例会部会
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『第236回例会』報告

中前 正 : 9月号

日頃、プロジェクトマネジメントに従事している皆様、いかがお過ごしでしょうか。
今回は、7月に開催した『第236回例会』について、ご報告いたします。

【データ】
開催日: 2018年7月27日(金)
テーマ: 「PM実践力に必要な人間力の要は何?」
講 師: PMインテリジェンス代表 竹久 友二 氏

要件を定義し、発生しうるリスクも想定して、ステークホルダーへの説明も行うなど、プロジェクトの計画段階にやるべきことはしっかりやった。しかしいざ実行段階になると、スケジュール遅延やコスト超過といった問題が生じ、困り果ててしまった・・・といった経験のある方は多いのではないでしょうか。

プロジェクトを成功に導くには、さまざまな問題に立ち向かい、任務を遂行していく実践力が必要ですが、その実践力はどのように育み、発揮すべきでしょうか。今回の例会では、そのあたりのヒントを探ってみたいと考え、長年NTTで多くのソフトウェアやシステム開発のR&Dプロジェクトに携わり、その後NTTデータでプロジェクト成功の全社的な仕組み作りやPM育成などに携わってきた竹久友二氏(以下、講師)を講師にお招きしました。

講師はまず、プロジェクトを困難にさせる要因として、プロジェクト遂行中に起こるさまざまな変化(スコープ変更、ビジネス環境の変化など)に加えて、プロジェクトに関わる人たちに起因する複雑性に注目し、これをうまくマネジメントしていくことが重要だと説きました。

思えばプロジェクトとは、それを計画する人、実行する人、支援する人など、さまざまな場面でさまざまな人が関わる、まさに人間の営みといえます。それゆえ、多くの人の思惑が絡み合い、ときに意見の衝突やモチベーションの低下といった問題が生じてしまうことがあります。そこで、彼らの「欲動」(動機づけに対して深い関わりを持つといわれる基本的感情)を満たし、安心して積極的な行動をとってもらうことが必要になってきます。なお、「欲動」には、以下の4つのタイプがあると言われています。

獲得への欲動
絆への欲動
理解への欲動
防御への欲動

次に、人々の欲動を満たすのに効果的なリーダシップの説明がありました。リーダシップには、

トランザクショナル(取引型)
トランスフォーメーショナル(変革型)
サーバント(奉仕型)
オーセンティック・リーダシップ

といった型がありますが、「本物の」という意味を持ち、ポジティブな自己開発と心理的に結ばれたオープンで正直なネットワークを構築して人をリードするオーセンティック・リーダシップが、複雑性に強いリーダシップであると講師は説きます。

では、オーセンティック・リーダシップは、いかに育むべきでしょうか。効果的なオーセンティック・リーダシップは、高いセルフエスティーム(自己肯定感)から生まれるといわれています。「良いところも悪いところも含めて、自分が好き」「いつも元気で、人生を前向きに考えている」という感情は、自分の能力を存分に発揮でき、またそれが周囲にも好影響を及ぼして、自分を含めた人間関係を良好に保つのに役立ちます。

セルフエスティームの高め方としては、

1. 正しい自己イメージを作る
2. 意識的に生きる
3. 自己を受け入れる
4. 責任を持って生きる
5. 相手のセルフエスティームを高める

といった方法があり、講演ではこれらの具体的なエクササイズ方法についても説明がありました。

後半では、プロジェクトのレベルからイノベーションのレベルに視点を上げ、実践力を発揮してイノベーションを成功させるリーダーの資質についての説明がありました。そして最後に、あらゆる分野において成功のベースとなる「やりぬく力」の重要性についても説明されました。何事もやりぬくには、楽しんで継続的な努力をすることが重要であり、そのためにも「自分を愛し、人を愛し、仕事を愛する」ことが大切だという提言で、講演は終了しました。

講演を聞き終えて、私はふと、ある人物の顔を思い浮かべました。それは豊臣秀吉です。

性格はいたって前向きでポジティブ、そして粘り強くてしぶとくチャレンジする人物像は、今回の話と通じるところがあるのではないか。きっと秀吉はセルフエスティームが高かったのではないか。彼の強引な手法には賛否両論あるものの、その部分については見習いたいと思いました。当日受講された皆さまは、どんなことを感じましたか?

例会では、今後も、プロジェクト・マネジャーに必要なスキルをテーマに取り上げていく予定です。引き続きご期待ください。

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