投稿コーナー
先号

パーソナルプロジェクトの勧め (12)
~「アラ還プロジェクト」実行中~

プラネット株式会社 シニアコンサルタント 中 憲治 [プロフィール] :6月号

本稿パーソナルプロジェクトの勧めも12回目となる。この投稿は、実のところ最初から明確な期間を定めてスタートしたのではなく、どこまで続けられるかと思いながらやってきた。最初の投稿は2014年4月号、途中プラネットとしての投稿と重複する月はパスし、所要期間15ヶ月で12回目を迎えた。この間に年齢も65歳とシニア入りを迎え、「アラ還プロジェクト」も当初の64歳までに完了との予定を3ヶ月納期オーバーしたが昨年10月のメルボルンマラソンで完了した。現在は既に「シニアプロジェクト」をスタートさせており、本稿も12回を一つの区切りとしたい。最終回は「アラ還プロジェクト」での経験から学んだパーソナルプロジェクトを継続していくうえでの教訓を書きたい。
教訓とは、①心も身体も柔らかく②計画は悲観的に、実行は楽観主義で③Lastは楽しく気分よく終える、の 3 つである。
① 心も身体も柔らかく。
これは、両方とも柔軟性を持って臨めという意味である。心に柔軟性を持つということは、計画立案や実行中において、何らかの選択決定を迫られる場面に遭遇する。この時、即断で“これしかない、これ以外には考えられない”と決めつけるのではなく、出来るだけ多数の選択肢を考え、その中から最適な選択肢を選ぶことが大事である。この出来るだけ多数の選択肢を考えることができること、これが心の柔軟性である。頭脳の柔軟性とも、思考の柔軟性ともいえる。身体の柔軟性とは、文字通り柔らかな身体である。身体が硬いと故障がよく起きる。歩き遍路において、最初の3日目までは少々無理を重ねても何とか大丈夫。しかし4日目辺りから身体の硬い部分に疲労が蓄積し、痛みを生じることが多い。痛みを庇う為に不規則な歩き方になり、他の部分まで痛みが広がるという悪魔のサイクルに陥る。マラソンにおいても同様である。パーソナルプロジェクトを継続するためには、身体の柔軟性は必要不可欠であり、日頃から身体の柔軟性を保つためストレッチを欠かさない習慣が大事である。
② 計画は悲観的に、実行は楽観主義で。
計画は悲観的にとは、リスクへの対処である。理想的には、“あらゆるリスクを想定し、重点的に対策を講じる”(ここではPMBOK®でのリスクの定義と異なり、まずい事態だけを想定している) ことであるが、あれも有りうるこれも有りうると出来るだけ多くのまずい事態を想定し、特に影響度の大きなリスク事態に対する発生時対策を準備しておくことが肝要である。もっとも、私の場合はそれが少々過ぎて、お遍路においても、マラソン大会参加時も携行品が多すぎて常に重い荷物を持っての旅行程となる。実行は楽観主義でについては、あるエピソードを紹介したい。それは、「アラ還プロジェクト」のサブプロジェクトとして行った「Wien~Prague Bike Tour」での経験である。プラネットの同僚である中嶋氏と2012年9月にチェコの南部地方オーストリアとの国境付近を5泊6日の日程でバイクツアーを行った。チェコのツアー会社が主催するもので、ガイドはいないが、走行経路マップや日々の走行路の詳細なガイドも用意万端準備されたツアーであり、問題は何ら無いと思われた。

チェコのモランヴィア、ボヘミア地方をオーストリアとの国境に沿って走る5泊6日・走行距離415kmのバイクツアー

しかし、地図は地図、現地とは異なり、道に迷うこともしばしば遭遇した。原因は、地図の見誤り、ガイドが大まか過ぎて判断を間違うなどいろいろあった。その時、私といえばガイドの不出来を問題視し、愚痴をこぼす、いない相手 (ツアー会社) に文句を言うなど繰り返していた。そのような時、中嶋氏は“これも旅の醍醐味、状況を楽しみましょう”と柔らかくコメントしてくる。その時は、内心“何を言ってるの”と反発もしたが、その日の夜、一人チェコワイン (これが美味です) を飲みながらその日の出来事を思い返していると、その言葉の意味がしみじみと理解されてくる。起きたことは元に帰らない、状況を楽しむことが旅を楽しむことに繋がる、楽観主義で臨むことの大事さを痛感し、その後の教訓とした。この「Wien~Prague Bike Tour」については、また別の機会に書きたい。 余談となるが、中嶋氏は今 (5月19日現在) デンマークに滞在している。PMI Global Congress 2015 EMEA 参加した後、ベネルクス3国のBike Tourを行っている最中である。帰国後、中嶋氏のパーソナルプロジェクトとしてこのオンラインジャーナルで紹介していただけることを期待している。
③ Lastは楽しく気分よく終える。
マラソンにおいても歩き遍路においても、走ったり歩いたりしている過程でいろいろな風景や出来事に出会う。それが楽しみで常にカメラを携帯して走ったり、歩いたりしている。その国特有の風景、特に地元の人の営みが感じられる風景や状況に出会うと、少々つらい時苦しい時も気分が晴れ、継続意欲が湧いてくる。ボストンマラソンのコースの中間地点にあるWellesley College(ヒラリー・クリントン氏の母校) の学生たちの応援、エジプトのルクソールで声援をくれた子供たちの笑顔などは今でも記憶鮮明な風景である。
この様な風景に出会うことがパーソナルプロジェクトを続ける大きな要因であるが、継続意欲に関して言えば、やはり最後の終わり方を楽しく、気分よく終えることが一番だろう。それが次のプロジェクトへのエネルギーとなる。3つの教訓を忘れることなく、これからもシニアプロジェクトを継続していきたい。パーソナルプロジェクトは常に次の楽しみが待っているから。

[ルクソールマラソンで声援をくれる子供達] [Wellesley College の学生の応援風景]
[ルクソールマラソンで声援をくれる子供達] [Wellesley College の学生の応援風景]

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