P2M普及・推進部会コーナー
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P2Mを活用した価値創造の広がり(4)
―“人” が価値と構造を動かすプログラムマネジメント「価値第一」―

PMAJ P2M普及・推進部会 藤澤 正則 : 3月号

「P2Mを仕事に活かしている方々の声」

 2025年12月より、実践されている方々の内容から、「P2Mを活用した価値創造の広がり」として、「活動領域・適用したP2Mの分野・執筆者(または実践者)の視点」、「価値の視点」、「構造の視点」、「人の視点」について、事例分析を行い、連載を進めています。今回は、「人の視点」から事例を分析していきます。

はじめに : なぜ「人の視点」が最後に来るのか

本連載では、価値や構造を先に整理したうえで、最後に「人の視点」を取り上げています。それは、価値や構造は設計することができても、それを実際に動かし、現場で価値として実現するのは常に「人」だからです。
そのため本連載では、「人の視点」が価値創造を成立させる最終要素として、あえて最後に位置づけました。
  • 価値(1月号)=What
  • 構造(2月号)=How
  • 人(3月号)=Who?が動かす
価値と構造は“人”によって初めて実現されます。
プログラムマネジメントの本質は「人と人の関係性のマネジメント」であり、特にミドル層は、定常と非定常の境界に立つ“橋渡し役”として重要な役割を担っています。

1. P2Mが示す「人の視点」とは

P2Mでは、人を単なるリソースや役割としてではなく、価値を生み出し、構造を動かす主体として捉えます。本章では、P2Mの実践事例から、「人の視点」に関して共通して見られた考え方が見られました。
  • 人は単なるリソースではなく“価値創造主体”
  • プログラムマネジメントは「人の意識・行動・関係性」の変化が中心
  • 価値・構造・人は三位一体
      価値:方向性
      構造:実装の箱
      人:価値と構造を動かす主体
  1. (1) “人を中心に据える”とは
    1. ① 関係性をつくる
    2. ② 文脈を共有する
    3. ③ 役割を明確化する
    4. ④ 合意形成のプロセスを整える

2. 人が動くための条件:価値の共有と構造の理解

(価値・構造と人を“つなぐ”)
どれほど優れた価値や構造を描いても、人が動かなければ成果にはつながりません。
人が自ら動き出すためには、価値と構造がどのように共有・理解されているかが重要です。
本章では、「価値・構造・人」をつなぐ条件が見られました。

(1) 価値が共有されていること(目的の統一)
  • “なぜそれをやるのか?”が腹落ちしている
  • 現場・管理職・経営の認識の統合がされている
(2) 構造が理解されていること(役割の明確化)
  • 自分の役割が価値実現のどこにあるか?
  • プロジェクト間のつながりが見えている
  • 全体構造とローカルな行動が結びつく
(3) 関係性が機能していること
  • 実践事例では、関係者同士の対話と調整を通じて、部門や立場を越えた橋渡しが行われている
  • その過程で相互理解が深まり、ステークホルダー間の認識や期待のズレが是正され、組織としての学習が促進されている

3. 実践者に共通する3つの能力(31事例の要素分析に基づく)

31のP2M実践事例を分析すると、立場や業種が異なっていても、共通して見られる“人を動かす力”が存在していました。
本章では、31の実践事例の分析から、実践者に3つの事項が共通して見られました。

  1. (1) 翻訳能力(価値 ⇔ 構造 ⇔ 現場行動)
    1. ① 経営の意図をわかりやすい言葉にする
    2. ② 現場からの情報を構造に反映する
    3. ③ “言葉・図・ルール”で橋渡しする
  2. (2) 関係性構築能力(つなぐ力)
    1. ① 多様な立場の利害を理解する
    2. ② 意見の違いを“対立”ではなく“調整”に変える
    3. ③ 定常と非定常の境界で役割を果たすミドル層が中心
  3. (3) 動かす能力(行動変容・学習促進)
    1. ① 小さな成功をつくり、共有し、広げる
    2. ② 学習サイクルを回す(振り返り → 改善 → 再構造化)
    3. ③ 組織の持続的価値創造に貢献する

