今月のひとこと
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 うんざりの責任 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :10月号

 久しぶりに「平年並み」という言葉を聞かれるようになりました。猛暑に慣れた身には、ややひんやりとした朝です。昼頃には暑くなり寒暖差が大きい1日だとの予報にも懐かしさを感じています。とはいうものの、台風や大雨は当面は油断できないとのことですから、ご用心。
 近年不漁が続いていたサンマやスルメイカの水揚げが好調だとのお知らせも届いています。底を打ったということでしたら嬉しいのですが、魚屋さんの店先では、あとちょっと頑張ってくださいという感じですね。

 国会で議席数が最も多い政党の党首選挙が行われています。選挙結果によって、どのような影響が出るか気のもめるところではありますが、うんざりした気分で眺めている人も多いのではないでしょうか。有権者の殆どは党員ではないので投票はできず、党首選挙の必要はないというアンケート結果も無視して行われる選挙をうんざりした気分で眺めるのは、至極当然と思います。
 そもそも現在の党首が辞任するのは、連続して選挙に負け続けたからだそうです。「民間企業では赤字が続いたらTOPが責任を取って辞める。同じように、選挙に負け続けたら、政党の党首は辞めるべきだ」との発言が同党の議員や評論家あたりから聞こえてきましたが、なぜ「同じ」だというのか全く分かりません。選挙に勝つことは、政治家が仕事をするための手段ではありますが、仕事の成果だということにはならないはずです。手段のうちの一つが上手くいかなければ、代わりの手を打てばいいのです。マネジメントの視点からは全く的外れな発言だと思います。マネジメントリテラシーの低い人たちが、議員や評論家として商売できている現実にうんざりするとともに、的外れだろうがなんだろうが、足を引っ張ることができればいいといった姿勢にもうんざりします。ついでにいえば、それが政治だという訳知り顔にもうんざりします。
 結果として、選挙に負けた原因を明らかにしようともせず、それまで続けてきた政策や公約を継続するのか見直すのかの判断をしたのかどうかも伝わりません。政策や公約が妥当なものだとの自信があるならば、どうして国民の多くが賛同しなかったのかしっかり分析するのではないでしょうか。そのうえで、賛成者が少なくても実施しなければならないということもあるのかもしれません。そういったまともな議論が行われないことにうんざりするとともに、誰が後任かといったことに終始するマスコミにもうんざりします。
 「国民の理解を得る」ということと「賛成票が多い」とは、同じことではありません。そもそも政治家や政党の主張に対する理解度と得票率に相関関係はあるのでしょうか。そのような研究結果を聞いたこともないし、研究が行われているとも思えません。「理解していなくても賛成票を投じる」ことも「理解しているが賛成票を投じない」こともいずれも存在します。政策毎に投票するのではなく、政治家あるいは政党に投票する制度ですから当たり前です。それなのに選挙に負けると「理解を得られなかった」と発言する政治家は、負けた原因を正直に言いたくないのか、分析したくないのか、いずれにしても事実ではないことを口にしているだけなのでうんざりします。
 選挙は民主主義の根幹だといわれますが、そもそも何が適切かを正しく判断できる人などどこにもいないのに多数決で物事を決めるということですので、大きな欠陥を持った制度なのです。専制主義よりはましだという理由で民主主義が支持されていますが、そんな欠陥にどう向き合うかの知恵はいまだにないまま、選挙が行われています。これも、うんざりなのですが、責任を押し付ける相手もいないので一人で呟くしかありません。
以上

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