例会部会
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『第291回例会』報告

田邉 克文 : 4月号

【データ】
開催日: 2024年2月22日(木)
テーマ: 「 顧客(ユーザ)要件とそれに応じた契約 」
~顧客/請負業者の立場を踏まえた契約とリスク管理の在り方~
講師: 向後 忠明 氏 / PMAJ PMマイスター、アカラ株式会社 顧問

◆ はじめに
昨今、ビジネス環境が大きく変化し、顧客(ユーザ)企業では技術革新や情報処理に対応する企業変革が求められています。企業の担当者は、この求めに応じるためにまず「何をどうしたら良いか?」を考え、企画を立ち上げ、それを具体化する第三者(請負業者)に業務を委託します。顧客と請け負う業者のそれぞれの立場の違い、契約における流れ、契約のポイント・種類などを整理するとともに、どのようなリスクを考慮しなければいけないかについてお話しいただきました。

◆ 講演内容
プロジェクト環境の変化に伴い、顧客(発注者)と受け入れ側(受注者)が双方の立場の違いを理解し、適切に対処する必要性が高まっています。このような急激な環境変化において、契約は重要であり、契約書によって業務内容、報酬、権利義務を明確にし、法的な効力を持たせることで、トラブル防止の効果を得られます。業務委託契約には、請負契約、委任契約、準委任契約の3つの契約形態があり、契約の設定には、①顧客の能力、②請負業者の能力、③技術条件の固定度合い、④契約前と実行中のリスク回避条件が影響を与えます。講演では、これら3つの契約形態の特徴を解説し、それぞれの利点/欠点を説明されました。そして、これらの要素を総合的に考慮して適切な契約形態を選択する必要性を強調されました。

さらに、契約に対するプロジェクトマネジャーの意識に触れられました。多くの予期せぬトラブルが発生した際に、契約はプロジェクト実行中における責任の所在を明確にするためのリスク回避の原点であることを述べられ、そのためにもプロジェクトマネジャーは以下を身に着けておくべきとされています。
  • 契約内容の全体構成とそこに示される約款の優先順位と意味を知ること。
  • 契約書に示す内容の決め方によって、有利・不利が分かれること。
  • 契約内容は顧客との交渉によって決まるので、交渉能力が重要であること。
また、契約書作成の手順についても説明され、契約書作成の際に参考となる標準契約様式(ENAAモデル)が存在し、契約書作成時の参考に使えることを紹介されています。そして、契約書には一般約款条文と特別約款条文が構成要素としてあり、作成にあたっては法務部門とプロジェクトスタッフの役割分担があることについても話されました。

最後に、契約の基本は、『誰が誰のために、何を幾らでどのような条件で、また問題や不履行となった場合はどのようにするか』であり、請負契約も準委任契約も基本は同じであること。そして、契約は顧客と請負業者間の取引の原点であり、また、プロジェクトマネジャーはリスク管理の原点であることを自分の役割として認識した上でプロジェクトマネジメントを行うことが肝要であることを伝えられ、講演を締めくくられました。

◆ 執筆者所感
契約自体はとても身近なものであり、一見知っているようで実は知らないことが多い知識分野だと思われます。私自身、仕事でも契約書を多く取り扱いますが、多くのケースで過去の事例を参考にして作成しており、その基本構成をあまり意識しておりませんでした。そのため、今回のお話を聞くことで、契約の基本的な考え方や、他の契約手段があることを再認識することができました。今後は個々の契約の背景にさらに注意を払い、より良い契約を締結できるようにしたいと思いました。

例会では、運営メンバーを募集しております。ご興味をお持ちの方は、是非、ご一緒に例会運営へご参加ください。参加ご希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。

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