4. 「人の視点」で俯瞰した31事例のパターン(12月?2月の分析と関連)

個別の成功事例を点で見るだけでは、再現性は高まりません。
そこで本章では、「人の視点」から31事例を俯瞰し、価値創造につながった行動や関係性のパターンを抽出しました。
  1. (1) 価値に“共感した”人が動いていた
    1. ① メッセージの一貫性
    2. ② 現場が自分事化していた
  2. (2) 構造が“見える化”されていた
    1. ① ロードマップ、ステークホルダー図、役割図
    2. ② “自分のやること”が明確になっていた
  3. (3) ミドル層が“橋渡し役”として成果を出していた
    1. ① 経営と現場を統合
    2. ② プロジェクト間の調整
    3. ③ 関係性の再設計
  4. (4) 実践者は「情と理」を使い分けていた
    1. ① 理=構造、計画、手順
    2. ② 情=関係性、対話、納得感
    3. ③ 両方を使いこなすことで価値が実現

5. 人の視点から見た“価値創造の瞬間”(価値が人の行動を変えるタイミング)

価値は、計画書やスローガンとして存在するだけでは意味を持ちません。
人の意識や行動が変わった瞬間に、初めて価値は現実のものになります。
本章では、その「価値創造の瞬間」を抽出しました。
  1. (1) 価値が“自分の言葉”になった瞬間
  2. (2) 構造が“腹落ちして行動に変わった”瞬間
  3. (3) 対立が“対話と調整”に転換した瞬間
  4. (4) 小さな成功が“組織の学習”になった瞬間
    → 価値は、人の行動が変わったときに初めて実現する。

6. プログラムを動かす“実践者”とは誰か― P2Mにおける実務者の役割 ―

では、実際にプログラムを動かしているのは誰なのでしょうか。
特定の役職や資格だけが担い手ではありません。
本章では、P2Mにおける“実践者像”を抽出しました。
  1. (1) ミドル層:組織を動かす“翻訳者”
     上下・内外・定常/非定常をつなぐ
  2. (2) プログラムマネジメント実践者
     価値を見立て、構造を描き、人を動かし、関係性を設計する役割を担う実践者
  3. (3) ベンダーPM/ユーザーPMの両者が協働
     価値・構造を共有し、立場を超えて共通の目的を持つ共創モデルとしてのP2Mの強み

7. まとめ:価値・構造・人の三位一体

 本稿は、「人」に注目することで、P2Mが目指す価値創造の本質を振り返ってきました。改めてみると、価値・構造・人は切り離して考えることはできません。
 三つが連動して初めて、持続的な価値創造が実現します。
  1. (1) 価値(Why+What)は方向性
  2. (2) 構造(How)は実装
  3. (3) 人(Who)は実現の主体
     構造を描いても、人が動かなければ価値は実現されない。
     人が動き始めると、価値が現れ、構造が生きる。
     価値・構造・人。この三つが揃って初めて、組織は未来を創る。

【ひと言募集】 実務者からの声を募集します

 本稿で紹介した内容は、あくまで一例です。本稿を読んで感じたことや、現場での違和感、「ここが腑に落ちた」といった感想を、200字程度でお寄せください。正解はありません。皆様の実践知をぜひ共有してください。頂いた声は、P2M普及・推進部会の活動に反映させていきたいと考えております。

【メンバー】
P2Mについて「もっと知ってみたい」「自分の仕事にも活かしてみたい」と感じていただけた方は、ぜひP2M普及・推進部会の活動にもご関心をお寄せください。
現場に根ざした実践知を共有し合う場として、皆様のご参加をお待ちしております。

活動形式や頻度
参加方法
月1回:WEBでの開催(1時間程度)
  • P2M普及・推進部会 に関するお申し込み
  • お問い合わせ先:代表: 藤澤 正則
    こちらQRコードからご連絡ください→

【備考】
 本稿で取り上げた内容は、統計的な検証や理論実証を目的としたものではなく、現場で実践してきた個々人の経験に基づく知見を整理したものです。
(出典:PMAJ「P2Mを仕事に活かしている方々の声」2025年9月改訂版)
以上

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