PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (132) (Nコム)

向後 忠明 [プロフィール] :10月号

 今月号からいよいよタスクフォースチームの具体的な組織構築を行うことになります。

 すでに前月号で述べたように、プロジェクトマネジャ(ユーザ代表)及びアドバイザーは決定されているので、次にメンバーの設定が必要となります。
 また、このシステムはNコム全体の経営改革にも関係するためユーザとしての財務部、全社システムの監視役としての経営企画部、そして各関連事業部からなるステアリングコミティーを設置することとなり、タスクフォース全体をサポートする体制としました。

 今回はプロジェクトマネジャに財務部の担当部長を指名しましたが、彼はプロジェクトマネジメントは素人ですが管理職としての素養は十分あり、財務管理システム知識にも十分なものがあります。一方のアドバイザーはプロジェクトマネジメント実務に長けているが財務管理システムについては全くの素人です。
 ここまでの体制は本システムの重要さを考え、トップマネジメントの意向によるものでしたが、実際の業務遂行には技術的な人材の登用が必要です。
 これまでの人材選定はマネジメント中心であり、本システムに必要な技術的マネジメントを行う人材はいません。
 このプロジェクトは財務部中心であるので、プロジェクト実行チームには財務管理の知識のある人はいるがプロジェクト進行管理は無理であり、旧システムの開発を行った経験もありません。また、NコムSE部にも旧システムの開発にかかわった人材もいません。そこで、タスクフォース内で責任をもって活動できる人材には①旧システムの開発にかかわった人②Nコム社の重要システムであることからN社関連の企業からの人材であることも必要であり、関連会社のNコムウエアーと話をして技術的知見と経験のある人材をお願いしすることにしました。そして、その人を技術管理全般のマネジャ(エンジニアリングマネジャ)としました。権限は本システムの技術上のプロジェクトマネジャとしました。そして、その配下に財務部スタッフとSE部の技術者を配置しました。
 そして、NコムSE部は新管理会計システムベンダー、Nコムウエアーが財務システムベンダー、各事業部などは各種関連システムの改造ベンダーとして、PJタスクフォースの管理下に置くことにしました。
 この体制図は次ページに示しますが、このプロジェクトは財務部がユーザであり、PJタスクフォースは財務部中心であるが、プロジェクト進行の責任は財務部以外の人に頼るといった変則的な組織となっています。
 プロジェクトの成功はあくまでも求められる要件、内容によって企業を取り巻く条件などを考慮することが必要であることから、固定概念にとらわれない組織体制と人材の選定を行うことが必要です。

タスクフォースの組織

 なお、タスクフォース配下の各ベンダーは担当システムごとに下請けソフト開発ITベンダーまたはメーカに業務委託しシステム改造などの実質作業を行いました。

 次に大事なことはシステム改造にかかわる要件の確認とプロジェクト全体のサマリーの作成、その後のプロジェクト計画と枠組みの作成が必要となります。すなわちWBSの設定とそれに関連するシステムの構成を見てプロジェクトWBSを作成します。これを基にマスタースケジュール作りや実行予算設定などを行います。同時に、WBSの設定ができたところで、プロジェクト遂行に必要なコーディネーション手順を作成することが重要です。ここまでがプロジェクトの基盤つくりと言いますが、このどれが欠けても問題となります。
 さて、上記の中でプロジェクトのスムーズな遂行に必要なものはコーディネーション手順であり、一種のプロジェクト全体のコミュニケーションツールとなり、関係者が多いほどプロジェクト関係者間でお互いに齟齬の無いようにするための約束事となります。
 しかし、タスクフォースメンバーにはプロジェクト実践経験のある人がいなかったのでPMアドバイザーがその書類つくりの司令塔となりました。そこで、その書類に規定される項目をメンバーに示し、以下のように羅列、指導していきました。

  1. 1.図書類の識別、やり取りの規定
  1. ①書類や作業の識別
    WBSにより関係する書類や図面を識別、管理、検索が容易になるようにする。
    プロジェクトの規模が大きいほど書類識別が煩雑となり、ドキュメントナンバーを図書に振り付ける必要が出てくる。
    各サブシステム及び関連作業のマトリックスを作り、WBSに従ってナンバリングをする。そのサブシステムとその作業を関連付けた番号をつけたスケジュール表を作る。
    例:ドキュメントナンバリング、ドキュメント出入管理元帳と修正管理、作業の識別等々
  2. ②コレスポンデンス
    すべての図書類のやり取り規定とその書類の種類ごとの流れ。
  1. 2.役割分担
    PM、EM,及びPMアドバイザー、PJメンバー及びシステム主管部そしてタスクフォースと開発側の役割分担と宛先
  2. 3.会議体系
    プロジェクトのスムーズなコミュニケーションのため、会議の目的、内容、決定しなければならない事項及び問題点を明確にする。
    例えば、会議名、主催者、開催日、時間、出席者そして会議内容などを明確にし、会議ごとに示す。
  3. 4.報告書
  1. ①会議議事録
    後で「言った、言わない」ということのないように会議の内容を正確に記述し、会議主催者の承認を得て関係者に配布し、会議内容の周知を図る。
    スケジュール進捗会議各システム担当者は対象システム毎の予-実のわかる線表を会議に提出、説明し、責任者に提出する。
  2. ②月次報告書
    プロジェクトの進捗や技術的問題やその是正処置の結果等の討議結果。特に課題会議などの内容については漏らさず報告し、事後報告の内容にする。

 このような内容でプロジェクトマネジャ及びスタッフ、関係者に説明し、彼ら自ら作成するように指導していきました。
 プロジェクトを始める前にはこのような手順を明確にしておくことが重要であり、このようなことができないと、プロジェクト計画書作成といった作業に入ることもできないし、プロジェクトが実際に動いた場合、プロジェクトはあらぬ方向へ進んでしまうことになります。
 このようにプロジェクトの進め方や計画書に記述するべき内容をざっくり示しましたが、不明な部分はその都度指導していきました。

今月号はここまでとします。

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