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「エンタテイメント論」(199)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :12月号

エンタテイメント論


第 2 部 エンタテイメント論の本質

7 本質
●前号198号から本号199号までの2か月間、無投稿になった。お許し願いたい。
 無投稿になった理由は、筆者が病気入院した為である。コロナの予防接種を受けていたにも拘らず、2024年9月24日、コロナに感染。重度の肺炎も患い、救急車で東京逓信病院(東京都千代田区富士見)に入院した。

 同病院で治療と精密検査の結果、万全を期すために同病院の特別の配慮で筆者は9月26日、東京医科歯科大学病院(現東京科学大学病院、東京都文京区湯島)に救急車で移送された。直ちに同病院ICU(集中治療室)に入室。緊急の救命治療が開始された。筆者はICUと聞き、一時、「死」を覚悟した。

出典:新型コロナ・ウイルス
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出典;肺炎球菌
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出典:ICUでの救命治療
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 ICU医師団の必死の救命治療の結果、筆者は幸運にも「死」を免れた。病院関係者の一部で筆者の事を奇跡的生還や強運の持ち主と噂していた様であった(後述)。その後、回復の見通しが付いた為、10月2日、同病院から逓信病院に戻され、回復治療が継続された。同病院での治療の経過が良く、10月19日、退院する事が出来た。

 現在、筆者は自宅療養し、時々、同病院への通院治療を受診中である。しかし完全治癒までは今暫く時間を要する。しかし本稿を書けるまでに回復した為、本件を読者に報告し、2か月間の無投稿を詫びた次第である。

●この機会に読者に是非、伝えたい事が2つある。
 その1は、本稿の第1号の初稿から現在に至るまで、本文章を簡潔且正確に表現する為、敢えて「敬称」「敬語」を割愛してきた事である。また此の割愛を本稿の連載過程で時々読者に伝え、その非礼を詫びてきた事である。しかし途中から本稿を読んだ読者は、其の意図を知らない為、「筆者は上から目線で物言う人間だ」と感じて誤解したかも知れない。しかしそれでも簡潔性と正確性を優先し、今後も敬語、敬称を割愛し、その非礼を詫び続ける積りである。

 その2は、「生死」に関わる事態を引き起こす「新型コロナ(COVID-19)」に油断せず、マスク使用、ウガイ、手洗いなど万全の感染予防を行う事である。筆者はコロナ予防接種を受けたにも拘わらず、「死の危機」に直面したのである。

出典:生と死
出典:生と死
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 新型コロナに関する様々な研究結果や調査結果が公表されている。筆者は退院後、少し調べた限りでも、信じられない事を知った。例えば新型コロナ感染で肺炎を引き起こした70歳以上の高齢者の死亡率は25%を越える事、80歳以上は50%を越える事、人に依っては生存率は5%と言われている事などである。筆者にはどの情報が正しいか?分からない。

 しかしコロナ感染に依る重度の肺炎は極めて高い死亡率で或る事だけは確かな様だ。ならば日本の政府も、マスコミも、この恐ろしい死亡率を声高に訴えるべきであろう。84歳の筆者の救命治療をしたICU医師団は、筆者に救命治療した最初からヤバイと判断していたのではないか? だから奇跡的生還と強運の持ち主と噂したのだろう。

●2か月間の無投稿を穴埋めする為、前号198号で何が書かれていたか?
 以下の通りである。
  1. 1 開発され、事業化されるセガ式テーマパークに風俗営業法が適用されると、此の事業は100%失敗する事。風俗営業法が適用される様な施設に一般の人は誰も来ないからだ。
  2. 2 風俗営業法の監督官庁はセガの適用除外の訴えを全て拒否。セガは是が非でも適用除外方法を考え出し、実現させねばならない事。
  3. 3 筆者と部下達は適用除外方法を必死で探し求めた。しかし分からず、苦悩、苦闘し、「絶望的窮地」に立たされた事。
  4. 4 此の窮地の中で或る日、突然、或る事を「はっ!」と「閃き」、問題解決の方法を「直観」した事。
  5. 5 閃きとは、風俗営業法が適用されていないディズニーランドの事。直観とは、セガ式テーマパークをディズニーランドに似せた屋外型の所謂「ミニ・ディズニーランド」を作る事。
  6. 6 ミニ・ディズニーランド式 & セガ式・テーマパークならば、監督官庁は拒否できなくなる事。
  7. 7 セガ式第1号テーマパークを横浜市に建設する事。当時、セガ式テーマパークの「在り方(基本コンセプト)」は固まっていなかった。さらにディズニーランドに似せた施設を作る「やり方(具体的方法論)」だけは固まった。此のセガ式第1号テーマパークが後に大ヒットし、有名になった「横浜ジョイポリス」である。この成功を基に「ジョイポリス全国多館戦略」も成功した。
  8. 8 ディズニーランドに似せた屋外型のセガ式テーマパークを如何に具体的に作ったか? 199号以降で解説する事。

