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再びパーソナルプロジェクトの勧め

プラネット株式会社 シニアコンサルタント 中 憲治 [プロフィール] :7月号

本ジャーナルの 6 月号まで約 1 年間にわたり「パーソナルプロジェクトの勧め」と題して私の「アラ還プロジェクト」の活動を報告してきた。「アラ還プロジェクト」は60歳をむかえたことをきっかけに、今まで学んだプロジェクトマネジメントの知見を活用し、これまでは単なる“夢”に終わっていた“やりたいこと”を実現させたいと考えたことから始まった。(参考 : パーソナルプロジェクト・個人の活動にプロジェクトマネジメントを活用すること「冨永 章 氏」)
「アラ還プロプロジェクト」は昨年10月に当初設定した目標を達成し、今では「シニアプロジェクトと称して残された“夢”を実現すべくパーソナルプロジェクトを継続しているが「シニアプロジェクト」は未だこれといった報告に足りうる目標達成には至っていない。いずれはこれも目標達成を果たし報告できればと考えている。それまでの間、このオンラインジャーナルの場を借りて「アラ還プロジェクト」の期間で取り組んだ Out of Scope の活動をお伝えし、パーソナルプロジェクトの面白さをお伝えできればと思う。
「“ 1 + 1 = 3.0、1 + 0 = 0.7 ”ですね」5月にロンドンで開催された PMI Global Congress 2015-EMEA に参加したプラネット中嶋氏に帰国後に会った時の最初の一言がこれであった。中嶋氏はこの会合の後、一人でデンマーク、スエーデンの Bike Tour を行っている。PMI会合の報告もさることながら、私にとっては Bike Tour の話の方に興味があり、「ツアーはどうでしたか?」の問いに対する答えがこの一言なのである。中嶋氏いわく、「一人の旅は、二人の旅より楽しさも、学びも少ない、それは、0.7 vs 3.0 である」とのこと。これに関する詳細の解説は、いずれあると思われる中嶋氏の投稿に任せるとして、この言葉を理解するには、以前行った二人旅 (2人の Bike Tour) について先に説明しておかなければならないだろう。この Bike Tour がアラ還プロジェクトの Out of Scope として行った中嶋氏と私の2人のパーソナルプロジェクトである。
2012年9月某日、私たちは「鉄のカーテン」にいた。オーストリアとチェコの国境付近には、当時の鉄条網が未だ残されている。(鉄のカーテンとは、東西冷戦時代に東西両陣営の間にひかれた国境線のことを指すが、実際に鉄条網のような物理的な国境線も存在した。)
私たち二人の Bike Tour はこのオーストリアとチェコの国境に沿ってチェコのモランビア地方、南ボヘミア地方を自転車で走る 5 泊 6 日のツアーである。この地域は、第一次世界大戦や第二次世界大戦の戦場となったところであり、「鉄のカーテン」のほか、当時の塹壕やトーチカが残っていることは勿論、ツアーコースの途中にある小さな村々に第一次大戦や第二次大戦の戦死者を祭る記念碑が建てられており歴史を感じさせる地域である。

Wien―Prague Bike Tour 現存する鉄のカーテン
Wien―Prague Bike Tour 現存する鉄のカーテン

パーソナルプロジェクトでも一人で行うのと、二人で行うのでは多くのことが異なる。
楽しみも喜びも異なれば、制約条件なども異なる。そこからの学びもまた異なる。
二人での活動は、同じ場所で同じ時間に同じ体験をしているように思えるが、同じ風景、同じ状況をみても感じるものや認識するものは同じとは限らない。極論すれば体験が異なるといっていいのかもしれない。そのため、ツアー途中で直面する諸々の問題に対して、二人であるが故に一人の時とはより良い結論に導かれることもあるし、また問題解決をより困難にする時もある。このツアーでは、同じ工程で私たち二人のほか、米国からの 5 + 1 名が加わり総勢 8 名で同行する機会もあった。コミュニケーションの法則に、N = P (P-1) / 2 という数式がある。人数が増えればそのコミュニケーションの数は飛躍的に増大することを意味している。総勢 8 名がある問題に直面した時の問題解決の局面では、それぞれが異なる認識と判断を主張し、結論が出ない小田原評定に近い状況に陥った。その背景にはお国柄もあったのかもしれないが、終わってみればそれもよい経験と感じられた。この他にも、Bike Tour では一人で行うパーソナルプロジェクトとは違った学びが得られたことも沢山ある。この二人で行ったパーソナルプロジェクトである Wien-Prague Bike Tour について数回にわたって報告したい。

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