例会部会
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「第218回例会」報告

PMAJ例会部会 原 宣男 [プロフィール] :3月号

【データ】
開催日: 2017年1月27日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「心の知能指数を上げるマインドフルネス」
 ~今年こそ幸せの青い鳥を見つけよう~
講 師: 石川 博子 氏/株式会社エイチアイ・シス 代表取締役
講師略歴及び講演概要:  
   こちら のリンク先の例会案内をご覧ください。

【はじめに】
 プロジェクト内で高いパフォーマンスを上げるためには、「心の知能指数=EQ」を上げることが重要で、その「心の知能指数」を上げる方法として「マインドフルネス」が活用されます。この講義では「マインドフルネス」そのものではなく、「マインドフルネス」ができるようになるまでのアプローチを参加者が体験し、「マインドフルネス」とは何かを体得してもらうことが行われました。
 以下にその概略をご紹介します。

【講演概要】
1. 「心と体の調和」を学ぶきっかけ
 色々とソフトウェア構築の現場を見てきましたが、概して疲弊しているエンジニアが多かったと思います。納期までに仕上げる必要があるのに、仕様はどんどん膨らんでいくということで、エンジニアは大きなストレスを抱えていました。そんなエンジニアリングを助けたいとカウンセリングを学ぶようになり、25年前、参加したセミナーで講師に受講しておいたほうが良いとすすめられたのが、「心と体の調和」を学び始めたきっかけです。本日は、「心と体の調和」に関係する事項についてお伝えします。

2. 心の知能指数(EQ)とは
 「心の知能指数(EQ)」が世に伝わっていったのは、ピーター・サロベイとジョン・D・メイヤーが「EQとは自分自身と他人の気持ちや情動をモニターし、見分け、その情報を使って自分の思考や行動を導く能力である。」と定義し、ダニエルゴールマンが1995年「EQ心の知能指数」という本を発行したからです。では、なぜ彼がEQに興味をもったかというと、世の中にはIQ(学業成績)が良い人たちばかりが成功している訳ではない、IQが低くても人生で成功している人がいる、アスリートや芸術家で成功している人はIQでは測りきれない運動能力や感情や表現力などがある、ということを見つけたからです。

3. すぐれた職務能力とIQの関係
 どの職場にも皆が認める仕事のできる人がいると思いますが、その人たちは次のものを備えていると思います。①強い達成意欲と高い達成基準、②影響を与える能力、③抽象的思考力、④分析能力、⑤難題を引き受けるイニシアティブ、⑥自信。
 ここで注目すべきは、IQが関係するのは③と④のみで、それ以外はIQには関係しないことです。
 ダニエルゴールマンは、リーダーシップの高い人は、80%は情動的な能力が占めていると言っています。

4. EQを育むと
 EQを育むと次の事柄ができるようになると言われています。①正しく自己を認識できる、②自分の情動をコントロールできる、③他者の感情を感じ取り、考え方や論点を理解できる、④より良い人間関係を育む、⑤効果的なリーダーシップを発揮できる、⑥変革をマネジメントできる。
 このようなことができるということであれば、EQを育むことは非常に大切なことだと思います。

5. 脳の構造
 脳の構造のうち、大脳辺縁系の扁桃核は、視覚などの感覚の領域から入ってくる情動的で生存に直結する反応を記憶するところで、ここで外からの感覚が感情に直結し、すぐそばの脳幹を通じて身体反応につながります。体の反応を通じて自分の感情をコントロールすることは、EQの領域の一つである自己認識や自己統制には役立つところです。

6. EQを鍛えるポイント
 EQを鍛えるひとつ目のポイントは、自分の内面に注意、関心を向けること、即ち、感情のモニタリングです。ある状態の自分の気分・感情に注意を向けること。例えば「今の気分・感情は?」と自分に問いかける、その時、「快・不快」や「怒りを感じている」ことを自覚する、即ち、自分の感情をラベリングするのです。そしてこのことが、実は脳にブレーキをかけることになります。
 上述の扁桃核に直接感情が伝わってくるようなケースでは、自分の感情をラベリングすることにより、扁桃核の反応を抑制する部分が活性化されるのです。
 怒りや強い不快を感じている時は、出来る限り「感じている」と意識し、「不快」なんだと認識するのです。心の内側にある感覚(不快感)だけを認識することにより、感情が沸き起こってきた時に、すぐに行動する或いは対象に向かうのではなく、少し間を置けるようになります。つまり客観的に内面をみることができるようになります。
 二つ目のポイントは、感覚の意識化です。情動と体は結びついている為、体の変化で自分自身の情動変化を知覚しやすい。情動をうまく知覚できれば情動を管理しやすくなる。よって、体に耳を傾ける。そうすることで直感力を高めることができます。
 まず、触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚を順に意識化しますが、紙、飴、コーヒー、鈴、及び自分の瞼を使って体験して頂きました。(5感の意識化の体験:解説省略)
 そして次に感覚に伴う感情の意識化を行います。(配布資料参照)

