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アジャイルの価値観-相互依存宣言

竹腰 重徳 [プロフィール] :7月号

 マイク・コーンが著書 (1) の中で述べているように、すでにウォーターフォール文化が定着した企業がアジャイルを導入するのは大変難しい。アジャイル文化とウォーターフォール文化は全く違うので、アジャイルの価値観を理解せずに、アジャイルプロセスやプラクティスのみを導入しても失敗に終ってしまう事例が、欧米を含め数多く見られる。アジャイルを成功裏に企業内に導入するには、アジャイルの価値観や原則を十分理解した上で、アジャイル導入を図ることが肝要である。
 アジャイルの価値観は、2001年に発表されたアジャイルマニフェストの4つの価値観と12の原則 (2)、2005年に発表された相互依存宣言 (DOI : Declaration of Interdependence) (3) に6つの価値観が示されている。アジャイルマニフェストは開発の視点でアジャイルの価値観を述べているのに対し、DOIはプロジェクトリーダーの視点でアジャイルの価値観を述べているのが特徴である。
 DOIは、マイク・コーン、ジム・ハイスミスを含む15名のアジャイルリーダーシップネットワーク (4) の設立者達によって宣言された。相互依存という意味は、プロジェクトリーダー、プロジェクトチーム、顧客がそれぞれ相互に依存して効果を上げ、6つの価値観もそれぞれが相互に依存して効果を上げるという意味である。カッコ内は、DOIの6つの価値観をキーワードとして筆者が追加した。
我々 (プロジェクトリーダー) は、価値の連続的流れに注目することによりROIを増加させる (顧客価値、ROI)
We increase return on investment by making continuous flow of value our focus.
我々は、顧客との頻繁な相互作用と責任を共有することにより、信頼できる結果を提供する (顧客との協調)
We deliver reliable results by engaging customers in frequent interactions and shared ownership.
我々は、不確実性を予期し、反復、予想、適応により不確実性に対応する (反復漸進型開発)
We expect uncertainty and manage for it through iterations, anticipation, and adaptation.
我々は、個人が価値の究極の源であることを認識し、彼らが差別化を作り出すような環境を整え、創造性とイノベーションを引き出す (創造性とイノベーション)
We unleash creativity and innovation by recognizing that individuals are the ultimate source of value, and creating an environment where they can make a difference.
我々は、結果に対するグループ責任とチームの有効性のために責任を共有してパフォーマンスを高める (チームワーク)
We boost performance through group accountability for results and shared responsibility for team effectiveness.
我々は、状況に合った特定の戦略、プロセス、プラクティスを通して有効性と信頼性を改善する (継続的改善)
We improve effectiveness and reliability through situationally specific strategies, processes and practices.

 なお、参考までに、アジャイルマニフェストの4つの価値観を以下にあげる。
プロセスやツールは大切であるが、個人とその相互作用がもっと大切である
(Individuals and Interactions over Processes and Tools)
包括的なドキュメントは大切であるが、動くソフトウェアがもっと大切である
(Working software over comprehensive documentation)
契約交渉は大切であるが、顧客との協調がもっと大切である
(Customer collaboration over contract negotiation)
計画に従うことは大切であるが、 変化への対応がもっと大切である
(Responding to change over following a plan)

以上

参考資料
(1) Mike Cohn, Succeeding with Agile, Addison Wesley , 2010
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