関西例会部会
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第138回 関西例会レポート (講演2)

PMAJ関西 KP 吉岡 幸恵 : 1月号

開催日時: 2017年11月18日(土) 14:20~15:35
開催場所: マイドームおおさか 第3会議室
テーマ: 「企業の価値はアジャイルマインドで向上できるのか?」
 ~ソフトウェアプロジェクトの価値をあげるだけで満足していませんか?~
講師: 前川 直也 氏
株式会社日新システムズ 未来戦略室 室長 兼 品質保証部 部長 兼 事業戦略室 主査役
参加者数: 32名

講演概要:

 アジャイルと言われて、ソフトウェア開発の手法であると捉える人が多いのではないだろうか。
 だが、この講演を聞いて、自己組織化をベースに価値向上を目指すアジャイルのマインドは、企業そのものの価値をも向上させる取り組みにも効果を発揮することを思い知らされた。
 講演後には、思わず「Be Agile!」と口にされた方もおられたことであろう。

講演内容:

 『要求される価値』から『創り出す価値』の時代に突入したと言われるソフト業界の変化を背景に、これからのソフト開発企業は、QCD +Scopeを意識してお客様のビジネス価値を最大限に引き出すことができる、頼りになるビジネスパートナーであることを期待されている。
 そこで自社の現状を「アジャイル導入前のチェックポント」を使って分析してみたところ、
自分達でプロセスを設計し改善する方法がわからない、失敗しても次に応用できるんだ!という風土になっていない。
ゴールへの思いが共有される機会が少なく、トップダウン型のリーダシップが強く、現場でのやらされ感が蔓延している。
一人作業が多く、知識・ノウハが共有できていない。形式的な組織はあるが、「チーム」「チームワーク」が少ない!
といったような結果がでた。

 そのことから、「価値ある『未来』を創りだせる会社への成長鍵は人である」として、社員一人ひとりの成長を支援し、社員のパフォーマンスを最大現に発揮できる風土と仕組みを創ることを掲げ、2015年10月1日に「未来戦略室」が設立された。

 未来戦略室のコアにあるものは、一人ひとりの知識を増やし、チームや部門で共有することで、戦略的に組織の知識を成長させるという「SECIモデル」と、リズムとゴールを活用しながら、それぞれのチームが自律的に改善し、活動をフィードバックすることでプロダクト/組織の価値を高める、「アジャイル」である。
 それらによって、会社の目指す未来を明確にしつつ、個々の知識を増やし、つなぎ合わせ、「意欲ある自律した創造的な社員」が集まる場に変えていこうとした。

 未来戦略室は、これまで数多くの活動を行ってきた。
 それは、例えば「各部門との協力体制を構築する」「会社のゴールを描いて共有する」「管理職の意識改革」や会社の次の30年を見据えた意欲ある社員の代表「NEXT+30」であったり、「価値ある開発への改善」であったりしたが、特筆すべきは、「新入社員教育改革」である。アジャイルの代表的な手法であるスクラムを採用したチーム研修を実施し、一方的なティーチング型ではなく、「プロダクトの価値を意識する」「チームビルディング」「失敗から学ぶ」を狙いの柱とした自分たちで考える研修とした。
 また、社内風土を活性化させるために社内ワーキングを開設して「心結(Cocona)」と名付け、学びたいとう「意欲」をカタチにする場所とした。
 「心結」は社員交流、社外交流の場として活用されている。

 こういった活動の成果として少しずつ変化が生まれ、成長の兆しがでてきた。
 「価値を感じる感性を高め、お客様のビジネス価値を最大化すると同時に自分たち身の価値を最大化していく!」未来戦略室にとってのお客様は、自身の会社そのもの。
 その価値を最大化することがミッションであり、私たち自身がまずアジリティに取り組むことが重要!自分たちで発展できる組織への変革!それが『ワクする未来を創造する』ことである。

<最後に>
 前川様のご講演から、未来戦略室に込められたあつい思いが伝わってきました。
 ソフトウェア開発発祥のアジャイルですが、P2Mの領域においても、いえ、さらにもっと広い領域においても、そのマインドは活かすことができるのではないでしょうか。

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