 筆者は、前号198号でセガ式テーマパーク開発と事業化に於ける問題とその問題解決策を一挙に解説した。しかし今回、読み直すとその解説に不十分な点が散見された。ついては本号199号で不十分な部分を追加&補足解説する。

●企業人に求められる「優れた発想」
 さて日本の多くの企業人(社長&社員)は、例えば既存事業分野に於いて人事、組織、生産、販売などで直面する深刻な問題を如何に解決すればよいか? また新規事業分野に於いて新しい商品、製品、サービス、そして事業を如何にすれば実現させ、成功させられるか? 日々、挑戦しているだろう。

 此の挑戦する企業人は、既存事業の問題解決や新規事業の実現と成功に「優れた発想」が極めて大きい役割を果たす事を知っている。しかも彼等は「優れた発想」をする為に「発想法」、「思考法」等を活用する事の重要性も知っている。例えば米国で開発された「デザイン思考」は、現在の多くの企業人が活用している。以前の企業人は、川喜田二郎の「KJ法」、中山正和の「NM法」、市川喜久弥の「等価変換理論」などよく活用した。

 筆者は約30年前、夢工学を構築した時に作った「夢工学式思考法」、別名「デック思考」を今も多くの企業人に薦めている。因みに「デザイン思考」は「1→10の思考法」、デック思考は「0→1の思考法」と評価する人物がいる。その為、両者を同時に活用する企業人が少しずつ増えてきた。

 さて「優れた発想」は、様々な「発想法」、「思考法」の活用で生み出される。しかし「生み出された発想」は本当に優れた発想なのか? それ以上優れた発想を生み出さないと直面した問題の解決にならない場合、どうするか? 「結論」から先に言えば、先ずは苦悩し、苦闘し、悩み抜く事、その末に、突如として出現する「閃き」と「発想」が生まれる事を待つ事である。

●筆者と筆者の部下の「絶望的窮地」
 筆者はデック思考を徹底的に活用し、風俗営業法の適用除外方法を考えた。筆者の部下達は自分が使い易い発想法や思考法を活用して、イロイロな発想を数多く生み出した。しかし監督官庁を説得できるだけ優れた発想は生まれず、益々悩み、益々苦闘した。そして筆者と筆者の部下は「絶望的窮地」に立たされた。此の窮地を再度、詳しく解説する。

出典:絶望的窮地
出典:絶望的窮地
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 絶望的窮地の1つ目は、筆者と筆者の部下だけでなく、セガ関係者が如何に優れた楽しいエンタテイメントのゲームマシンや多くの観客に喜んで貰える遊び施設をセガ式テーマパークの中で開発しても、風俗営業法が適用される限り、100%事業に失敗すると云う絶望的事実を突きつけられた事である。

 どの会社でも「夢」を叶える新事業プロジェクトを開発する場合、プロジェクト・メンバーは一丸となって情熱、知恵、行動を共にして夢の実現に挑戦する。しかし最初から100%事業が失敗すると云う絶望的事実を突きつけられた状態で新事業プロジェクトに挑戦する事業プロジェクトは、そもそも此の世に存在しない。もし存在しても誰も挑戦しない。しかしセガ式テーマパークの場合だけは100%事業に失敗する状況で挑戦せねばならなかったのである。

