例会部会
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【第254回例会 報告】

KP 宮下 真 : 3月号

【データ】
開催日時: 2020年1月24日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「ティール組織時代のリーダーシップ」 ~自律・自己組織化経営のマネジメント手法~
講師: 島 青志 氏/一般社団法人自然経営研究会 代表理事、株式会社Salt 代表取締役

今回の例会には、自然(じねん)経営研究会の代表理事であり、アート思考/システム思考/デザイン思考を活用した経営/自律型経営のコンサルティングを行う株式会社Saltの代表取締役でもある島氏を講師としてお迎えし、ティール組織とはどのようなものなのか、ティール組織でのマネジメントプロセスや自律型組織の導入方法について、ご講演いただきました。

【講演概要】
組織の発達段階
5つの色で組織の発達段階を示す。
レッド オオカミの群れ:力による支配、短期的思考
アンバー 軍隊:長期的展望、上意下達、厳格な階級に基づくヒエラルキー
オレンジ 機械:イノベーション、科学的マネジメント、社長と社員のヒエラルキー
グリーン 家族:多様性の尊重、ヒエラルキー残すが従業員の幸福重視
ティール 生命体:信頼での結びつき、指示命令はなくてよい、自律的

ティール組織、自律型組織とは
ティール組織
有機的な組織目標(階層構造を通して企画・決定された組織目標ではなく、共鳴と積み重ねを通してボトムアップで決められた組織目標)を達成するために、”丸ごとの”個人(個人の一部分に過ぎない仕事人ではなく、その人すべて)が自己組織化と自主管理をできるようにするための組織。
ホラクラシー
最も広範に導入されている自律型組織の一形態であり、自主管理の仕組みのフレームワーク。職権と意思決定権は、流動的に形を変えていくサークルに対して割り当てられ、組織管理方法は複雑な憲法によって詳細に定められる。
自律型組織
ピラミッド型の階層組織ではなく、ホラクラシーに代表される自律的に活動するサークルを単位とした組織であり、複数のサークルからなるスーパーサークルを構成することで大きな組織体を形成する。
自律型組織の仕組みはホメオスタシス理論にも共通する方法の原理に基づく。目的と状況を認識し、そのズレ修正する方法をとる、といったことを繰り返すことで目的を果たしていく。
自己組織化
雪の結晶やアリ塚のように指示や統制がない状況で自律的に秩序を持つ構造を作り出す現象である。

自律型組織への誤解
一般には以下の3つの誤解がある。
自律型組織には、組織構造がない
⇒サークル、スーパーサークルといった組織構造がある。
自律型組織には、階層構造がない
⇒固定したリーダーではないが、役割ベースでのリーダーは存在し、シェアード・リーダーシップとなる。
自律型組織では、すべてがコンセンサスで決まる
⇒すべての関係者とその問題の専門家に助言を求めなければならないが、助言を求めた上で反対意見があっても自分で決めることができる。原則として、組織の誰がどんな決定を下しても構わない。

ティール組織の3つの突破口
ティール組織へ向けては以下が突破口であるとともに、自律型組織のフレームワークにも繋がる。
存在目的:Purpose
何のために生きるか、最も大切な価値観とは何か。つくられた経営理念ではなく、個人と組織の理念を考える:アート思考。
全体性:Wholeness
自己を拡張しつつ、組織を全体として把握する、木も見て森も見る。組織全体をシステムとして捉える:システム思考。
自主経営:Self-Management
具体的に自律型組織・自己組織化組織を構築する。セルフマネジメントの組織開発・組織設計を行う:デザイン思考。

自律型組織の導入方法
全社一括導入:小規模・スタートアップ向け
開発部門への導入から管理部門へと拡張:中堅企業
一部署への導入から少しずつ広げていく:中堅企業~大企業

自律型組織の導入プロセス
Being、Knowing、Doingの視点でそれぞれアート思考、システム思考、デザイン思考を活用し、以下をイテレーティブな関係で進めていく。
一人一人の夢や存在目的を表現し、組織のビジョンと互いの共感
自律型組織(ティール組織)マネジメントに関するナレッジ・全体性の理解
経営の透明性、情報のフラット化
業務の透明性、アジャイル経営の導入

【所感】
ティール組織について学び始めたばかりの自分にとっては、概要を理解するとともに、背景や過去の歴史的経緯、関係する理論や知識を知ることができ、誤解や曖昧に認識していた部分も正しく把握することができました。
ティール組織の目指すところの自律、自己組織化、生命体という概念について、自然界、生物・生命的な例を元にわかりやすく説明いただくとともに、アジャイル開発との共通性、関連性についてもご説明いただき、プロジェクトマネジメントの観点でも有益な学びとなりました。
ティール組織については、個人と組織、どちらかを犠牲にするのではなく、整合、調和させるということで、個人も組織も成長し、結果も出していくといったことでの希望、魅力を感じました。
ティール組織の3つの突破口、フレームワークについては、ティール組織に限らずに重要な要素であり、自分自身においては、Purpose:志、Wholeness:社会・解決策、Self-Management:自己のふるまい、と置き換えて物事へ取り組むべきと考えております。
ティール組織は、導入にあたっての様々な障壁(固定概念や統制面の懸念など)があると想定されるものの、今後確実に広まっていくと感じました。
私自身は、本講演での内容を元にさらに理解を深めて行く必要性を感じたとともに、今後多くの人にティール組織を理解していただきたいと思っております。

最後になりますが、多方面でご活躍され、お忙しい中でご講演いただいた島氏には、心より感謝を申し上げます。

また、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集しています。ご興味をお持ちの方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。
以上

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