理事長コーナー
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AIが当たり前になるか

PMAJ理事長 光藤 昭男 [プロフィール] :8月号

 AIの記事が新聞・雑誌・テレビにあふれている。政府内ではさまざまなAI関連委員会が設置され、多様な議論がなされている。例えば、総務省が開催している「AIネットワーク社会推進会議(議長:須藤 修 東京大学大学院情報学環教授・総合教育研究センター長)」では、「社会全体におけるAIネットワーク化の推進に向けた社会的・経済的・倫理的・法的課題を総合的に検討すること~平成28年(2016年)10月開始~」を目的としており、その公開報告書からは、現在のAI研究・開発の世界の全体像を俯瞰することが出来る。

 その中間報告書では、「AIネットワーク化の進展を見据え、人間とAIネットワークシステムとが共存する段階における社会の在り方を構想した結果、目指すべき社会像として、『智連社会(Wisdom Network Society)』を掲げた。この智連社会という社会像は・・・『知識社会』のような『情報・知識(知)』に着目した従来の社会像の次にその実現を目指すべき、『智慧(智)』に着目した社会像として構想したもの」だとある。ピーター・ドラッカーの提唱した「知識社会」の先を「智慧社会」としているが、その内容の説明不足だ。ただ、「智慧」と「ネットワーク」と「社会」とつなげたのは面白い。

 さて、同推進会議では、「『AI開発ガイドライン』(仮称)の策定に向けた国際的な議論の用に供する素案の作成に関する論点」を整理、公開しパブリックコメントを求めた。ガイドラインでは、当面の課題や検討事項が整理されているほか、特に、「開発原則」の重要性が指摘されている。それは、八原則からなり、「(1) 透明性の原則、(2) 利用者支援の原則、(3) 制御可能性の原則、(4) セキュリティ確保の原則、(5) 安全保護の原則、(6) プライバシーの原則、(7) 倫理の原則、(8) アカウンタビリティ(説明責任)の原則」だ。

 この「開発原則」は納得できる内容だ。由来は「ロボット三原則」からだそうだ。これは、興味深いことに、SF作家として有名なアイザック・アシモフがその著書の中に記したことが起源だ。ロボットの開発・利用に関して、「(1)人間に危害を加えない(安全性)、(2)人間の命令への服従、(3)ロボットが自己を守る(自己防衛)」が「ロボット三原則」だ。ロボットと違い、AIは、これからどのように発展するかは未知な分野なので、八原則と多項目にしたと思われる。

 そのAIを支える国内での人材供給は心もとない。IoTなども含めた最先端の技術者は、現在15,000人、三年後で50,000人不足するようだ(朝日新聞「波聞風問~AI人材」@2017年5月30日)。日本社会では、外国語習得の問題の他に、海外からの人材供給もままならい。第一この科学技術者たちは、せいぜい30代といわれる若い世代であり、日本のマネジメント体系にそぐわない。「誰が(どう)マネジメントすればいいのだろう」、「AIは技術課題だけでなく、経営課題でもある」。(同記事)年功序列と終身雇用が崩れていないことが根底にあり、報酬制度も大問題だ。

 それでも民間では具体的な試みが始まっている。同記事には、子供のプログラミング教室の報告もある。阪神電鉄と読売テレビが始めた「プログラボ」がそれだ。設立は、2015年暮れだ。その「設立趣旨」には、「日本のICT教育(21世紀型スキルの育成)の遅れに危機感を抱いた両社が、未来を担う子ども達に『夢を実現するチカラ』育んでほしいとの思いから協同で事業を開始いたしました。まずは、子ども達が楽しみながら学べるロボット・プログラミング教育を軸に事業の展開を図っています」とある。HPの写真にある子供たちの顔つきは楽しそうだ。

 昨年6月号と先月号(それぞれのタイトルは「AIと共存する社会におけるプロジェクトマネジメント」、「AIを超えるか中学生プロ棋士」)でAIに関連した文を書いた。前者で、AIがPMの判断と行動を支援する重要な解決手段となりそうだ。プロジェクトが大型化、長納期化、複雑度を増している中で、約3分の2以上のプロジェクトが目標を達成していないという事実があることからAIへの期待を述べた。後者では、藤井聡太四段が、AIツールと共存して上達した話にふれた。

 「プログラボ」の子供たちが順調に育ち、活躍始めるのは早くて10年先である。その頃、日本の経営が変化し、さらには、「『データ・情報・知識に基づき、知能を活用することにより、物事に対処する人間の能力』としての『智慧(智)』の役割が大きくなる・・・人間は、AIネットワークシステムを活用することにより、各々の『智慧(智)』を連結し、『智のネットワーク』を構築していく」(AI開発ガイドライン)ことが実現されていることが真に期待される。

以 上

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