 絶望的窮地の2つ目は、風俗営業法の監督官庁がセガ社一丸となって何度も、何度も説得しても厳として適用除外を認めなかった事であった。

 絶望的窮地の3つ目は、監督官庁を説得する方法をセガ社挙げて幾ら考えても、幾ら検討しても見つからなかった事であった。

 絶望的窮地の4つ目は、筆者自身の事であった。筆者も、筆者の部下達も、他の重役も、社長も困り果てた。しかしプロジェクト総括責任者の筆者だけは、追い詰められただけでは済まなかったのである。窮地脱出方法が見付からず、諦めた場合は、筆者は責任を取ってセガを辞職する覚悟を密かにした。

 この覚悟をした時、何処からか「声」が聞こえて来た。「お前は何故、セガに転籍したのか?」 筆者は外資系ヘッドハントの誘いでセガへの転籍を決断した。しかしセガを転籍先に選んだのは、部下達と共に心血を注いだ「新日鐡MCAユニバーサル映画スタジオ・プロジェクト」が建設一歩手前で中止されたからだ。セガならばテーマパークを実現できるかもしれないと期待したからであった。

 筆者はセガへの転籍を決断し、新日鐡を無理やりに辞めさせて貰った。しかしセガに転籍した途端、今迄付き合っていた商社マン、銀行マンなどの多くの人々は筆者が新日鐡を首になったので不良の溜まり場のゲームセンターのセガで働き出したと噂し、筆者の前から次々と姿を消して行った。筆者はセガに転籍した時の期待と覚悟を思い出し、何としてでもセガ式テーマパークを実現させる事を心に誓った。

●何故気が付かなかったか? 東京ディズニ―ランド(TDL)は風俗営業法対象外!
 筆者は或る日、TDLで有名な恒例のパレードをTVで見た。その瞬間、「閃き」と「直観」が湧いたのである。

出典:東京ディズニーランド
出典:セガ・横浜ジョイポリス
出典:東京ディズニーランド
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出典:セガ・横浜ジョイポリス
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 閃きとは、TDLは風俗営業法の対象になっているか? ひょっとするとなっていないかも? であった! 調べた結果、対象になっていない事が判明。「やった!」と思った。

 直観とは、ディズニ―ランドに似せたセガ式テーマパークを作る事、そうすれば風俗営業法の適用除外を監督官庁は拒絶できない事であった。「やった!」と思った。

出典:やった!
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 苦悩と苦闘した事が「本当に優れた発想」を齎したのである。

 なおセガ式テーマパークの「在り方(基本コンセプト)」は検討中で、良いコンセプトが見付からず、苦戦していた。しかし「やり方(具体的な作り方)」の一つは明らかになった。ディズニ―ランドに似せた施設を作り、風俗営業法適用除外を実現させる事だ。

 この方法を部下達や関係者に提案したところ全員、驚いたが、喜んで賛同した。社長に提案したところ社長も驚いたが、大変喜んでくれ、やり方に同意した。この瞬間、絶望的窮地から一挙に脱出する事が出来たのである。

 そもそも筆者は絶望的窮地に立つ必要はなかったのである。何故なら「ディズニ―ランド」も、筆者が新日鐡勤務時代にプロジェクト総括責任者としてその開発に取り組んだ「新日鐡MCAユ二バーサル・スタジオ」も風俗営業法の対象外であったのだ。しかし筆者は当時、風俗営業法がセガやナムコなどのゲームセンターに適用されていた事など考えもしなかった。なお現在のハリーポッターの大阪USJは勿論、風俗営業法の対象外である。

●ミニ・ディズニーランド式 & セガ式テーマパーク第1号を横浜市に建設
 セガ社は以前から「室内型のエンタメ施設」のみを作ってきた。しかし今回はディズニーランドに似せた施設を作る為、「屋外型のエンタメ施設」を作る必要があった。また最初の第1号施設を何処に作るかも検討する必要があった。

 筆者は屋外型エンタメ施設の基本フレームの検討を開始すると同時に、そのフレームに適した最適候補地選びを日本全国ベースで開始した。前号で解説した通り、社内に反対があったが、筆者は横浜市の山下公園近くを最適地として強く主張し続け、社長の了解を得た。

 セガ式テーマパークの「在り方(基本コンセプト)」は固まっていなかったが、実現させる施設の「やり方(具体的方法論)」の1つだけは固まった。其れはディズニーの施設と近似した施設を作る事である。次号でミニ・ディズニーランドを如何に具体的に作ったかを解説する。
つづく

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