関西例会部会
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第130回 関西例会レポート

PMAJ関西 KP 小田 久弥: 11月号

開催日時: 2016年10月14日(金) 19:00~20:30
開催場所: 大阪市立 総合生涯学習センター 第3研修室
テーマ: 松下幸之助の『お客様第一』と要求工学について
講師: 平石 輝彦 氏
参加者数: 37名(スタッフ4名含む)、交流会:8名
講演概要:  
 製品開発においては、ユーザのニーズを正しく把握することは極めて難しく、いかに優れたQCDを実現した製品であっても、ユーザの真のニーズが反映できていないために、ほとんどの機能が使われない製品が生み出されていることが報告されています。
本セミナーでは要求工学に造詣が深く、同時に松下幸之助の経営理念伝道師でもある講師とともに、松下幸之助や、松下幸之助の教えを直接受けた経営幹部の映像や語録、および講師経験談を通して、『ユーザの真の要求とは何か』を参加者と共に考えます。

<講演の様子>
<講演の様子>
はじめに
 今回のテーマは、松下幸之助+お客様第一+要求工学という今までにない組み合わせのユニークな内容となり、開催数日前に満員札止めになるなど、非常に注目を集めることができた。
講師の平石さんはパナソニックご出身で、松下幸之助の経営理念やソフトウェア工学に造詣が深くご自身の経験をベースにわかりやすく楽しい講演を実施いただけた。
要求工学の知識体系「REBOK®」(注1)を軸に、映像を交え、松下幸之助の言葉を引用しながら、お客様に喜んでいただけるモノを産み出すポイントをわかりやすく講演いただけた。最後には、全員でのグループワークで大いに盛り上がることができた。
 
徹底したお客様第一、お客様目線
 松下幸之助は、松下電器創業時から「お客様第一」を最重要視した。「お客様第一」に徹し、お客様に喜んでいただけなければ、経営や商売そのものが成り立たないという考え。松下幸之助はすべての企業活動を「お客様第一」で実践した。いかに我々が汗水たらしてコストをかけてモノやサービスを作り上げても、お客様に価値あるものとして認められ、喜んでもらえなければ買ってもらえない。お客様の要求を的確に捉え喜んで買っていただけるようなモノやサービスをつくるためのポイントを学んでいく。
 
要求工学とは
 ソフトウェア開発では、要求を決める際に様々な課題が発生している。たとえば、関係者で合意した要求仕様に基づき高いQCDで作りあげたのに、「使い物にならない」と否定されるケースなど。それらは、ユーザの真の要求がつかみきれていないことが上げられる。このような課題の解決のために「要求工学」の研究が進められている。本研修では、要求工学知識体系(REBOK®)を参照モデルとする。
REBOK®は「要求獲得」「要求分析」「要求仕様化」「要求の検証・妥当性確認・評価」「要求の管理」の5つのプロセス群で構成される。
 
要求獲得
要求獲得の目的は、要求を明らかにすること。また、ステークホルダも意識していない要求を発見し定義するという意味も含まれる。REBOK®では、ビジネスや情報システムに関与する人・組織をステークホルダと定義している。
 
松下幸之助の語録の中で、ステークホルダに関連する言葉を参照する。
「世間に聞く」
「世間は神のごとく正しい」
要求獲得で重要なことは、次の3点である。
 1)最重要ステークホルダが誰なのか
 2)お客様の重要なお困りごとを明確にする
 3)目的の明確化。
 
要求分析
要求獲得で獲得された要求項目を、整理するプロセス。以下の5つのプロセスから構成される。
1) 要求の分類 2)要求の構造化 3)要求の割り当て 4)要求の優先順位づけ 5)要求交渉
重要なポイントは以下の3点
 1)お客様から引き出した要求の分析
 2)要求の優先順位づけ ・・・お困りごと解決につながるものは優先度を上げる
 3)限られた資源の有効活用・・ 真のお困りごとでなければ優先順位を下げる
松下幸之助語録の中で、要求分析に関連する言葉を参照する
「まず好きになる」
「なぜ」と問い続ける
若い人は「なぜこれを実施するのか」「なんのために実施するのか」という質問が出ることが多いが、ベテランは、なかなか出ない。「なぜ」「なんのために」という視点が大事。
 
要求の仕様化と要求管理
要求仕様の検証・妥当性確認が重要。
検証とは規定されている要求事項が満たされていることを確認すること。たとえば、仕様書どおりに作られているかどうか。妥当性確認とは「正しいものがつくられている」ことを確認するということ。具体的に言うと、ユーザの要求を実現できる内容になっているかどうか。ここがしっかりできていなければ、仕様書どおりに出来上がっても喜んでもらえないものになってしまう。
 
おわりに
 松下幸之助の言葉で「お客様の欲しがるものを売ってはあかん。お客様の喜ぶものを売りなはれ」と名言がある。真の要求をつかみ、それを実現できるものを提供することが重要。
ドラッカーも、松下幸之助と非常に良く似たこと「企業の目的の定義は一つしかない。それは顧客を創造することだ」を言っている。
以上で講演終了。
その後、約30分間、5~6名でチームをつくりグループワークを実施。
 自己紹介
 感じたことを各自発表しグループでまとめる。
 
【講師を交えた懇親会】
 講演終了後、大阪駅第一ビルの居酒屋百番で講師を交えた懇親会を実施。スタッフ含めて9名の方々が参加された。講師を囲んで闊達な意見交換が行われた。スタッフの皆さん、受講者の皆さん、平石さん、ありがとうございました。

(注1)REBOK®は情報サービス産業協会の商標です

以上

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