×優れた発想(アイデア)×優れた発汗(行動)

出典:成功 夢 ひらめき 行動
成功方程式(成功根源3要因の実践) = 本物の夢  ×  優れた発想  ×   優れた発汗
出典:成功
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 百貨店の再生を実現させ、成功させる為には成功方程式を構成する「成功根源3要因」を実践する事が求められる。この3要因の1つでも欠けると失敗する。

 3要因の中で最も重要且必要不可欠な要因は、「本物の夢(次の節で解説)」の存在である。「本物の夢」を持った人物に百貨店事業の再生を任せ、挑戦させる事が再生を成功させる基本的考え方(在り方)である。

 残りの2つの要因、即ち「優れた発想(アイデア)」と「優れた発汗(行動)」も重要且必要不可欠な要因である。実は「本物の夢」を持った人物は、例外なく「優れた発想(アイデア)」をすると同時に自ら生み出した発想を是が非でも具現化し、現実化しようとする「優れた発汗(行動)」をする。だからこそ「本物の夢」を持った人物が絶対に必要不可欠なのである。

 なお成功根源3要因として「優れた発想」と「優れた発汗」は、有名なトーマス・エジソンが「天才は1%の Inspiration(発想)と99%のPerspiration(発汗)をする」と主張した内容の発想と発汗の表現に酷似する。

 しかし筆者は彼の天才説からヒントを得た訳ではない。そもそも「本物の夢」を持った人物は、例外なく「優れた発想(アイデア)」をすると同時に「優れた発汗(行動)」もする事実に着目したからである。更に彼の天才説には「本物の夢」の事は存在しない。

●本物の夢とは
 「本物の夢」とは、恋人への「淡いほのかな恋情」ではなく、「燃える様な強烈な恋情」と同じレベルの「激情」を、或る人物が実現させ、成功にさせたい「夢」に抱いている場合、その「夢」は、「本物の夢」であると云う事である(夢工学の教え)。

出典:燃える恋情
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 危機に直面した百貨店を「本心、本気、本音」で救い、輝かしい未来の会社に是が非でも育て上げたいと云う「燃える様な強烈な恋情」と同レベルの「激情」を持った人物こそ「本物の夢」を持った人物である。しかしその様な人物は危機の百貨店業界に存在するのか? 存在しなければどうするか?

●本物の夢を持った人物
 或る百貨店事業会社が豊富な資本、人材、技術、情報などを駆使し、事業再生に挑戦する。しかし「本物の夢」を持った人物が存在せず、「優れた発想(アイデア)」と「優れた発汗(行動)」も生まれなければ、当該事業再生は一時成功しても、時間の経過と共に崩壊し、結局は失敗する。

 従って当該会社は、是が非でも、考えられるあらゆる手段を駆使し、日本だけに限らず世界中から「本物の夢」を持った人物を探索、選別、評価、起用する事である。それだけでは十分でない。

 起用が決定されれば、当該人物を所謂「事業再生プロジェクト(PJT)」の中核に据え、再生の「夢」を叶える行動を開始させる。そして同PJTの事業基盤(新プラットフォーム)を実現(夢の実現)させる。

 更に同基盤上で当該事業を運営させ、一定の収益(売上&利益)を確保させる。と同時に今迄の負債を返済させ、安定(sustainable)した事業経営を成功(夢の実現)させる。この成功に依って初めて当該百貨店は未来型且つ創造型の百貨店に変身する。、また当該人物は、夢工学が定義する「夢・成功一貫達成」を成し遂げた人物になる。と共に本物のプロ経営者となる。

 もし「本物の夢」を持った人物が当該百貨店の社長であれば「幸運中の幸運」である。しかしその様な社長が存在しても、社長一人では「再生の夢」の実現と成功は難しい。社長を支援し、会社も支える「本物の夢」を持った人物を一人でも多く探し出す事が必要不可欠である。

 次号で「成功根源3要因」の残りの2つである「優れた発想(アイデア)」と「優れた発汗(行動)」について解説する。

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