例会部会
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「第195回例会」 報告

例会部会 中前 正: 4月号

 日頃、プロジェクトマネジメントに携わっておられる皆様、いかがお過ごしでしょうか。今回は、2015年2月に開催された第195回例会についてレポートします。

【データ】
開催日時: 2015年2月27日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「体感「ドラマチックコミュニケーション」」
 ~創造的手法を用いた「気づき」の世界~
講師: 野原秀樹 氏/株式会社MANY ABILITIES 代表取締役

 突然ですが、皆様は、自分のコミュニケーション能力に、自信を持っていますか?
 私は、ハッキリ言って、苦手です。

 コミュニケーションが難しい、苦手だと感じる理由はいくつかあるでしょうが、私の場合は特に「伝えたいことがあっても、なかなか言葉に発しづらい」ことが挙げられます。今、伝えるのが最適なのか、どう表現したらうまく伝わるだろうか、相手は自分の言うことを理解してくれるだろうか、などとあれこれ考えているうちに、つい、伝えるタイミングを逃してしまいがちです。

 しかし、コミュニケーションに自信がないからといって、何も伝えないわけにはいきません。ましてやプロジェクト・マネジャーの立場ともなると尚更です。一つのプロジェクトには、エンジニアやプランナー、プロジェクト・スポンサー、顧客など、さまざまなステークホルダーが存在します。彼らに指示を出したり、進捗状況を報告したり、ときにはスタッフを激励したり、叱責したりと、さまざまなコミュニケーションが発生します。プロジェクトを成功に導くためには、コミュニケーションは必要不可欠です。

 今回の例会では、元バレエダンサーであり、演劇や即興の要素を活用した「ドラマチックコミュニケーション」という手法で知られる野原秀樹氏をお招きしました。1時間半のワークショップの中で行われたセッション内容とともに、私が感じた、コミュニケーションをする上での重要なポイントを以下に紹介します。


● コミュニケーションの第一歩は、周囲をよく観察することから

 最初に行ったセッションは、声を発せずに参加者同士でタイミングを合わせて、一本締めの要領で手拍子を打つ「拍手合わせ」 (セッション名は、私が勝手に名付けました。以下同) です。まずは2人ではじめ、徐々に4人、全員 (この日は20人ほどの参加者がいました) と、人数を増やしていきます。

 手拍子のタイミングをピッタリ合わせるためには、お互いにアイコンタクトを行い、呼吸を合わせないといけません。普段から周囲や全体の状況をよく観察して、小さな動きでもしっかり察知する。それがコミュニケーションエラーを減らし、確実な意思の伝達につながることを実感できました。

● 困難な状況を打破するために、第一声を発する勇気を持つ

 次に、言葉を用いてはいけない、数字をゼスチャーで表してはいけない、など複数の制限のもとで、参加者が誕生日 (「何月何日」生まれか。年は問わない) 順に一列に並ぶ「誕生日並び」というゲームを行いました。

 参加者はほぼ初対面なのでお互いの誕生日を知りませんが、正確に並ぶためには、自分の誕生日を他の人に伝え、また他の人の誕生日を知らないといけません。そのため、何とかして禁止されていること以外の伝達手段を考え、誰かが実際に行動を起こす必要があります。

 皆様は、良いアイデアが浮かんでも、つい、「恥ずかしい」「怖い」「面倒だ」といった思いが生じて、二の足を踏んでしまうことはないでしょうか。しかし、これを克服しないと、コミュニケーションは始まりません。このセッションでは、困難な状況を打破するためには、まずは自分が第一声を発すること、そしてそのためには少しの勇気が必要だということを、身をもって感じることができました。

● メッセージの発信・受信は、少々オーバーアクション気味に

 次に、「わたし・あなた」というゲームを行いました。参加者が円状に並んだ状態で、「わたし」と言葉を発して自分を指し、すかさず「あなた」と発して他の誰かを指す、そして指された人がまた他の誰かを指していきます。最初はひとつの「わたし・あなた」から始めますが、徐々にその数を増やしていきます。

 「わたし・あなた」の数が少ないうちは、滞りなくメッセージは回っていきますが、増えていくと混乱が生じて、メッセージのやりとりが途切れたり、あるいは逆に不要なやりとりが生じたりします。

 ここで重要なのは、相手にしっかりと、自分のメッセージを伝えきることです。相手に伝えきるためには、声を大きくしたり、大きな身振りをしたりと、少々、オーバーアクション気味に表現するのが有効です、また、自分のメッセージが届いたか、その後の動きを見届けることも大切です。

 同様に、メッセージを受け取った側も、きちんと、それを受け取ったことを表現すべきです。そうすれば発信者も安心するでしょうし、それがひいては、円滑にチーム内のコミュニケーションが回っていくことにつながるでしょう。


 以上が、「ドラマチックコミュニケーション」を体感したことによって私が学んだ、より良いコミュニケーションを実現するためのポイントとなります。

 今回の例会のねらいは、自らの体験によって得た新たな「気付き」が、普段の仕事の「反省」につながるのではないか、また気付いたことに実際に取り組むことで、われわれの行動に「変容」が生まれるのでは、という点にありました。私は今回学んだことを、実際の業務で活かしたいと考えております。参加された皆様は、どのような「気付き」があったでしょうか。

 最後に、今回のようなワークショップは、身体をほぐしつつ、凝り固まった発想を転換し、新しいプロジェクトマネジメント手法を試すのに良い機会になるのではと思っております。ワークショップは今後も定期的に実施しますので、またご参加いただければ幸いです。

参考リンク
◇ PMAJライブラリ (例会/関西例会)

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