グローバルフォーラム
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「グローバルPMへの窓」(第153回)
縁(えにし)と運気

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :3月号

 以前このコラムで書いた記憶があるが、半世紀近く世界のいろいろな国のプロジェクトマネジメント関係者と交流をやっていると、縁(えにし)があった、と感じることがある。最近では、約10年間交流が休止していたインドとの関係が復活し、一昨年の世界大会と昨年のオンライン世界大会で基調講演を復活依頼されたことや、その機会にこれも20年近く没交渉であった、かつての世界のPM論客との再会があった。
 最近、ロシアPM協会長からも、昨年一度は辞退したIPMAロシア世界大会での基調講演を、大会が本年出直しとなったので、オンラインでよいから是非やってほしいとの要請を受け、では親戚代表で、と引き受けて、9月のセントピータースブルグ大会で東京から発信することになった。
 隣のカザフスタンPM界とも親交があるが、親しい友人(女性)が新たにIPMAカザフスタンPM協会の第3代会長に就任した。初代会長で、旧ソ連でもトップクラスの科学者であり、カザフ国会の序列3位であったサガディエフ博士は昨年亡くなられたが、創設から右腕であった大統領財団の幹部であるこの方が会長になった。2007年、アルマティで開催の同協会初の年次大会に基調講演を行いに行き、今は会長になった、この方の自宅で、ご主人、ウクライナPM協会長でカザフPM界の最高指導者セルゲイ・ブシュエブ教授とで7時間の祝宴を行いウオッカを7本空けたこと、2008年開催のPMAJの世界大会には、海外参加国最大の13名の派遣団をサガディエフ団長が率いて参加していただき、世界のPM要人にカザフスタンの存在を示したこと、など歴史は刻まれている。
 これらは縁であるが、筆者の世界PM界における運気も波がある。この20年くらい筆者については体調不良説、限界説が何回か流れたことがあるが、どこかの国際大会で基調講演を行った事実が伝わると、さっそく、大会へ出演依頼がやってくる。ここ一年のコロナ禍で、みな鳴りを潜めていただが、今年に入ってからは、オンライン大会や秋以降の実物大会の計画が始まりつつある。昨年暮れに、18年のロシアの国際大会の主催者からメールによるクリスマスカードが届いて、これは安否確認であり、オンライン研修をやっていると返事をしたら、最近ロシアでのイベントへの出演引き合いがきた。
 1月に実施した世界への発信でも、強い反応があり、すべて海外向けであるが、社会人管理職者の研修も今年は件数が増加しそうで、忙しい年となりそうだ。

 このような状況で、筆者が今やっていることは、来るべき複数日にまたがる研修や世界大会での一発勝負の基調講演に向けて、スピーチのスタミナと安定性向上、英語の精度向上、癖の矯正、そして、切れの向上を目指しての研修内容のビデオ収録によるトレーニングである。幸いビデオ会議ツールには録画機能があるので、これを使用し、一日2時間から4時間の研修テーマを週に3回程度録画している。研修は3日以上連続でオンラインということが普通であるので、3日間連続で3時間の収録を行う事も度々ある。ワンテークではなく、録画内容を見て、修正点を挙げて、リテークを繰り返すことで、だんだん切れと精度はあがる。ただし、言葉の言い間違えはかならず起こる。
 これをやって改めて気づいたことは、英語力や講演内容の正確さが落ちたのは年齢のせいではなく、本番の場数の減少と練習不足である、ということであった。かつてのように肩慣らしなしで、いきなり登板ということはできないが、ブルペンで丹念な投げ込みを続けていれば、安定した投球ができて、ゲームメークができる。ただし、これは想定で、実戦で検証を行う必要があることは勿論だ。 ♥♥♥

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