今月のひとこと
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 プロマネだったら 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :2月号

 「凛」という言葉がよく似合う風景でした。冬枯れの樹木に覆われた小さな池に一羽の青サギが立っていました。
 千葉県市川市の東のはずれに大町自然公園があります。1㎞ちょっとの縦長なこじんまりした公園で、周囲の梨畑に蓄えられた水が湧き出す自然の水性植物園です。この時期は望遠レンズ付きの高級カメラを持ち込んで、そこに生息する鳥類を撮影する人を多く見かけます。編集子はカメラが苦手なので、鳥の姿を目に焼き付けるだけでカメラマンのじゃまにならないように静かに歩いています。

 朝日新聞の1月23日土曜版に、はやぶさ2のプロジェクトマネジャーJAXAの津田雄一さんの特集記事が掲載されていました。そこに津田さんの次のような言葉が載っています。
 「探査機はあまりに複雑なので、私も含め、全てを理解している人は誰一人いません。一部に深く詳しいか、全体を広く浅く知っているかです。」
 この言葉は、最近の難度が高いといわれるプロジェクトの実態を表しているように思います。もちろん、過去のプロジェクトでも「一部に深く詳しい人と全体を広く浅く知っている人」ばかりで構成されたプロジェクトは数多くあり、プロジェクト運営に多くのプロマネが苦労してきました。違いは「あまりにも複雑」という点です。技術の進化、環境保護意識の高まりなどプロジェクトに関係する分野が広がり、複雑さのレベルが一段と高くなったプロジェクトが格段に増えています。プロジェクトに参加する際に、津田さんと同じような感想を持つ人が多くなったと思われます。
 PMAJでも、こうした複雑プロジェクトの事例をシンポジウムやセミナー、例会の場で数多く取り上げてきました。例えば複雑プロジェクトの代表とされる自動運転自動車開発に関連してPMシンポジウム2020では自動運転を見据えた自動車の安全対応プロジェクト事例を取り上げています。
 また、自動運転自動車開発に対応する「ロードマッピング」を例会で紹介しました。
 こうした事例をみると、プロジェクトマネジメントさらにはプログラムマネジメントのレベルも上げる必要があることが分かります。少なくとも、勘と度胸に頼るだけのプロマネには対応できるとは思えません。複雑なプロジェクトをこなせるプロマネのあるべき姿について、PMAJでも探求していかねばなりませんが、そのカギの一つとなるのは、コミュニケーション・コントロールではないかと思います。
 自身が関わっているプロジェクトのプロマネを素晴らしいと感じている方、逆にもどかしさを感じている方、その理由を考えてみませんか。特に、日常生活ではスマホを駆使しオンラインミーティングもこなしているというような方に考えて欲しいと思います。そのプロマネのコミュニケーション・コントロールについて、どのような長所あるいは課題を発見されるでしょうか。さらに、自分がプロマネだったらどうすべきかと考えていただければと思います。
以上

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