組織アジリティSIGコーナー
先号   次号

「アジャイルの要件定義」

小原 由紀夫 [プロフィール] : 3月号

アジャイルは、短期でリリースして得たフィードバックにより新たな要件を発見から俊敏(アジャイル)に価値を高めていくため、1~2週間の期間(スプリント、イテレーション)で実装し、評価していく。ウォーターフォールでは要件を明確にすることを求めてきたが、アジャイルでは曖昧または変化していく要件に対応した要件定義が必要となる。アジャイルにおける要件定義について述べる。

  1. 1. 要件定義視点
    顧客(利用者)にとっての価値を表現するユーザーストーリーとその価値を実現するために必要なイネーブラーがあり、それぞれに完了条件を定義する。
  2. 1) ユーザーストーリー
    顧客(利用者)にとっての価値を3つの要素で表現する。その3つの要素とは、第1に、活動を行う人やシステム、あるいは、その活動から価値を受ける人の「役割」(Who)、次に、システムによって行われる動作や結果の「活動」(What)、最後に、それによりもたらされる「ビジネス価値」(Why)である。ユーザーストーリーの「ビジネス価値」(Why)はインセプションデッキの全体を捉える5つの質問と関連する。
  3. 2) イネーブラー
    直接的な利用者価値を実現するために必要なことをユーザーストーリーと同じ「役割」(Who)、「活動」(What)「ビジネス価値」(Why)で表現する。この「ビジネス価値」(Why)はインセプションデッキの具現化をさせる5つの質問と関連する。将来のビジネス機能をサポートするために必要な調査活動、インフラストラクチャーおよびアーキテクチャー開発活動を促進する。
  4. 3) 完了条件
    ウォーターフォールでは、要件定義を基本設計、詳細設計、結合テスト仕様、システムテスト仕様と段階的に分解していく。アジャイルでは要件から実装して評価するため、利用者が理解でき、開発者がテストできる完了条件をユーザーストーリーとイネーブラー毎に1~2週間で6つ程度を完成させられる粒度で表現する。
    アジャイルにおける要件定義

  5. 2. リスク対応
    アジャイルは要件変更を前提としているので、リスクが存在する。優先順位によるリスク対応している。
  6. 1) 優先順位
    要件は優先順位に一列に要件一覧(プロダクトバックログ)に並べられ、実装され評価される。優先順位は、インセプションデッキで合意された価値とユーザーストーリーとイネーブラーのビジネス価値(Why)を照らし合わせて決定する。この時、不確実性を考慮する。影響度が大きく不確実性の高い要件の優先順位を高くして、不確実性を評価する。
  7. 2) リスク調整済みバックログ(@PMBOK第7版)
    脅威と好機に対処するための作業とアクションをリスク調整済みバックログに登録する。脅威と好機への対処の必要性が高まった場合、要件一覧(プロダクトバックログ)に追加して優先順位を決定する。

  8. 3. 変化する要件への対応
    アジャイルは要件が変化することを前提とするため、投資と市場から導かれるコストと期間を固定として要件を可変とする。そのため、変化する要件への対応は、要件を固定とするウォーターフォールと異なる。
  9. 1) 優先順位によるリリース範囲
    優先順位に一列に要件一覧(プロダクトバックログ)に並べられた全ての要件が期間内にリリースされるわけではない。要件が曖昧な点もあり、確定されていない。通常、変化に対応するため、期間内にリリースされない要件も優先順位の低い要件として登録されている。
  10. 2) 変化する要件とリリース範囲
    アジャイルは優先順位の高い要件を実装して評価する。その評価による新たな発見により要件が追加される。追加された要件を含めて全体で優先順位に一列で並び変える。従って、当初は期間内にリリースされると予想された要件もリリースされなくなることがある。
  11. 3) ステークホルダーエンゲージメント
    ステークホルダーは当初に定義した要件がリリースされないことを理解する必要がある。ウォーターフォールと異なり、1~2週間で要件から実装して評価するので、要件の曖昧性の質問に適切に対応する必要がある。また、要件一覧(プロダクトバックログ)の変化による影響に対してステークホルダーをエンゲージメントしていくことが成功のためにより必要になる。
    ステークホルダーエンゲージメント


PMAJ組織アジリティSIGでは、組織として変化への俊敏性である「組織アジリティ」とDX推進に必須な風土・組織への重要な取り組みを研究しています。ご興味のある方は、お声掛けください。

ページトップに戻る