今月のひとこと
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 アート思考と博士号取得 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :3月号

 PMAJ事務所前の早咲きの桜には葉だけが残っています。季節は三寒四温のリズムを取り始め、数日おきに初夏の陽気が訪れます。夜間と昼間の寒暖差もあるので、今年のソメイヨシノには期待できそうです。

 「博士人材と指導教員の醸成SIG」が起ち上って1年半が経ちました。日本社会に不足するプログラムマネジメント分野の博士号取得者をP2M実践者の中から育成する態勢作りがSIGの目標となっています。現在、博士号を目指そうという方も出てきて具体的な支援体制も構築、未だ試行錯誤の状況ではありますが着実に前進しています。
 この活動において懸案となっている1つが、マネジメント系の博士が企業・団体の中でどのように活躍するのかのイメージがクリアになっていないということです。諸外国に比べてはるかに少ないとはいえ、マネジメント系の研究を通じて博士号を取得して企業の役員や自治体の重責を担っている方が多数います。SIGではそのロールモデルづくりにも取り組んでいますが、そういった方々の事例をとおして「博士だからできる」という特性を分析し、分かり易く説明するというところまではたどり着けていません。この部分が解決されると、マネジメント系の博士号取得に対する社会の見方が大きく変わるはずです。
 そんなことを考えながら、P2M標準ガイドブック改訂4版で新たに登場した「P2M事業モデル」を眺めていました。博士の活躍ステージはどこでしょうか。

「P2M事業モデル」

 乱暴に言ってしまうと「博士1」~「博士5」のどこでも活躍の場はあります。問題は、「博士でなければならない」とか「博士だったら格段にいい」といったステージがあるかというところです。
 ありました。「博士1」事業戦略のステージです。
 残念ながら、私たちのプログラム・プロジェクトマネジメントのステージではありませんし、マネジメント系博士だけということでもありませんが、とりあえず一つは見つかりました。
  P2M標準ガイドブック改訂4版では、全5部の中の一つを第4部事業戦略としてプログラムと事業戦略の関係を中心に解説しています。プログラムマネジメント側として知るべきことが記述されているのですが、かねてより疑問に思っていたことがあります。現在は存在しない、誰も想像すらしていない未来目標(イノベーション目標)をどうやって設けるかについて言及してもいいのではないかということです。例えば、スマートフォンの普及はアイフォン以前の時代には誰も想像しませんでしたが、そのイノベーションを起こした商品(アイフォン)を企画した人がいるのです。そうしたゼロからイチを生み出す「アート思考」とプログラムとの関係について解説していただけたらと思います。
 イノベーションの発端となり得るアート思考は、芸術家など特殊な才能を持つ人にだけ許されるといった面がありますが、訓練しなければ磨かれません。このアート思考を磨く訓練というのが、実は、博士号取得のプロセスと重なるのです。博士号取得のためには博士論文を書かねばなりませんが「独自の問いを立て、未知の領域を切り拓く」という要件を満たさねばなりません。これは、アート思考の本質そのものです。プログラムマネジメント(P2M)を実践してきた社会人が博士号取得に臨むことにより、既に身につけている豊富なビジネス経験とアート思考が結び付くと、全く新しいイノベーションが生み出される可能性が高まるといえないでしょうか。もちろん、博士号を取得した方が全てイノベーションを起こすわけではありませんが、イノベーションを起こす確率は高まるはずです。
  1. *デザイン思考やロジカル思考はマネジメントの分野で活用されていますが、アート思考は芸術の分野に属するものとされていました。近年「ゼロからイチを生む」ということでイノベーションの視点で注目されるようになりました。
    また、博士号取得のプロセスとアート思考訓練との関係について、試みに、AIに聞いてみました。「社会人が博士号取得に取組むのは、アート思考の鍛錬となるか」と質問すると「アート思考を鍛錬するうえで最高峰のトレーニングになる」との回答です。AIの回答にはおべんちゃらが多いので全てを信用はできませんが、多少は当たっているのだと思います。
以上

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