例会部会
先号  次号

『第228回例会』 報告

田邉 克文 : 1月号

【データ】
開催日時: 2017年11月24日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「PMI® 北米大会 2017参加報告」
 ~プロジェクトマネジメントの新潮流~
講師: 佐藤 義男 氏/株式会社ピーエム・アラインメント 代表取締役社長

【第228回例会 報告】
2017年10月28~30日に米国 シカゴで開催された世界最大のPMイベントであるPMI® 北米大会 2017の参加報告を行って頂きました。

【講演概要】
~大会概要~
今年のテーマは、”Difference Maker”(異なったこと(もの)を作り出す人)。
大会構成は、アワードセレモニー、3つの基調講演と5つの分野からなる教育トラック 86講演(ベンダー講演を含めると120講演)からなり、他にPM展示会場にてPM関連製品・サービスが展示されている。
今年の参加者は、世界60カ国から2500名(内、日本から20名)(昨年は1700名)だった。
開場はシカゴの北米最大のコンベンション・センターで行なわれた。
3年ぶりの参加であったが、PMの新潮流を確認する上で大いに意味のあるものだった。

~2017大会の特徴~
今年の大会の最新動向を絞ると以下の3つになる。
人間系スキルの発表が目立つ
基調講演の3つの内2つが人間系スキルだった。また、教育トラックでは「コミュニケーションとチームワーク」分野への参加者が最も多く関心の高さが伺われた。
権限なしのリーダーシップ、変革者型リーダーシップ、デジタル時代のチーム活性化など、プロジェクト・マネジャーの役割が求められている。
アジャイル開発に適応するスキルの強化
PMIからは「アジャイル実務ガイド」が紹介され、教育トラックでのアジャイルの講演も多かった。
展示会場では、大規模アジャイル、アジャイル実務者認定研修を紹介していた。
PMBOK®ガイド 第6版では、アジャイル型環境や適応型環境への考慮点が含まれている。
デザイン思考適用の加速
デザイン思考に関する講演は、昨年は1つもなかったが、今回は4つの講演が行われた。デザイン思考をプロジェクトマネジメントに活用することで、PMにイノベーション・フレームワークをもたらす。デザイン思考とアジャイル開発の統合により、組織は顧客が本当に求めているソリューションを構築できるようになる。

~アワードセレモニー(表彰式)~
Hanford Double Shell Tank 改修プロジェクト(Washington River護岸会社)
が最優秀に選ばれた。「大規模高濃度排水貯蓄装置」の計画と改修工事を実施。
Project of the Yearはいずれも大規模・複雑なプロジェクト(US$110 million以上)3団体が最終選考に残った。他の2つは、カナダのGahchoプロジェクト(ダイヤモンド採掘)、シアトルのUniversity Link Light Rail延長プロジェクトが選ばれている。
その他、政府機関の分野でIBM本体が受賞し、その関係で日本IBMの参加者が多かった。

~基調講演~
基調講演は毎日1名、三日間で3名が講演した。
初日:Sir Tim Berners-Lee(世界初のWebブラウザ開発者)
Webブラウザ誕生から、最もパワフルなコミュニケーッションメディアとして世界を変えた、現在までの歴史を語られた。
2日目:Nicholas Epley(シカゴ大学教授)
シカゴ大学ブース・ビジネススクール教授で、心理学を専門とする。”Mindwise”の著者。
読心術の研究者で、人の心を理解し、人間関係を築く方法を講演。
「いかに他人の思考、信念、感じている、あるいは望むことを知るのか」。
結論は、相手の心を確実に読める方法など存在しない。しかし、向上する術はある。
理性を働かせて、相手が自分の心を包み隠さず正直に話せる環境作りをすることがポイント。
3日目:Mercedes Ramirez-Johnson(子供向け慈善団体のリーダー)。
95年の飛行機事故で、両親を含む160名が死亡。生き残った4名のうちの一人。
人生2度目のチャンスをどう活かしていくのか?を語られた。

~PM展示会場~
PMI登録教育ベンダーやスポンサー企業など38社(7大学を含む)が製品とサービスを出展。アジャイル・プロジェクト支援ソフトが目立った。3年前に比べ、出展企業が少なく、PMI展示ブース(PMI標準ポスター展示、休憩場所、企業ディスカッション)のスペースが多く見られた。

~教育トラック~
3つのスキルセット(PM技術、リーダーシップ、戦略/ビジネスマネジメント)に分類され、5分野で構成されていた。人間系スキル(リーダーシップとチームワーク)の発表が多い。
<5分野と講演数の内訳>
・分析とプロセス改善 :14(約16%)
・コミュニケーションとチームワーク :26(約30%)
・意思決定と問題解決 :12(約14%)
・PMスキル強化 :14(約16%)
・組織の影響とビジネス戦略 :20(約23%)
<3つのスキルセット別講演数>
・PM技術 45(約38%)
・リーダーシップ 45(約38%)
・戦略/ビジネスマネジメント 27(約23%)
  ※ 1つの講演が複数のスキルセットを持つ場合もあるため、実際の講演数より数が多い。
<講演タイトルに見るキーワード分析比較> ※ 特徴的なもののみ抜粋
  2016年講演数 2017年講演数
・デザイン思考 0 4(増)
・アジャイル 13 18(増)
・戦略(ポートフォリオ) 19 13(減)
・チーム(リーダーシップ 16 22(増)
・人材(組織文化、PMO) 3 12(増)
・プロジェクト 18 12(減)

講師のご好意により、講演資料は「PMAJライブラリ(例会/関西例会)」に掲載させて頂きましたので、Sessionの内容は講演資料をご覧になって下さい。
PMAJライブラリのURLは以下の通りです。
  11月例会:「米国PMI® グローバル会議北米大会 2017 参加報告」
こちらの資料は、PMAJ会員の方限定になっておりますので、ご注意願います。

~まとめ~
「プロジェクトマネジメント領域は発展的に変化している」ことが鮮明になっている。
人間系スキルは、変化に適応し事業やプロジェクトを成功に導くために有効である。
企業は、技術的PMスキルを越えて人間系スキルにも強化を図るべきである。
企業はスピード重視・高リスク・プロジェクトへの対応が必要。このため、アジャイル型開発やアジャイルプロジェクトマネジメントが必須。また、企業は変化に適応する組織的アジリティの向上が求められている。
アジャイルやデザイン思考というキーワードが多いが、プログラム/プロジェクトマネジメントとの連携の話は無かった。PMAJでの「ビジネス・イノベーションSIG」の方が、取組みが進んでいる。

~筆者の所感~
講師の軽快な語りに引き込まれ、自分があたかも今回のシカゴのPMI北米大会に参加したかのような気になりました。講演で大会の内容をウォークスルーする中で、自分なりに共感できるところ、そうでない部分があり、日本と北米でのPMトレンドの違いをあらためて確認することができました。講義の途中ではご自身の研修資料を参考として補足説明(デザイン思考、アジャイル、PMBOK®ガイド 第6版等)して頂いたことでより内容を理解する助けとなりました。また、大会会場の雰囲気や街の様子についても触れられ、シカゴ名物のジャズや、ピザの話も織り交ぜられ、和やかな雰囲気で楽しく聞くことができました。

最後に、我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集しています。参加ご希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。
以上

ページトップに戻る