理事長コーナー
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PMBOK® ガイド第8版

PMAJ 理事長 加藤 亨 [プロフィール] :12月号

 「えーっ、こんな簡単にプロジェクトを定義しちゃって良いの?」  1990年代中頃、C社の会議室でPMBOK® ガイド1996年版を参照しながらPMP試験対策の自主勉強会に参加した私は、思わずつぶやきました。
「独自の成果物又はサービスを創出するための有期活動」
 (プロジェクトマネジメントの基礎知識体系1996年版
 :エンジニアリング振興協会PM部会発行 より)
 もちろん、プロジェクトマネジメントの定義の中には「・・・ステークホルダーの当該プロジェクトに対する要求事項や期待を充足する、・・・・」という記述があり、合わせれば、プロジェクトが目的達成を目指す業務であることは分かるのですが・・・。
 「プロジェクトとは、目的を成功裏に達成するために、様々な制約条件の基でチームを形成し遂行する業務」と言うような定義を頭に描いて私は、この定義に違和感を持つとともに、そのシンプルさに感動を覚えたのを今でも記憶しています。ある意味、この感動が、その後20年以上にわたって私がPMBOK® ガイドの講師を実践してきた原動力にもなったと思っています。
 それから約30年、この定義は部分的には修正されながらも、
「プロジェクトとは独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために
実施される有期的な業務」(PMBOK® ガイド第7版)
 と言うような表現で、継続して使われてきました。

 2025年11月13日に開催されたPMI Global Summit 2025の会場では、満を持してという表現がぴったりするように、PMBOK® ガイド第8版が山のように積まれて販売されていたそうです。そして、30年間続いてきたこのプロジェクトの定義も大きく変わりました。
 「Project. A temporary initiative in a unique context undertaken to create value.」
(プロジェクト.価値を創造するために、独自の状況で行われる有期的な取り組み。)
(注) 和約はGoogleの翻訳を利用
 プロジェクトが創造するものが、「独自のプロダクト、サービス、所産」ではなく、「価値」に置き換えられたという点で、画期的な変化だと思います。
 さらに、プロジェクトマネジメントの定義では、
「Project management. The application of knowledge, skills, tools, and techniques to project activities to meet or exceed the intended value.」
 (プロジェクトマネジメント.プロジェクト活動に知識、スキル、ツール、そして技術を適用し、意図した価値を達成または超えること。) (注) 和約はGoogle翻訳を利用
 と、ゴールドプレーティングを認めなかったPMI®の印象を一変させるような記述となっています。もちろんこれは、対象が成果物から価値に変わった結果ではありますが。
 ダーウィンの進化論の「生き残るのは変化に対応した種である。」とあるように、まさに、時代の流れに合わせて、大きく変わって行くPMI®の姿勢は見習うべきところがあると思います。
 一方で、今回の変更では、第7版で削除した「プロセスグループ」の記述を、「フォーカスエリア」という形で復活させたり、フォーカスエリアとパフォーマンスドメインの関係が、第6版までのプロセスグループと知識エリアの関係を再現したような表として示されていたり、パフォーマンスドメインの解説の中にITTO(Inputs, Tools & Techniques, Output)の表が復活するなど、「第7版の変更は何だったのか」と思わせる部分も多くあり、今回の変更の意義や影響などを注意深く見極めていく必要があると考えています。
 そこでPMAJでは、PM実務家の皆さんにいち早くPMBOK® ガイド第8版のポイントについてご理解をいただくために、概要解説講座を12月22日(月)に開催することにしました。
 下記のサイトをご参照の上、ぜひ、お申し込みください。
 みなさまのご参加をお待ちしております。

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