7. マインドフルネスとは
 マインドフルネスをそれと関係する色々な団体が定義していますが、概ね「今この瞬間の自分の体験に注意を向けて現実をあるがままに受け入れること。」と定義されます。

8. マインドフルネスの有効性と効果
 マインドフルネスができるようになると、次の効果があると言われています。
 脳の島皮質が瞑想により活性化する。人に対して共感することにより脳の左側が活性化する。純粋な思いやりと親愛の情を抱くと自分自身が健康になる。不安、落ち込み、イライラなどが低下する。感情の抑制、内省を高める。うつ病の抑制になる。集中力が増加する。マルチタスクの能力を高める。慢性的なストレスが改善する。免疫機能が向上する。

9. マインドフルネストレーニング
 マインドフルネスを体得するためのトレーニングをするためには、まずきちんとした姿勢に正し、次に体の感覚を味わい、三つ目に呼吸を整えます。
 この状態で、まず12秒間の集中訓練を行い、次に12秒×12回=2分24秒の瞑想を行い、最後に12秒×12回×12倍=28分48秒の三昧という、精神を集中し、雑念を捨て去ることを行います。本日は、音楽を聴きながら10分間の実体験頂きました。(三昧の体験:解説省略)

 以上、まだマインドフルネスの一部分しか説明していませんが、少しでもマインドフルネスをご理解頂き、業務に役立てて頂ければ幸いです。

【所感】
 「マインドフルネス」を英語で綴ると「mindfulness」で、形容詞の「mindful:注意深い」の名詞形ですので「注意深さ。注意深い事。」転じて「心配りのできること」ですが、巷では、「mindfulness meditation:気づきの瞑想」とか「mindfulness relaxation:マインドフルネス瞑想法」とかの「mindfulness」だけが取り上げられ、「mindfulness」が「自分の内面を見つめること」になってしまっているような気がします。
 今回の講義では、この「マインドフルネス」が何なのか明確にされることを期待していたのですが、ぼんやりとした概念しか説明されなかった(すくなくとも筆者にはそう感じられた)為、「マインドフルネス」という言葉を初めて聞いた人にとっては、概念が非常に解かりにくくて「マインドフルネス」が未だ謎のままであろうし、「マインドフルネス」の神髄を求めに来た方にとっては、残念ながらいまひとつ満足感は得られなかったものと思われます。
 一方、「EQ(=心の知能指数)を鍛える」方法としての「感覚の意識化」や「感情の意識化」については、参加者の多くは初めての経験であり貴重な体験になったのではと思います。
 こちらも「EQを鍛える」こと自体と「感覚の意識化」や「感情の意識化」の繋がりが、いまひとつ理解に苦しむところは否めませんが、少なくとも「感覚の意識化」と「感情の意識化」は、自分の中にもう一人の自分をつくり、中の自分から外の自分を感じること、即ち自分というものを一歩下がって冷静に見るということ、仏教でいう「悟り」の精神状態でしょうか、つまりこれが「マインドフルネス」に繋がるのだと筆者は考えます。
 最後に、まだまだ語られていない部分が残っていると思いますが、「世間で成功している人」=「EQの高い人」=「心配りのできる人」=「自分の内面を見つめられる人」=「マインドフルネスができる人」という論法が成り立ち、「マインドフルネス」は重要であり、それができることが大切なのだ、ということを賢者は語っている、と講演者は伝えたかったのだと思います。
 このなかなか難解なテーマを、時間に制限のある中、実体験を通してご説明戴いた石川博子様に感謝申し上げます。

【例会からのお知らせ】
 我々と共に部会運営メンバーとなるKP(キーパーソン)を募集しています。参加ご希望の方は、日本プロジェクトマネジメント協会までご連絡下さい。

以上

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