『第299回例会』報告
中前 正 : 2月号
【データ】
開催日: |
2024年12月20日(金) |
テーマ: |
「チンギスハーンにマネジメントを学ぶ」
~チンギスハーンはユーラシア随一プロマネだった!~ |
講師: |
浜本総業株式会社 取締役 浜本 知一 氏 |
◆ はじめに
日頃皆さまは、プロジェクトマネジメントに携わっていて、プロジェクトを成功させることの難しさを感じたことはありませんか。特に近年はグローバル化やデジタル化などビジネスを取り巻く環境の変化がめざましく、計画通りにプロジェクトを実行して目標を達成することが一層困難になってきているように思えます。
そこで今回の例会では、ユーラシアの大部分を征服するという大事業を成し遂げたチンギスハーンのマネジメントからプロジェクトを成功に導くためのヒントを得ようと、長年モンゴル国でプロジェクトマネジメントの普及・啓蒙活動を行い、チンギスハーンへの造詣も深い浜本知一様を講師にお招きしました。以下、要点を抜粋して紹介します。
◆ 講演内容(抜粋)
● チンギスハーンはユーラシア随一のプロマネだった
チンギスハーンには侵略者、略奪者というイメージがあるが、実際は「戦わずして勝つ」というEQ(感情知能)思想の持ち主であり、ユーラシア各国との交易やディールを重視して帝国を発展させた重商主義者であった。
その統治力を支えた「チンギス・コンセプト」は、目的の単純化(バックキャスティング思考)、適材の適所登用(チームビルディング)、現場主義(アジャイル思考)、情報重視(コミュニケーション&レポーティング)など8つの考え方で構成される。また千戸制と呼ばれる十進法による組織構造を導入したが、これは作業を細分化して管理するWBSの考え方に符合する。
このように、チンギスハーンのマネジメントは現代のプロジェクトマネジメントの考え方に通じるところがある。
● 世の中は、プロジェクトマネジメントでできている
プロジェクトの計画・運営・管理の土台となるものは、プロジェクト全体を俯瞰し把握できる“WBS手法”である。その本質は、作業を細かく分解して整理することにより、リスクや不確実性をあぶり出してプロジェクトの成功確率を高める点にある。そして、このWBSがベースとなってプロジェクトベースラインができ、マスタースケジュールができることによって、失敗の少ないプロジェクト運営・管理が可能となる。
ところで、WBSに符合する十進法による組織構造をベースにしてユーラシア統治を成し遂げたチンギスハーンのマネジメントが現代のプロジェクトマネジメント手法に酷似していることから、この世の中の物事の多くがプロジェクトマネジメントでできているという考え方もできるのではないか。一例として、大谷翔平の「人生設計シート(マンダラチャート)」もまさにWBSであり、人生を成功に導くための手法である。言い換えれば、物事はWBSのように細分化しよく考えないとうまくいかないということでもある。
● (エピローグ)生成AIシステムは、プロジェクト関係者のサテライトブレーンとなる
近年、DXやIoT、メタバースといった技術の発展がめざましい。とりわけ生成AIの浸透は、今後のプロジェクトマネジメントのあり方に大きな影響を及ぼすだろう。
われわれは、今“AIを使うか・AIと共生(共棲)するか・AIに使われるか”という岐路に立たされている。このダイバーシティ(多様性)の時代におけるマネジメント組織構造の変化に対応していくためにも、プロジェクト・マネジャーやプロジェクト関係者としては、生成AIをサテライトブレーンとして使いこなして効果的にマネジメントしていく必要がある。
生成AIを使いこなす例としては、情報整理に活用したり、自分のカウンセラーにしたり、自分だけに特化したゴーストライターにするなどが挙げられる。生成AIは対話型のシステムであるためには、適切なプロンプト(指示)の設計・最適化する技術と生成された結果を判断・判定する能力が不可欠である。
◆ 講演を聞き終えて
チンギスハーンの成功を支えた考え方が、現代のプロジェクトマネジメントに酷似しているという発想は、とてもユニークで楽しく聴くことができた一方、「なるほど!」と腑に落ちるところも多くありました。また、大人数を率いて広大なエリアを統治した点から、プロジェクト全体を広く見渡す視野・視座(ダイナミックス)を持つことの大切さにも気付かされました。当日参加された皆さまは、何かヒントになることはありましたか。
例会では、今後もプロジェクト・マネジャーにとって有益な情報を提供してまいります。引き続きご期待ください。
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