第159回関西例会 報告
PMAJ関西KP 岩崎 博昭 : 6月号
開催日時: |
2022年04月22日(金) 19:00~20:30 (懇親会~21:00) |
開催場所: |
オンライン(Zoom)開催 |
テーマ: |
「ノーコードプログラミング時代におけるプロジェクトマネジメント」 |
講師: |
小藪 康 氏/神戸情報大学院大学 研究科 准教授 |
参加者数: |
40名 (スタッフ、講師含む) |
1.はじめに
講師はパナソニックにて長年システム部門でプロジェクトマネジメントや人材育成に携わったのち、現在は神戸情報大学院大学で次世代のICT専門家人材の育成に携わっています。
本講演では、近年注目されている「ノーコードプログラミング」の現状と今後の展開をベースに、プロジェクトマネジメントに与える影響について考察していただきました。
2.概要
<神戸情報大学院大学のご紹介>
講師が勤務する神戸情報大学院大学は、情報システム修士課程2年の専門職大学院として、大学・専門学校の卒業生とともに、社会人やアジア・アフリカからの人材が高度なICT技術を学んでいます。(春・秋の入学)
<ノーコードプログラミングとは>
近年、「ノーコードプログラミング(プログラム言語を使わないプログラミング)」 と呼ばれるソフトウェア開発手法が注目されています。
「ノーコード」とは名前のとおり、コードを「書かない」または「少ないコード」で開発します。
ノーコードが発展してきた背景としては、クラウド技術やモバイルの普及などの技術的な背景とともに、下記のような社会的な要因が挙げられます。
- IT活用の広がりとIT技術者の不足
- 技術知識習得のハードルが低くなった
- 無料で利用できるノーコードツールの充実
開発ツールも多数登場してきており、簡単に言うと「プログラミングを勉強しなくても開発できる」環境が整ってきています。
<ノーコードプログラミングツール>
ノーコードプログラミングツールを用途によって分類すると、下記のようになります。
- Webページ開発向け(Webページのデザインや制作、サイト構築)
- 処理自動化向け(クラウドサービス間の処理の自動化)
- ソフト開発向け(ブラウザやモバイル端末の画面作成、データ管理)
たとえばWebページを開発する場合、ツールを使用すると「環境を用意しなくてよい」「テンプレートにしたがって作成できる」「デザインセンスが不要」などがメリットとして挙げられます。
また、ノーコードツールのメリット・デメリットを整理すると、下記のようになります。
ノーコードツールの導入する場合には、これらの点を考慮したうえでシステムへの適用を検討する必要があります。
例えば、ある程度利用期間や利用部門が限定されているものや、短期間での開発となり、変更が頻繁に発生するようなものにはノーコードが比較的向いていると考えられますが、逆に、企業の基幹業務で利用されるものや、高いセキュリティレベルや処理能力が求められる場合には慎重な検討が必要になります。
総合すると、ノーコードツールの適用の方向性として下記の3点があげられます。
- 新規事業立ち上げ(短期開発、開発容易性、コスト)
- 社内システムの連携(SaaS連携の容易性)
- 部門業務ごとのICT活用(ICT人材の有効活用)
いずれも、ノーコードプログラミングを活用するメリットは大きいですが、過度の期待は禁物です。また、メリットとともにデメリットをよく考慮しながら、適用を検討していくことが重要です。
また、日本語利用(マルチバイト文字の処理)についてもツールによって違いがあり、適用を検討するうえでの考慮点となります。
<ノーコード時代のプロジェクトマネジメント>
ノーコードプログラミングによって、ユーザーが自分でシステムを開発できる時代が到来し、「開発者」リソースが広がるとともに、従来のプロジェクトでよく問題となる「要件定義」のプロセスが短縮化、容易化される可能性があります。
また、ユーザーが自分でシステムを作ることにより、「システムは専門家が用意するもの」という意識から脱却し、自分で業務を変えていけるという意識が育っていくことにもつながります。
ただ、プロジェクトマネジメントという観点から考えると、目的や仕様の検討が不十分なまま開発を進めたり、ルールやプロセスが守られなかったり、といういわゆる「野良」状態にもなりかねません。
- マネジメントプロセスは従来のソフトウェア開発とほぼ同じ
- 要件定義に関連した上流工程は従来と同様のものが求められる
- 採用するツールの特性を考慮した設計が工程の混乱要素を削減するポイント
- マネジメント要素は同じだが、規模は小さくなるため、マネジメントの複雑さは限定的
- 開発者自身がマネジメントに対する認識をより強く持つ必要がある
- リスク要因が多く、リスクマネジメントが重要
- クラウドサービスの利用、サービス終了、リソース管理が見えなくなる、テスト工程が軽視されがちなど、開発規模に比べてリスク要因が多い
- 開発者および活用部門内でリスク評価を十分におこなう意識と行動が重要になる
3.感想
ノーコードプログラミングのメリット・デメリットをデモを交えて紹介いただき、有意義な講演でした。
ノーコードは開発のハードルを低くする反面、プロジェクトの観点からは一般的な開発手法と同様(あるいはそれ以上)にしっかりとしたマネジメントが必要となります。
今後は、プロジェクトの中で従来の開発手法とノーコードが混在するハイブリッド開発のようなことが簡単にできるようになっていけば、プロジェクトがもっと多様化していくのでは、と感じました。
それは、同時にマネジメントの複雑化、高度化が求められるのかもしれません。
余談ですが、Q&&の時間および懇親会とも非常に盛り上がり、時間が足りないほど活発な議論がおこなわれました。
4.おわりに
2022年度の月例会は2021年度と同様、関西地区、東京地区の交互開催となります。
東京と関西で特色のある例会を企画してまいりますので、ご期待ください。
- 関西例会(関西地区企画): 4月、10月、 1月
- 例会 (東京地区企画): 5月、6月、7月、8月、9月、11月、12月、 2月、 3月
以上
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