東京P2M研究部会
先号   次号

【 Phase Free 】 フェーズフリーの定義

佐藤 唯行 [プロフィール] :9月号

 前回のオンラインジャーナル (2015年8月号) において、平常時と災害時という社会のフェーズ(時期、状態)を取り払い、普段利用している商品 (プロダクト) や役務 (サービス) が災害時にも適切にも適切に使えるようにする価値を表した言葉『Phase Free (フェーズフリー) 』を紹介しました。
 今回は、その定義と原則を紹介します。
Phase Freeの定義
 新たな概念フェーズフリーを考えるときに、既存の概念であるバリアフリーと比較してみると理解がしやすいでしょう。
 右図は横軸がバリアフリー、縦軸がフェーズフリーの概念をそれぞれ表しています。バリアフリーはご存じの通り、健常者と要援護者の間にある障壁を取り払い、要援護者でも健常者と同じように空間を行き来できるという概念です。それに対して、フェーズフリーは、私たち一般市民は平常時において災害時を具体的に思い描くことが出来ないという、社会の状態 (フェーズ) の障壁を取り払い、人々を守るという概念です。
 フェーズフリーの定義は以下となります。
平常時や災害時などの社会の状態に関わらず、いずれの状況下に於いても、適切な生活の質を確保する上で支障となる物理的な障害や精神的な障壁を取り除くための施策、およびそれを実現する概念。
商品やサービスに具現化させることで、平常時のみならず災害時においても有効に利用され、もって社会的脆弱性を解消しようとする考え方。
平常時でも災害時でも有効に利用できる商品、役務およびそれらが実現する価値。
バリアフリーが高齢者や障害者などの要援護者への空間的な自由を提案しているのに対して、フェーズフリーは全ての人への時間的な自由を提案している。
例えば、図中 A が『筆記用具』の場合、以下のような商品をフェーズフリーと呼ぶことができるでしょう。
水に濡れても問題なく文字を書く事が出来る (フェーズフリーが実現する、平常時と災害時での共通の価値)
視界が効かない状態でも何らかの方法で所有者の位置を知らせる事が出来る (フェーズフリーが実現する、平常時とは別の、災害時での変化した新しい価値)
 以上の定義から、フェーズフリーという提案は、『日常生活において災害時を意識できない人々に対しても、平常時に使用している商品・サービスにフェーズフリーという付加価値が備わることにより、人々を守ることが出来る。』という提案です。
 すなわち、これまでの防災が『日常+備え』であったものに対して、フェーズフリーは『日常=備え』となっていて、『災害に備える』という事が、非日常的で特別な価値では無くなる点が、これまでの防災課題を解決してくれる可能性を秘めていると考えられています。

(次回、『フェーズフリー商品およびサービスの原則』)

ページトップに戻る