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「プロジェクトの独自性とモチベーション向上」

小原 由紀夫 [プロフィール] : 12月号

 プロジェクトの特徴として独自性と有期性が上げられる。プロジェクトの独自性のために目標に影響を与える不確実な事象であるリスクが存在し、プロジェクトの成功に影響する。プロジェクトの独自性の背景の考察と独自性への対応について述べる。

1. プロジェクトの独自性の背景
 不確実な事象が存在する仕事は、確実な事象だけの仕事より失敗し易い。それにもかかわらず、なぜ、不確実な事象を生む独自性を特徴とするプロジェクトを立ち上げるのだろうか? 独自性の背景には、プロジェクトが提供すると期待される価値があるからである。プロジェクトの価値には3つの視点がある。
  1. 1) プロジェクトオーナーの期待:プロジェクトのオーナーは他にはない独自の価値を期待して、プロジェクトに投資する。
  2. 2) ステークホルダー自身の希望:ステークホルダーは自身が蓄積した知見の発揮または、蓄積した知見を発揮できる成果物の適用を希望してプロジェクトに参画する。
  3. 3) 社会貢献の視点:プロジェクトオーナーの期待とステークホルダー自身の希望の実現が社会貢献に繋がるからこそプロジェクトは存在する。

プロジェクトの独自性の背景

 上記の3つの視点は、エントリーシートで「私は○○の得意分野を持ち[自分の希望]、御社が進める☆☆事業に参画[プロジェクトオーナーの期待]して社会に貢献したい」のように活用され入社している。また、事業計画においても3つの視点は活用されている。

2. プロジェクトの独自性への対応
 プロジェクトオーナーの期待とステークホルダー自身の希望が合意されて参加しているので、ステークホルダーの持つ蓄積した知見をプロジェクトに活用できる。しかし、蓄積した知見をプロジェクトの独自性と融合させる必要がある。このため、プロジェクトの進捗はS字カーブとなる。
  1. 1) 準備期:独自性vs.蓄積した知見の解消
    独自性と蓄積した知見の発揮が干渉する点を洗い出し、干渉を解消する準備を行う。
  2. 2) 成長期:独自性への蓄積した知見の発揮
    独自性と蓄積した知見の発揮が干渉する点の解消により、蓄積した知見を独自性に適用して成果物を作成すると同時にステークホルダー自身の知見の適用範囲を拡張できる好機として活用する。
  3. 3) 検証期:独自性と蓄積した知見の融合の検証
    作成した成果物が期待された独自性を実現しているかを検証する。

 成長期は蓄積した知見を持つ人達だけで実行できるが、準備期と検証期は多様な視点で独自性と蓄積した知見の融合を分析する必要がある。従って、必要によりWBSを上記の3つの期で分割し、参加するメンバーを合意する対応が成功に有効である。

プロジェクトの独自性への対応

3. 独自性によるモチベーション向上
 プロジェクトの価値の3つの視点は、マズローの要求の5段階欲求に対応する。
  1. 1) 社会的欲求:プロジェクトオーナーの期待に応えられるのでプロジェクトに参加
  2. 2) 承認欲求 :ステークホルダーの活動が社会貢献として評価
  3. 3) 自己実現 :自分の可能性を最大限に引き出し、成長できる好機

プロジェクトの価値の3つの視点は、マズローの要求の5段階欲求に対応する。

 プロジェクトオーナーの期待に応えることは重要であるが、プロジェクトをステークホルダーが社会貢献を通じて自己実現できる機会にしていくことがプロジェクトマネジメントの醍醐味の一つである。プロジェクトの独自性の背景をステークホルダー全員が共有して幸せになれるようにプロジェクトマネジメントを実践していきましょう。

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