グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第154回)
グローバル交流のインフラ

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :5月号

 4月号の寄稿は休みとなり申し訳ありませんでした。急に浮上したロシアでのオンラインセミナー案件の立ち上げで、提案書などいくつかの書類を提出することになりラッシュワークをやっておりました。
 毎月家に閉じこもってオンライン出講か録画撮りをやっていると、自由にヨーロッパを飛び回っていた頃が、たった2年前なのに、なつかしい。ロシアのヴォルガ川地域在住の日本人経営者で、ロシアから、日本に残してある自分の会社の経営を、バーチャルメディアを使ってやっている人のYou Tube寄稿があるが、ロシアの地方都市の日常生活を描写していて、若干土地勘がある筆者には面白いが、最近のブログで、この人がご家族で海外旅行をすることになり、モスクワの空港に着いた際に、1年半ぶりの空港で大変な開放感を味わった、と述べていた。その気持ちは大変良くわかる。年間8回から10回利用していたパリのシャルル・ドゴール空港が懐かしい。今年は大学の講義で岡山に行く予定があるが、本当に対面授業ができるのか、やはりオンラインかは、まだ分からない。
 5月には、恒例のウクライナ国際大会があり、ホスト大学の名誉教授である筆者は今年もオンライン出演する。基調講演のスライドは英語・ロシア語併記で提出であるが、自分でGoogle 翻訳までやって、チェックはウクライナのかつてのTA(大学院での補助教員)がやってくれる。この人(Ph.D,)は大学の准教授、海外顧客を持つウクライナIT企業のプロジェクトマネジャー、IPMAのグローバルアセッサー、母親として2歳の女児の子育てのすべてをやっている。
 6月のロシアでのセミナー案件は、SOVNET-IPMAロシアプロジェクトマネジメント協会の会長が繋いでくれた案件である。ロシアの中小企業向けのプロジェクト開発・プロジェクトマネジメントを講じる半日セミナーであり、かなり難題である。
 ロシアの中小企業の経営者はかなり優秀であり、動きが早い。なんでも少人数でやらなければならないので、マネジメント能力があり、プロジェクトマネジメントのこともかなり分かっている。また、コロナで市場が混乱しているなかで、中小企業も必至である。このような中に突っ込むには覚悟を決めてやるしかない。ロシアにもチーム・タナカがあり、ロシアの中小企業を念頭においた、講義内容のアドバイスと筆者が自分で行ったロシア語へのGoogle翻訳の精査をやってくれているのは、旧モスクワ州立人文大学大学院で、一緒に修士課程を運営していた、今は引退しているプロジェクトマネジメント学のPh.D.(オーストラリアの大学)だ。悠々自適で絵を描いて生活しているのであるが、かつて、当方が、彼女の大学のために尽力したことでもあり、気持ちよく協力してくれている。
 研修を含めたグローバル活動を続けるには、Give & Take で助けあう仲間が、活動対象国ごとに必要であり、これは一種のインフラである。筆者もこれまで、海外の友人や友人の友人達に日本の情報や自分のネットワークから得る世界の知恵を常に提供してきた。
 講義や研修で、少なくともスライドは、当該国の言語で作成する必要がある案件もあった。ロシアやウクライナのシニア層向け、あるいはセネガルの英語が良く理解できない修士学生向けなどである。また、実現要請があるブラジル向け研修もポルトガル語化が必要だ。筆者の場合、教材がほとんど英語であるので、日本の大学院で、日本語で講義をする際に日本語への変換も必要であった。

 2000年代 Google 翻訳を使いだした頃は、英語から他のヨーロッパ語への翻訳はすでにまずますの精度(80%程度)であったが、英語→←日本語はとても使えるレベルではなかった。しかし、AI技術が進展するとさすがに翻訳エンジンの学習度もあがり、多くの人が使用するようになると、日本語からの翻訳も、その後編集をすることが条件であるが、下訳として使えるレベルに入ってきた。今回、英語→ロシア語、英語→日本語の翻訳をやってみた結果によると、
  • 英語からまずロシア語に翻訳し、ロシア語を英語に再翻訳すると、どの程度正確に英語の文章が再現されるかで、ロシア語訳の精度がほぼ判断できる
  • ただし、文章自体の構成はほぼ正しくできているが、Value, Objective, Goalなど微妙な用語の訳については、ロシア語が分からない筆者には判断がつかないので、native speakerでプロジェクトマネジャーのプロに精査を依頼する必要がある
  • ロシア語訳で誤訳が出た場合は、英語の方の語順を直す(たとえば、英語では Earned Value Management と名詞を続ける、これをManagement of Earned Valueと書き換えると正しく訳される(このof を入れることは英語→フランス語のGoogle 翻訳では大変重要になる)
  • 英語→ロシア語訳をやり、検証のために英語にもどすと、非常にこなれの良い英語に直ることが多々ある。それは、翻訳エンジンがすっきりした英語の言い回しを蓄積しているからで、そのような良い訳が出た場合は、原文の英語を直すのにも使用できる
  • 英語→日本語の精度が10年前と比べると、かなり上がっていることに気がついた。マネジメントの内容でも複雑な構文が多重にならなければ、口語体としてはまともな訳がでてきたので、後編集が以前と比べてかなり少なくなった

 Web検索、You Tube、Google 翻訳と、全てAIが動くので、PCに学習をさせることが生産性向上にすごく役に立つ。
 もう一つ、日本ではLINEがデファクトであるが、海外はWhatsAppがデファクトで日本からでも当然使用できるので、使ってみるとよい。LINEと同じで、携帯の国番号をつけた電話番号を開示するだけで利用できる。ヨーロッパ人たちは、情報交換にはメールは使いたがらず、WhatsAppにすると返事がすぐに返ってくる。

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